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山椒の実

Category: Books

九十三歳の関ヶ原 弓大将大島光義 (近衛 龍春)

老いてなお弓の技術を持って数多の戦功を上げて大名にまで上り詰めた実在の武将を描いた小説。関ヶ原に従軍した時は93歳だったらしい。武将としては無名の部類ですが、凄まじいですね。最後に1万石を子供4人に分割して大名やめて旗本になったという話。

クライマックスが爺さん時代ということから、子供時代の云々とかどうでもいい話は抜きで構成されている。美濃の斎藤氏に仕えていたらしいが、桶狭間の時点でもう60近いからな。Wikipediaで見ると新陰流を開いた上泉信綱と同い年か…

確率論を信じて世界50か国のカジノで計8億円を稼いだ僕の人生 (野口 健司)

プロのギャンブラーがカードカウンティングを武器に世界のカジノを荒らし回った話。名前と顔を出して著書を出しているからにはもう引退したんだろうと思ったら、そうでもないらしい。

ギャンブラーが一番恐れるのは出禁になること。出禁になると途端に稼げなくなるってわけ。甘いルール設定の賭場はまだ世界中に残っているらしく、ラスベガスみたいな本場では通用しなくなった手法も通用するとか。

前半生もなかなかのものだが、後半のアフリカや中南米でのギャンブルもかなりグイグイ読ませてくる。確率論ということだとかなり長時間、繰り返し賭け続けなければ儲けは出ないんだろうなぁ。私は飽きやすいからダメだろうな。この人はブラックジャックが本業だけど、小学生時代のビン集めやファミコンゲームの転売、違法コピーなども含めて、波乱万丈? の裏稼業の連続。痛快ですね。人生の参考にはならなさそうだけど、読み物としてはとても面白かった。

ハーバードでいちばん人気の国・日本 (佐藤 智恵)

近年、割と「日本スゴイすぎる」みたいな気持ち悪い本や言説がはびこっていて、まあこれも、だいぶ気持ち悪い本なんだろうなという思いはあったよ。でも読む気になったのは、ハーバード。日本は別にいいんだよ。ハーバードでは何をどう学んでいるのか。その情報を手軽に読めるかと思ってね。ひとつひとつのエピソードは割とどうでもいいし、一番人気というのはもちろん誇張で、一番ではない。当然だが。

ハーバードのようなリーダーになるべき人間を集めてリーダー論を学ばせる場所では、ケーススタディに関してもリーダーの立場でどうするか、というところに力点が置かれるようだ。例えば我々も歴史で関ヶ原を学ぶよね。ただ、そうだったのか、そういう流れだったのか、というのを理解するんだけど、彼らは違っている。自分が家康だったらどう決断したか、自分が三成だったらどう決断すべきだったか、ということを考えるのだ。まあこの本に関ヶ原が出てくるわけではないですが。俺はあそこで小早川に鉄砲をブッ込めるのか? 逆にそれで敵対して襲われたら確実に負けるわけだぜ。

恋愛の解体と北区の滅亡 (前田 司郎)

文章がうざい、長々しい独り言を連ねるスタイルのSF。短編の「ファナモ」も悪くない。ただちょっとうざすぎるよねこの独り言。ゴールドジムの下りは本当に必要なんだろうか。そして背景で爆発する扱いの北区が侘しい。北区民はどう思ってるんだろうねーこれ。

まあちょっと本当に、文章がだらだらしすぎているよね。ファナモの話はマジで悪くなかった。このくらいの長さがちょうどいいんじゃないだろうか。

ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女 (ダヴィド・ラーゲルクランツ)

あのシリーズの最新作。著者死亡で終わったと思っていたが、出版社が新たな著者を見つけてきた。ビジネス。

まず疑問に思うのが、楕円曲線でRSAの素因数分解を解けるものなのか? という話。私もこのへん詳しくないんだけど、楕円曲線暗号とRSAは互換性ないと思っていたので、楕円曲線を頑張って素因数分解の暗号を解けるとは思えなかった。まあ割と調べているっぽい著者ではあるから、問題ない記述なのかもしれないが。あとNSAの描写はダン・ブラウンの問題作「パズル・パレス」を彷彿とさせる。こういう人々の描くテクノロジーの記述に関しては割とトンチキな感じもするんだよねぇ。こんなやついねーよ。前著者のスティーグ・ラーソンはコンピュータに関してはここまで破綻せずに書けてたと思うんだが。

超能力のトリック (松田 道弘)

奇術をベースにしたトリックで人を騙す超能力の話。歴史を遡りつつ、色々なトリックを紹介していて、なかなか面白かった。僕は超能力と言えばエスパー伊東だなと思っていて、まあ彼は高能力ではあるんだけど、こないだ引退報道のガセネタで踊ったりもして。

いろんなトリックがあるもんだなぁと思った。そして、騙しのテクニックを考え続けてきた、これまでの人類の歴史について考えてしまう。すごいよね。こうやって人々は進歩してきたんだ。この本自体も初版1985年という、すごい古い本なんだけれども。

ムーンナイト・ダイバー (天童 荒太)

まず立ち上がりの書き込みの量・質を見て、こいつは本格的なやつだったか、と気づいてしまうよね。軽い気持ちで図書館で借りた本。そして最初の印象のまま、このハードボイルド小説はラストまで続くのだ。すげーな。まさしく著者の力量ですね。話の中身はともかく、まず最初に思うのは、こういう文章が書ける人はどういう頭の中身をしてるんだろうね、というところ。それほど良かった。

で、中身か。中身としてはシンプルな話でもあって、天災以外に誰一人として悪人は出てこないし、それでいて悲しさや優しさが絶妙な配分で詰まっていて、ラストへの展開もスッキリして、いろいろなことを考えさせられながらも読後感は良かったです。

ジハーディ・ジョンの生涯 (ロバート バーカイク)

ISの、あの覆面の処刑人、モハメド・エムワジについて記した本。イギリス人ジャーナリストが、エムワジがシリアに渡る以前にインタビューしていたことが分かったので、取材をして本にした。

インタビュー時点のエムワジはイギリスの諜報機関から嫌がらせを受けていて、結婚や就職も邪魔されていた。それで絶望したことも、彼がシリアに渡って処刑人になった一因ではないかという印象を持たせる。実際に多くのムスリムが脅され、スパイとして勧誘されていた/いるようだ。

Fランク化する大学 (音 真司)

大学の掛け持ち非常勤講師を5年間やった著者が、大学の問題について記した。著者は商社で働いていたのだが、ドクター取るために会社を辞めて、そして非常勤講師になった。給料は激減したらしい。

Fランクというとどうしても学生の質という印象が出てしまうのだが、この本は教える側のダメさ加減にフォーカスしている。考えてみれば、まあそりゃそうだよね。高校出たばかりというところからであれば、しっかり教育してモチベーションを与えれば化けるでしょう。首相の名前知らないとかバカにするけど、自分の若い頃の状況を考えてみても、大学入った頃ってのはやっぱり、幼いもんだよね。なんていうか、興味の対象が違うだけなんだからさ。

期待はずれのドラフト1位 逆境からのそれぞれのリベンジ (元永 知宏)

プロ野球のドラフト1位で大きな期待を受けた選手で、その大きな期待に応えられなかった、その後をレポートする。

まず思うのは、ドラ1ってそこまで期待値が高いものなの? という感想。この本で描かれている選手たちはそれなりに1軍での出場もあり、移籍して活躍したり、プロとしてまあまあ悪くない成績を収めていると思う。このレベルで期待外れと言ってしまうのはちょっと違和感を感じた。誰でも知ってる、桑田だの松坂だのダルビッシュだのは特別だとしても、ドラ1なんて毎年12人いるんだぜ。橋にも棒にもかからなくてあっさり解雇なんて奴もいただろ?