アメリカの民主党の支持者が、トランプを勝利に導いた支持層を分析した書。かなり正確だと思わせる分析だ。合点がいくし、日本もあるいはこの路線が主流派になる日がありうるかも、と思わせるものがある。最初はこれアメリカ特有のものなのかなという感じもしたけど、日本にだって応用可能な話だと思ったんだ。

ホワイト・ワーキング・クラスというのはアメリカの白人労働者層で、今までは「中間層」つまり富裕層でも貧困層でもないという部分に一括りにされていた人々。それをエリート側(専門職)とそうじゃない側(ワーキング・クラス)に分類し、ワーキング・クラスの苦悩に対応しているのがトランプだった、と。ワーキング・クラスが欲しいのは援助ではなく、安定した仕事。それを勤勉にこなす人生を誇りとしている。

そして、勤勉でないのに権利だけ主張し手厚い援助を受ける貧困層を憎み、ワーキング・クラスを蔑むエリートを憎んでいる、と。ただ富裕層のことは尊敬しているらしい。その辺のまだらさが複雑な感情だよね。「遠交近攻」みたいな話に近いかも。それで敵の多い大統領を産んでしまうんだから、このワーキング・クラスってのはかなりのボリュームゾーンではあるんだよね。

他にも、アメリカの大学進学率が(日本の常識的な数字と比べて)低いとか、いろいろ数字は出てきて、なかなか興味深く読むことができた。

あるサッカー選手が大病を患いました。その復帰までを記した自伝。公式戦に戻れるまで、3年以上かかった。話としては知っていたけど、詳細は知らなかった。途中契約凍結していたらしいので負担は少なかったのかもしれないけど、3年待ったチームも頑張りましたよね。その間にJ2に降格し、選手も大幅に入れ替わった中で。似た境遇としてすぐに思い浮かぶ大宮の塚本もこの本に出てくるけど、塚本はプロ選手には戻れなかったが、大宮で活動を続けている。

最近白血病かかる人増えてるんですかね。スポーツ選手、YouTuber…と指折り数えつつ、かなり壮絶だと噂される闘病生活。それを垣間見れる。それぞれ個人差もあるんだろうけど、アスリートとして復帰しようと思うと、そこにも苦しさがある。だが彼はピッチに戻りたかったんだ。その意志力と、内面の葛藤ね。綺麗事だけじゃない。

タイトルも走り出すんじゃなくて、まず歩き出すんだな、って感じ。人生は長い。

ちなみに私もガンやったことあるんですよー、と軽い気持ちで言えないくらいの内容でした。私のは軽くて、手術1発で終了だったし、身体能力に対するダメージも最小限だったからさ。

技能実習生の話。国によって制度が違う中で、ベトナムから来る人たちはかなりひどい状況に追いやられているらしい。多額な借金を負って日本にやってきて、ひどい扱いを受ける。なかなか凄い話で、凄い本だった。

いやーほんとひどい話よ。許されてるのこれ。ベトナムしっかりしろ。借金を強いられる制度を改善すればだいぶマシになると思うけど、どうかな。家賃の話とか、日本側もひどいんだが。人権ってのは基本的にホモ・サピエンスの全員に与えられているもので、基盤だと思うんだけど、それがない立場ってのがあるのか。

netflix産の長編イメージビデオ? アメリカの黒人の苦難に関する語り。これはビデオではなくて本で読むべき内容ではあるが、最近はこういう難しい内容も動画で見る需要があるんだろうね。映像自体の持つ力も大きい。私もYouTubeで無料公開だったので見たクチ。いま話題のやつですね。

合衆国憲法の修正13条。南北戦争の後、黒人を含めた人権に関する項目になったが、犯罪者を除くという項目が悪用される。結果、世界の囚人の4割をアメリカが占めることになった。そして囚人は黒人の率が多い。マイナスイメージの流布もあって…

出てきた数字なんだけど、黒人は5%なのに囚人の40%が黒人とか、黒人→白人のレイプより白人→黒人のレイプのほうが多いとか。後者は人口比なんじゃないのと思わせる述べ方。他のとこでは数字で語ってたのに、ここだけ「多い少ない」だもんな。ただその後調べたらアメリカの人種構成では黒人は40%くらいだった。なら囚人の人種構成の数字も間違ってるんだろうね。まあそうか。

しかし4割もいたらもうマイノリティではないよなあ。それにも関わらず不当な扱いを続けてたら、そりゃ暴動になるわなー。

というように、動画を1.2倍速で、ほとんど聞き取れない早口の英語を字幕で読むから肝心なところを間違って受け取って辻褄の合わなさが気になって…という悪循環を経験してしまったよ。

敵対するロビイスト団体の人も顔出しでインタビューに応じてたけど、見た目は若かったし、歴史的な経緯の責を問うには不適切な相手。悪意の編集も受けたんだろうけど、ああいう形でインタビューを受けるのは勇気あるね。

アジアの原人たちの多様性について。監修の海部さんという学者の研究に密着して紹介する。

人類。今はホモ・サピエンスつまり新人しか世の中にはいないんだけど、かつては猿人・原人・旧人がいたわけだ。共存していた時代もある。アフリカから出て地球に広がった原人の子孫はいなくなって、改めて新人がアフリカから出てきたというわけだ。

で、地球の人類はなぜ我々新人だけになってしまったのか。

という謎が根元にあり、アジアの原人の化石をいろいろ研究していっていろんな新しいことが分かってきて…という話ですね。凄いよこの研究。学術に寄りつつも読みやすい文章構成が心地よい。

前作「掏摸」の兄妹作。前作の登場人物も出てくる。相変わらずの不気味さと、夢見がちな犯罪者主人公。

なかなか楽しめた。のはいいんだけど、こういう小説は感想を書きにくいね。ネタバレとかにつながると野暮だし。

唐突に本名を知られる衝撃や、主要人物が偽名なので呼び名が変わるのでぼんやりしてると混乱する傾向がある…のは前作と同じような展開かな。

ハードボイルドな犯罪小説。主人公が優秀なスリ。これ、誰も幸せにならない話ではあるけどね。主人公の内面をぼんやりと、しかし詳細に描きながら、淡々と綴られる離れ業の連続。そして悪役。これが表現できるのが小説なんだよな。

かなり楽しめたので、続編みたいなものが出ていると知り、そちらも読むことにしたよ。

「つけび」川柳で有名になった山口の限界集落の5人殺し事件、そしてその舞台となった限界集落を追った暗いトーンのルポ。その真相に迫る。噂話と悪口ばかりの世界…まあ狭い世界ではありがちの話ではあるよね。田舎か都会かっていうよりも、小さなコミュニティではそうなりがちだ。なんでそうなるんだろうね。私はそういうの嫌いで、すごく嫌な気持ちになるんですよ。学生時代の部活で、そういう方向に行きかけたことがあって…(略)

その状況に妄想癖の障害(病気?)を持った人物が押し込まれたらどうなるか? 悲劇しか結末が思い浮かばない。

この本はかなり真相に迫ったんじゃないかと思った。それを思いつつ、狭いコミュニティのそういう噂や悪口の気持ち悪い世界のその気持ち悪さをうまいこと表現していた。なかなかのもんですね。

イランからビザなしで移ってきた一家。超過滞在の果てに、特別在留許可をもらって日本で無事に暮らせるようになり、そして…学校にもちゃんと通って大学まで出てる。本人も親も、頑張ったよね。この人はもともと頭が良かった、という部分も大きいと思ったけど。

文化と、国と…いろいろなことを考えさせられる本ですね。

現実として、私は千代田区にある会社で働いていますけど、会社周辺のコンビニとかチェーン店の店員はほとんど外国人です。県境をまたいで田舎にある自宅付近はまだ地元のおばちゃんや学生さんが主力だったりしますけど、田舎が都心の10年後を追いかけているとすれば、まあ全国そうなるのも時間の問題です。固有の文化の継承ってのも大事ですけれども、日本は古来より渡来の文化を融合させるみたいなところに心を見いだすのが好きだったりするんで、それがいい方向に転んで欲しいものですね。だから文化を持ち込んだ人々にはその文化を大事に伝えて欲しいなーなんて思っている。

その前に、文化を持っている人々にとって、日本は来る魅力がある場所じゃなくなってしまうんじゃないか…という危惧も、あるんだけどさ。

人文系の学問の中で最も信頼できる経済学。経済学って「応用数学」みたいな感じですからねー。その経済学の先生が教育部門を経済学の手法で研究する。アメリカではもう一般的な手法らしい。日本はこの分野で大幅に出遅れている。

かなりの説得力を持っているね。効果のある教育手法を導き出すにはどのように実験し、どのように分析すれば良いのか。ただアメリカの後追いでしかないんだよね。追わないよりはマシだが。日本ってこういう実験をしづらい事情があるんだろうなー。後追いなりに、追いかけて紹介してくれる本って感じかな。

ただまあ、木ではなく森を見るとそうなんだろうけど、実際の子供は1人1人異なる人格と特性を持っているんで…という感想も抱いてしまう。結局は個別対応の連続なんじゃないのかな、教育って。