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山椒の実

Category: Mystery

逆転 二係捜査 (本城雅人)

穴掘りシリーズ第2弾。穴掘りで先手を取られた話の後編、みたいな話だった。どうしても後味は悪いよね。悪役を悪役らしく描こうとしているのは分かるが、対照的すぎて不自然な感じになってしまった。さすがにこれは悪すぎるでしょうよ。そこまで悪くなくてもいいでしょうよと。もうちょっと手心というものが…

前作も犯人の悪さに関しては、そうだったかな。あいつも悪すぎたよね。

まあ今回も出来は良い部類だと思った。思ったけど、でも悪すぎてついていけない気がしたよ。ミステリと言いつつ、謎はそれほど大きなものではない。自然な展開についていくだけ、悪はあくまでも悪。そんな夜の読書だった。

アクロイド殺人事件 (アガサ・クリスティ)

俺、アクロイド。お前、何ロイド?

クリスティの問題作。だって悪ロイドだぜ? 悪の、アンドロイド。やばすぎる。名は体を表す。危ないよ。近寄るな!? 話し合おう?

のっけから関係者が死んでいくんだけど、ポアロ登場が序盤のキモかな。渋るんだよね。この理髪師くずれのガイジンのカボチャ農家が。そして引退宣言までするという。しかしフランス人だつけ? ベルギーだったような。

クリスティで麻雀の観戦をすることになるとは思わなかったな。日本のリーチ麻雀ではなく、中国ルールかな。花牌は出てこなかったが。しかしあの土壇場で飛び出した天和には驚いた。九蓮宝燈なら伏線にもなったのに。

川崎警察 真夏闇 (香納諒一)

「川崎警察じゃオラー!」ドガ! バキ! ドス! ガラガラドッカーン!!

沖縄返還の直前あたりの時代の川崎警察の話。ヤクザが活躍する。相変わらず、時代の空気感が良い。このシリーズいいよね。

今回も、いいやつが死んだな。しんみりするよ。

しかし謎があんまり解決してない気がしたなあ。羽田空港から車に乗って、同じ車が無事な描写があるけど交通事故に遭ってる、みたいな。地下で死んだやつも、あの場所にいる理由があんまりないままなんだよな。現実ならともかく、小説なんだから。全体的にもっと説明できてたほうがいいんじゃないか。ほんと、現実ならそれでもいいのだが。

化け者心中 (蟬谷めぐ実)

江戸時代の歌舞伎役者たちの中に紛れ込んだ鬼を探す話。このでんせつてきなじけんは「かぶきおに」という童子たちの遊びとして現代にも伝わっている。ウソですが。まあそんな、ウソのようなことばかり言い出す人たちの話。

リズムが良かった。筋はちょっと複雑さがある。人数も多いけど女形と男形の違いくらいしか印象に残らない…まあもっと描写はあるんだけど、詰め込みすぎでは? 一つ一つは割と良さがあった。

途中で鬼がちゃんと出てくるのか不安になった。出てこなくても解決編を書けたんじゃないか。まあ、出てきます。鬼。ご期待ください。

緑の家の女 (逢坂剛)

オシャレ会話を楽しむためのハードボイルド風探偵物語。息をつく暇もなく、マシンガンのようなオシャレ会話。このリズムだよね。短編集でテンポもいい。主人公の興味の範囲がいい具合に絞られていて、統一感もある。なかなか良い作品だった。それでも最後の方の暗殺の話は偶然が過ぎたと思うが。

全体的にはかなり楽しめたし、シリーズになってるらしいので、他の作品も読みたいなあ。

人間の証明 (森村誠一)

昭和ミステリ。いい題材だと思うけど、あんまり引き込まれないんだよな。文章が自分に刺さらないというか。トントン拍子だがまどろっこしい矛盾した展開。複数の物語が統合されていく様子は、よくできていたが。関連し過ぎな面があるほどに。

まあでも、こんなもんなんだろうなー。微妙な感じだった。そんなに死ななくてもいいのに。全員不幸になってしまう。最後は独りよがりの憶測を重ねた推理、根拠薄弱尋問でムリクリ自白させるような展開だもんな。推理小説としての救いがないと思った。

ただ、それだけでよかったんです (松村涼哉)

スクールカーストへの革命? を実行した中2少年の物語。

田舎の中学校みたいなクローズドサークルで誰がいじめたのいじめてないのって、そういう話だった。いじめを苦にした自殺が発生し、そこから謎解きが始まる。テーマが限定されすぎていた気がするなあ。読んでる間は、興味深く読めたと思うよ。読後感が何か残るかっていうと、アレだけども。

まあ設定が極端なんだよね。それで、辻褄が合うように物語を設計して。そんな感じの作業が浮かんでくるような感覚があった。読んでいての、勝手な感想なんだけれども。

因縁 (福田和代)

あのクロエが殺されるとは。マジか。衝撃的な事件だった。その事件を解決する、「タクシードライバー」の息子。そして豪胆な登場人物が続出して、神戸を舞台に決勝戦の熱い戦いが幕を明ける!

なんのことを言ってるのかわからないと思うが、そういう話だったんだよ。かなりよく書けていて、引き込まれた。エピローグもキレイに合わせて読後感を調整してくれた配慮も感じた。ああいうのってちょっと蛇足感もあるんだけど、安心する人もいるだろう。

宿罪 二係捜査 (本城雅人)

シリアス系の警察推理小説。シリーズなってんすか。町田みたいな東京でもない神奈川でもない、みたいなどっちつかずの場所の設定が効くのかな。狛江や福生ではなかなか、出せない味だよね。狛江と福生にはかなりの開きがあるのだが、分からないよねえ。

この物語の二係が担当するのは、穴掘り事件などと言って、死体が埋められたりして発見されていないまま解決せずに長時間経過してしまった殺人事件のこと。失踪情報や捜査資料を読みまくって手がかりを探す。

ラバー・バンド (レックス・スタウト)

ネロ・ウルフのシリーズ。今まで読んだことはなかったけど、巨漢の安楽椅子探偵だね。人気はあったはず。

かなり楽しめた作品になった。依頼人もそれなりに活躍したし、主人公も暴れたし、まさかゴムのコールマンがコールマンのゴムだなんて。描写は少ないが依頼人は美人らしいしね。本人の描写ではなく周りの反応の描写だけで美人と思わせるところがなかなか、うまいんだよな。そう思った。