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山椒の実

Category: Mystery

緑の家の女 (逢坂剛)

オシャレ会話を楽しむためのハードボイルド風探偵物語。息をつく暇もなく、マシンガンのようなオシャレ会話。このリズムだよね。短編集でテンポもいい。主人公の興味の範囲がいい具合に絞られていて、統一感もある。なかなか良い作品だった。それでも最後の方の暗殺の話は偶然が過ぎたと思うが。

全体的にはかなり楽しめたし、シリーズになってるらしいので、他の作品も読みたいなあ。

人間の証明 (森村誠一)

昭和ミステリ。いい題材だと思うけど、あんまり引き込まれないんだよな。文章が自分に刺さらないというか。トントン拍子だがまどろっこしい矛盾した展開。複数の物語が統合されていく様子は、よくできていたが。関連し過ぎな面があるほどに。

まあでも、こんなもんなんだろうなー。微妙な感じだった。そんなに死ななくてもいいのに。全員不幸になってしまう。最後は独りよがりの憶測を重ねた推理、根拠薄弱尋問でムリクリ自白させるような展開だもんな。推理小説としての救いがないと思った。

ただ、それだけでよかったんです (松村涼哉)

スクールカーストへの革命? を実行した中2少年の物語。

田舎の中学校みたいなクローズドサークルで誰がいじめたのいじめてないのって、そういう話だった。いじめを苦にした自殺が発生し、そこから謎解きが始まる。テーマが限定されすぎていた気がするなあ。読んでる間は、興味深く読めたと思うよ。読後感が何か残るかっていうと、アレだけども。

まあ設定が極端なんだよね。それで、辻褄が合うように物語を設計して。そんな感じの作業が浮かんでくるような感覚があった。読んでいての、勝手な感想なんだけれども。

宿罪 二係捜査 (本城雅人)

シリアス系の警察推理小説。シリーズなってんすか。町田みたいな東京でもない神奈川でもない、みたいなどっちつかずの場所の設定が効くのかな。狛江や福生ではなかなか、出せない味だよね。狛江と福生にはかなりの開きがあるのだが、分からないよねえ。

この物語の二係が担当するのは、穴掘り事件などと言って、死体が埋められたりして発見されていないまま解決せずに長時間経過してしまった殺人事件のこと。失踪情報や捜査資料を読みまくって手がかりを探す。

ラバー・バンド (レックス・スタウト)

ネロ・ウルフのシリーズ。今まで読んだことはなかったけど、巨漢の安楽椅子探偵だね。人気はあったはず。

かなり楽しめた作品になった。依頼人もそれなりに活躍したし、主人公も暴れたし、まさかゴムのコールマンがコールマンのゴムだなんて。描写は少ないが依頼人は美人らしいしね。本人の描写ではなく周りの反応の描写だけで美人と思わせるところがなかなか、うまいんだよな。そう思った。

傍聞き (長岡弘樹)

短編小説集。秀作揃いだった。文章の構成が上手いんだろうな。ストーリーとしては、職業に特有な出来事の中で小さな謎を解明する心理描写なんだけど、自然に引き込まれていく。

自分の職業で起きうる出来事で、こういう物語を書けるかなーと思いながら読んだ。前任者によって仕込まれたバグを運用でカバーしていたところ…嫌な話だなこれwww

同姓同名 (下村敦史)

同姓同名のヤバい殺人犯がいた場合の話。大山正紀、出てきすぎだよ。だいたい少年法が…著者だって書き分けが大変…いやむしろ楽しんでいたのでは。

同姓同名の悪名が人生を狂わせるというのは、ありそうで怖い。悪名と無縁の著名人で考えても、鈴木イチロウなんて何人いるんだか。私ことわたなべはありふれた名前で、下の名前もかなりありふれている(非公表です。書きませんよ? 少しはバレたくないのでね!)ので、同姓同名は多いと思う。その中の誰一人として悪名を轟かせずにいてくれて、心底ありがとうと思った。

シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (松岡圭祐)

つまりバリツを教えたのが伊藤博文で、彼は長州弁で武術と発音したんですな。それが人づてに口伝されるうちにバリツ…何だこの納得感は?(←この本の解釈とちょっと違います)

しかし伊藤博文か。絶妙な人選ではある。そこに大津事件に不平等条約と、すげーことになった。というわけで、とても楽しく読めた。一気読み必至だ。今日もまたオレの睡眠スコアが削られる…

この著者は多作のようだから、機会を作って他のも読んでいこう。

夜歩く (ディクスン・カー)

バンコランのシリーズ。ホラー味のある。ダメ、絶対。

この種の本では、言い回しがかっこいいことがあるんだよな。メモ帳を手に読みたくなる。序盤で早速、いつか言ってみたい言い回しを見つけた。

「ところで、この部屋は客を殺害する以外の何かの目的で使われているのかね?」

いつ使おうかな。ワクワクしてきたぜ。

しかし、フェンシングの達人が簡単に首チョンパされるとは信じがたい。最近では日本の選手も世界で活躍していて、ちょうど今やっているオリンピックでもすごいことになってますが。私の頃も日本代表に入るような選手は練習や試合で手合わせして、自分からするとすごい強かったですが、世界ではなかなか上には行けてなかったですね(一応経験者です…ガチ勢の底辺、くらいの)。その感覚でいえば、あの人たちが1回戦負けするような大会で優勝するのが世界チャンピオンだよ? そんなスキがあるとはとても、ねえ。

探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます/さらば南武線 (東川篤哉)

溝の口推理小説三部作の2-3作目。

キャンプや運動会を経て、ついに川崎駅にまで進出した2作目、栃木だか茨城だかの別荘まで行った3作目。活動範囲を広げてますが、これ溝の口系ですよねえ。その原点を忘れちゃいけないと思います。まー終盤はだいぶ溝の口でしたが。凶悪犯罪都市…おそろしや〜

あとは、ラストのそのあとのことなんだけどさ、この溝の口の豪邸はどうなるのかな。どうしても気になってしまう。帰ってくる気があるなら、便利屋に頼んで手入れしつつ維持するという手もあるんだけど、常識的に考えれば、何らかの処分をするのではないか。