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山椒の実

Category: Books

桐島、部活やめるってよ (朝井リョウ)

途中で読むのやめようかと思ったんだけど、結局最後まで読んだ。オッサンには辛いんだよこういうのは。よく書けてるだけにね。映画のほうもかなり話題になっていたけど、なるほどと思わせる。

まあ人名が多くて覚えきれないのは、それはそれで。でも凄く良く書けてるんだよねこれ。高校生の内容のなさとか、内容ってやつへのあこがれみたいなものとか。私は男子校で病気をしつつも最後まで部活はやりましたけど…おまけに不本意なことに大学に入っても同じ競技を続けてしまった…それも不真面目に!

我が逃走 (家入一真)

あの家入さんの続編。ロリポップとかペパボの人ね。引きこもりから社長になり、最年少で上場、そして転落。振れ幅の大きい人生を振り返る。絶頂から2年でどん底だもんね。さすがだ。社長時代も打ち合わせブッチとかしまくっていたらしいという。おいおい。

飲食業にのめり込み、ペパボを追い出され、お金に困るようになって、離婚して…しかしこの人の凄いところはやりたいことはやってるんだよね。やはり家入一真。誰よりも繊細で、それでいて破天荒。そんな芸当、この人にしかできないよね。

誰も知らない東京スカイツリー 選定・交渉・開業・放送開始…10年間の全記録 (根岸 豊明)

東京スカイツリーの計画から実際に電波を出すようになるまで、テレビ側の人がテレビの視点で書き記した本。割と面白かった。

東京タワーも似たスキームだったらしいですが、スカイツリーは計画と選定、賃貸による利用がテレビ側、建設と運営が東武(運営は専用に会社を作る)という感じで分担されているらしい。テレビとしては直接建設に関わるわけでもなく、運営に関わるわけでもなく、単に主要な店子の一つ、という立場。ただ計画や場所の選定、役所の認可回りの仕事はテレビ側がやっていたみたい。なるほど、そうなっていたのか…。テレビ側がやると何の変哲もない電波塔になったりとか自社ビルの屋上とかに質素なものを作ってしまうとか何とか。スカイツリーは観光的にも大きな存在になっているからね。

あきらめない 脳梗塞からの挑戦 (西城秀樹)

あの西城秀樹の闘病記。脳梗塞になってリハビリを続けて歌えるようになったと。実際このあと2004年の市制記念試合で私もYMCA踊りましたからね。なつかしいなぁ。声量が足りなかった川崎麻世っていまどうしてんだろう。元気かな。あれでヒデキが凄かったんだということは再認識した俺たち。

で、こないだも市制記念試合があったので、この本を手にとったわけだ。

いろいろ書いてあるけど、西城秀樹とて人間なんだなぁ、という感想が適切かな。脳梗塞はけっこうヤバいが、うまくいけばサヴァイブできないこともないね、ということは分かった。外国で発症したときの不安は察して余りある。可能な限り良い対処をして、良い医師にかかってリハビリを続けて、そして復帰できたわけだ。まあこういう本書くのは再発フラグ…というのは本当の話で、このあと再発して再度復帰するところまでがセットだよね。

黙示録3174年 (ウォルター・M・ミラー・ジュニア)

滅んだ世界がまた滅びに向かう…その人類の壮大な自殺をキリスト教の世界から描く。なかなか読ませる本だった。この本がこの私が生まれる前に書かれていたんだから、なかなか古代人も侮れんものだな。いや普通に凄いのだが。

これキリスト教以外の宗教が生き残らなかったのかね…日本仏教ベースで同じこと描いたらまた違うんだろうな。

単純化革命から知識を守るために教会がとった手段が「ひたすら隠す」というものだったけど、現代人として思うに知識の喪失を避けるためにできることは、知識を広めることだけだろうと思うんだ。

洞窟オジさん―荒野の43年 平成最強のホームレス驚愕の全サバイバルを語る (加村 一馬)

親から虐待を受けて中学生で家出して、そのまま人間界を離れて洞窟に住んだ男が壮絶な半生を淡々と綴る。なんともすげー話。シロの話とか、サバイバル関連の知識を詰めた話とか、途中で優しかった兄に会う場面なんかもいいし、ドラマだよね。ただやっぱり人間界を離れて徒歩でいろんなとこに行ったり、自殺しようと思って失敗して富士山の樹海にも行くんだけど…

凄惨な話と思いきや、本人の資質か編者の特性か、暗さがあんまりないので普通に読める。悪人ではないんだよな。ただこの人相当汚かったろう。

審判 (田代まさし)

田代まさしが最初の出所後について記した本。まあ、割と元気に再起に向けていた頃の話で、その後また薬物で捕まっちゃうというオチがあるんだけど、出版時期から言ってそこまでは書かれていない。でもそれを知って読むと薬物の怖さがむしろ分かるというこのアングルね。絶妙なものがある。

この本の出版から次に薬物で逮捕されるまでに1年ちょっとしかかかってないわけだ。それも、無分別な若者ではなく、50過ぎて紆余曲折、酸いも甘いも噛み分けたはずの、いいオッサンがだよ? 割と寛大に仲間の支援も受けていた奴がだよ??

安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (安田 隆夫)

ドンキの創業者が引退に際して語る、その物語。割と楽しく読めると思う。まあ若い頃の麻雀の話とかも交えつつね。

ナイトマーケットの発見、深夜営業に圧縮陳列にPOP洪水でアミューズメント性が高い店作り。どうにもうまくいかないので権限を部下に委譲してゲームのように競わせてみたら好転したらしい。長崎屋を買収したのがドンキだったというのは意識してなかったな。あんまりドンキ行かないんだよねおれは。最後に行ったのはいつだったか…そういう、俺みたいなファミリー層向けの店舗も出しているみたいだ。

科学者は戦争で何をしたか (益川 敏英)

素粒子でノーベル物理学賞を受賞した学者で左派の闘士が語る戦争と科学者の関係。平易で読みやすい。深いことは言ってない。言ってるのは非常に単純な原理、「おまえら科学者である前に人間だろ!?」と。まあホント、大したことは言ってないな。誰もが思うことなんじゃないかという気もするし、そういうことを何にも考えてない人もいるんだろうなとも思う。

実際のところ、私も若い頃こういう類のことを考えていた。そして新卒入社して、最初に上司になった人に飲み会で聞いてみたことがあった。つまり、軍事関連の仕事があったらやるべきか否か。僕は敵を殺すために就職したわけじゃないから、やりたくないと思ってたんだよね。敵といえども命は重いよ。だから良心に聞いてダメなら会社辞めるしかないなコレ、と。

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた (ルイス・ダートネル)

文明が消滅したあとのサバイバル術、及び文明の復活のさせ方について論じた実用書。非常に興味深い。著者の知識量に圧倒される。現代はThe Knowledgeというものらしい。知識、だけじゃちゃんと訳したとは言えない言葉らしくて、うまい日本語がなくてこういう邦題になったみたいだ。

この本の魅力は、この知識量の詰め込み方。とても一冊に収まる量ではなかった気がする。こういうコスパの良い知識のタンクは一家に一冊持っておきたい気分になるよね。まあ僕は大破局が起きたら生き残ってないんじゃないかと思うけどね。けっこう判断悪いからなー。