カラスやキリンの次はバッタだ。この本はバッタ研究に取り憑かれ、サバクトビバッタを求めてモーリタニアで奮闘した研究者の記録。タカ・トラに続いて人類を魅了するその生態。研究を深めて人類を救わんとする若者の前途はいかに。学者を目指したことのある人や、学者の世界を垣間見たことがある人なら、この本は非常に楽しめると思う。そうでない人が読んでも、たぶん楽しいと思う。それだけの情熱がある。たぶんね。
この本で知った知識はそれほど多くはなく、冒険物語としての側面が強いのだが、みなさんバッタとイナゴの違いを知ってますか? 実は日本でバッタと呼ばれている種の多く群生相がないのでイナゴという分類らしい。相変異により集団バーサーカーになるのがバッタであって、そうならないのはイナゴ。学術的にはそうなんですね。へー。
ポスドクの苦しさや、自然を相手にする難しさが伝わってくる。そしてその情熱も。とてもいい本だった。ポスドクとかその辺の、知的レベルが異常に高いのに経済圏では不遇、という状況で書き綴られる文章の時点で、もともとクオリティに優れているんだよね。この本の著者のように冒険に飛び込んでいったんなら、なおさらだよね。まさに瑞玉。