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山椒の実

Category: Food

朝ごはん (川上健一)

朝が好きな女性が主人公の小説。こんな現実感がない浮世離れしたやつにどうやったら感情移入できるんだろうか。

不意に始まる早朝から人数の読めない食事会、しかも薪や炭で作るなんて地獄のようなシチュエーションで無邪気に楽しむ描写を見て、私は何を思えばいいのか…これシャケ足りるわけねーじゃん? コメは、パンはこの人数に足りるくらい持参したのか? まさに化け物級だ。しかも、そこからは怒涛の展開。殺人事件も起きるし!

つまりこれ「読んだ」くらいの感想しか書けねえ…異様な世界の異様なセリフがひたすら続いて、恐怖をも覚えた。もしかして、これが異世界転生ものってやつか? そう考えると、結構怖かったな。

食べるとはどういうことか (藤原辰史)

若い人との座談会を本にしたもの? かな。小学生から大学生までを相手に京大の先生が指揮を取って、食べるということに関する哲学的なことを語り合う。

さすがにまとまりはないけど、割と面白かったな。大学の先生らしく、いろんな本の紹介があったりして、興味深いものがいくつもあったので、いずれ読む本リストの拡張がはかどったよ。たまにはこういう本もいいよね。

結局、ウナギは食べていいのか問題 (海部健三)

表題に関わることについて、Q&A形式で記述していく。食用ウナギの扱いについては多くの未解決問題があり、解決はまだまだ先であろう、ということが分かった。

著者は結論を書いていないが、私はおそらく食べないだろう。安全で適法なウナギを食べたいが、それを選ぶ手段がないらしい。高級店でもチェーン牛丼屋の鰻でも、ルールに従って生産されたかどうかという点では変わらないみたい。

これでは食べる選択ができない。

ハイパーハードボイルドグルメリポート (上出遼平)

新年1発目の読書体験は、超話題TV番組の書籍化。白状すると私は番組の動画は見てないんですが、書籍自体も話題になっていたので、読んでみたというわけだ。

どう表現したらいいのか、すごい話が続いた。読んでいてなんともやるせない気持ちになったし、最初のリベリアの章を途中まで読んで受けた衝撃で、その晩に眠っていたらいつの間にか自分が涙を流していたことに気づく…なんていう虚構の中でしかあり得ないような体験を実際にしてしまった。読み終えた今も、衝撃は続いている。この衝撃でも崩れないほどハードなゆで卵はちょっと想像がつかないな。

クリーンミート 培養肉が世界を変える (ポール・シャピロ)

いやはやまたこれは…すごい本を読んだぞ。衝撃だ。これだから人生やめられんよ。緑の革命で一息ついたものの、人口増後の栄養問題という、普遍的な問題に挑む。

世界を救うにはどうしたらいいか? クリーンミートだ。地球の人口は増え続けていて肉食も増えていく。動物はどう? 序文の比率がすごい。野生動物の数と飼育動物の数の比率ね。その飼育動物たちは劣悪な環境で飼育されて肉になるんだが、苦痛に満ちた一生を過ごすわけよ。そしてそもそも人口の増大で肉が足りなくなるわけ。今のボリュームゾーンの人たちは野菜を食ってたまに肉をご馳走にしているけど、それが欧米人のように毎日肉を食うようになったら? 非効率的な現在のやり方の延長では持たない。地球が。人類いい加減にしろよ…

開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える「してはいけない」逆説ビジネス学 (川田利明)

タイトルなげーな。伝説のプロレスラー川田利明が郊外のラーメン屋を10年続けて、俺たち後輩にその経験を語る。

うーん、まあ、俺はラーメン屋やる気なかったけど、今後も思わないようにしとこう。文章はすごく面白かった。庶民向けの飲食業って、全般的に茨の道ですよね。単価が安すぎて割に合わないんだろう。コロナがない頃でも厳しかった。コロナで持ち帰り専門の業態にしたら逆に楽になったとか、あるのかな。ラーメンみたいな食品だと持ち帰りも対応しづらいだろうけど。

今日ヤバイ屋台に行ってきた (坪和寛久)

YouTubeの人気チャンネルで、私もよく見ていた『今日ヤバイ奴に会った』の人の初の著書。動画やインドや自分の人生の一部についての文章がある。

実際コロナで世界がヤバいことになってから見る頻度が減っていたんだが、本が出たらまあ、買うよね。カーンさんのこととか、あの謎のドジっ子お姉さんの店とかも載っている。ただこの本は動画の面白さには勝てないかなー。一応チャンネルの説明をしておくと、インドの屋台の動画を出してくれているチャンネルね。まあ、料理動画の一種よ。パンを自作してた頃は、このBGMを頭の中で鳴り響かせながらこねていたなー。

トマト缶の黒い真実 (ジャン=バティスト・マレ)

トマト缶。なんと平和な物体だろう。しかしその先には深い深い闇があった。またすごい本を読んだなぁ。

アメリカではケチャップは正式に野菜と認定されていて、ケチャップがドバドバかけられたピザがサラダという扱いで給食に出てくるらしいです。カロリーゼロ理論に近い。

それはともかく、缶詰やケチャップに使われるトマトはなかなかブラックな作られ方をしている。アメリカ・カリフォルニアの機械化の話は確かに残酷な面はあるが非人道的とまでは思えなかった。究極の効率を追い求めつつ、アメリカ的な話だよね。中国の新疆ウイグル自治区の話もまあ、アメリカ方式を目指してるんだろうなって。軍との関係はかなり勉強になったよ。イタリア南部の話はわりとひどいな。マフィアが仕切り、移民をこき使って…

サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す (キャスリーン・フリン)

料理ライターのあの人が、なぜか本がよく売れた日本を訪れた。その濃厚な滞在を書く。ちょうど築地から豊洲への移行の日。築地の生き字引のような人物に案内を受けたり、寿司アカデミーで寿司の技術を学んだり。

寿司は私も自宅で握ることがあります。手巻き寿司にするときと、握り寿司にする時がある。学んだわけではなくて、「すしのこ」と刺し身を買ってきて自己流で握るっていうね、あと海苔も軍艦に必要だな。家族で生魚を好むのは私だけなのでw、大抵は具が余る。家族はツナマヨとかタマゴとか稲荷とか食ってるんだもんな。あれはあれで美味しい。まーでも子供もマグロとサーモンくらいは食えるか。

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室 (キャスリーン・フリン)

料理教室による人々の成長を描いた実話。世代間の技術の断絶があったり、まあ人それぞれの事情があるんだけど、料理をしない人々がいたと。そこに料理の技術を伝授することで料理するようになり、ウハウハになったと。そういう話です。

日本のカレールウの下りが良かった。自分が料理をしていった先に、市販のルウを使ったカレーと同じ/より良いものを生で自作できる人生があるのか? っていうと疑問も残るわけだけれども。

本書では生徒は女性ばかりですが、料理できないことに関する劣等感みたいなのは決して女性だけのものではないでしょう。人類って端的に言えば火を使って料理するサル、ですよね。人類であるからには料理くらいできるでしょ、というのがあるんですよ。料理できなきゃこの東京砂漠をサヴァイヴできないからさ(←んなわけない)。でもその技術を持たない人ができるようになるキッカケがないのだよね。