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山椒の実

Category: Books

富士山噴火 (高嶋哲夫)

噴火のクライシス系の小説と言えば「死都日本」。あれは九州の山体崩壊だが、これは富士山。ただ結果だけ見れば九州よりも規模は小さいのかな。それでもかなりのもの。

両方読んだ感じとしては、どちらも自衛隊が噴火対応の装備を持っているというのが前提になっているのが気になるところ。小説の都合で実際は持ってないんだろうとは思うけどね。

あとは記述としてはリアリティはどちらも差はないような気がする。主人公の知り合いしか登場人物に出てこないというのは気になるんだけど(そう都合よく行くわけないよね)。実はこれはシリーズ物で、シリーズの登場人物が普通に出てきていただけらしい。ただこんな災害がシリーズになってたらやばいよね…まあ、暇があったら他のやつも読みます。

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼 (雫井脩介)

あの巻島が帰ってきた! このシリーズいいですね。

今回は振り込め詐欺+営利誘拐。振り込め詐欺をする奴らが誘拐にも手をつけるとどうなるか。両者は水と油みたいな感じで導入に苦労している感じがあるけど、さすがにこの著者の序盤は素晴らしく引きつけられる。

さらにこの本に限っては結末も綺麗で、読み応えもあって悪くない。犯人側の描写がかなり多く、それも良い。どっちも頑張れーと応援してしまうんだよね。設定的にもなかなかありふれた悲劇の人物で、感情移入してしまう人は多いのでは。「自分も一歩間違ったらこの犯人と同じ境遇になっていたとしてもおかしくない」感が非常に強く感じられる設定なのよね。

仁義の報復 元ヤクザの親分が語る埼玉愛犬家殺人事件の真実 (髙田燿山)

世間を騒がせた殺人鬼に幹部を殺されたヤクザの親分が真実に迫る。すごい話だな。チャクラが開いてるだけあって書くことがすごい。ゾクゾクするよ。

まー書けないこともあったんだろうな、というのと当事者ならではの脚色が入っていることは想像できる。サイコキラーともなるとヤクザをも殺せるもんなんだな、と思った。結論としては…ユンケルが悪い。そして山崎。普通は死ぬよねこいつ。死刑を免れたとしてもヤクザが殺しに行くだろうけど…。しかし本を出してるとかいう話で、ググってみたら確かに出していた。しかもTVとかにも出て、元気じゃねーか。

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男 (木村 元彦)

Jリーグにいるじゃないですか、広島系の優秀な人物たちが。川崎(フロンターレ)が最近までお世話になっていた風間さんとかもそう。

この、東京圏でも大阪圏でもなく、広島。割と多いんです。しかし、なぜ広島なのか? そのルーツとなった人物の伝記。著者があの木村元彦だけあって読み応えも満点で、なおかつ素直に読める。オシム本、我那覇本に引き続いてこれとは…ベストスポーツノンフィクション率が最も高い著者だね。少なくともサッカー系ではぶっちぎりだろう。

日本人の英語 (マーク・ピーターセン)

英語についての本。著者は論文の英文校正をしているみたい? 本業は大学の先生なのかな。序盤から度肝を抜かれた感じ。aとtheの使い分け。日本人にはわからないわけだよ。英語の人は単数か複数か不可算か、カテゴライズしてから物事を考えるらしい。つまり名詞にaやtheがつくわけではなく、aやtheに名詞がつく…これは日本人には理解不能だよ。男性名詞とか女性名詞とかもそういう考え方の人々が話す言葉ということなんだろうと思った。

虐殺器官 (伊藤 計劃)

よく噂には聞いていたが、なかなか手をつけられずにいた、割と最近のSFの名作。まあこれが良くても新作を読める可能性がないんじゃなぁ…という気持ちもあったんだけど、読んでみた。評判通り、良い。考えさせられるし、何よりもストーリーに引き込まれる。

実は恥ずかしながらこの本を読むまで著者の名前を読めなかったんだけど、「けいすう?」「けいなんとか?」という感じで思っていた。「けいかく」ね。ひとまず次の「ハーモニー」も読むことまでは心に決めた。

脳が壊れた (鈴木 大介)

脳梗塞にかかり後遺症に苦しむライターが、自分の様子を描く。つとめて明るく書いているので安心して読めると思います。ただ苦しいは苦しいんでしょう。私も病弱ではあるので、病気や後に及ぶその影響については少しは分かった気でいますが。

自分の分析に加えて、他人の分析も割となるほどと思わせる。彼の妻のことや、これまでの取材対象も似たような状態だったのではないか、という話。まあある程度までは個性であるだろうし、ある程度以上は障害や病気ということになるのだろう。私にも、多かれ少なかれ異常はある。

テクノロジーは貧困を救わない (外山 健太郎)

マイクロソフトのインド研で働いてテクノロジーと教育について考えた本。文章が多い。その割には言いたいことは最初の数ページで終わっている気がするのだが。で、このタイトルよ。私はテクノロジーの信者ですからね。テクノロジー以外のものが貧困を救えるとでもいうのか。と思って読み始めたのだけど、、、

テクノロジーは色々なものを増幅させる。勤勉を、怠惰を、快楽を、苦悩を。かなり納得のいく論だった。基本、手綱を握るのは人間であって、テクノロジーはそれを効率化させるための手段に過ぎないのだよ。言いたいことは単純なものであって、それだけにいろんな実例や考察を加えないと説得力が薄くなることは事実。それにしても文章が多かったね。後半はさすがに流し読みだった。

介護殺人 追いつめられた家族の告白 (毎日新聞大阪社会部取材班)

介護者による殺人について取材を重ねた毎日新聞の取材班による著作。これは圧倒されるね。生きるとは。自分や配偶者の死に方について考える。親のそれについても。子についてはまあ、自分でなんとかしろ。自分についてはまー、始末の悪い死に方はしたくないよね。誇りなき死を避けるにはどう生きるべきか…

施設で静かに生活できた方がいいことは分かっている。ケアのために現役世代の時間や才能を奪うというのは構図としてはおかしい。子育てには喜びがある。介護に同じ種類の喜びはないと思う。終わりも見えないし、サイズもウェイトも違う。家族が介護に追われるというのはだから、私は社会のあり方として違うと思う。プロの方が腕もあるし、スケールメリットも出せるしそれ用の設備も使えるからいいよ。

わが子を愛するレッスン―「傷ついた子ども」だった両親へ (M.ラインホルド)

幼少期に親から受けた拒絶への、大人になってからの反応について様々な事例を元に論じた本。

このタイトルを見て奥さんは「ふふん」と鼻で笑いましたが、たぶん君がタイトルを見て想像したのとは違う視点でこの本を読んでいる。自分と、あと奥さんのパーソナリティや行動パターンを分析するために役に立つかな、と思って読んでいるので。自分の子供に関してはとりあえず関係ない。

割と疑問に思っていたのが、自分の自信のなさがどこから来るのか、ということなんですよね。冷静に自己分析してみると、自分ほど優れた人間は滅多にいないし、現在ついている仕事の能力に関しても、日本で上位10%には余裕で入るはず。たぶん上位5%くらいまでは割と高い確率で行けてると思われる。仮に他の職種であっても抜きん出た成果を出せるに違いなく、人格的にも申し分ないし、容姿も驚くほど優れている。運動神経も平均の10倍くらいある上に、頭脳も常に冴え渡っている。それなのになぜ、こうも自分に自信を持てないのか。もしや、幼少期に何かあったのか? という疑問を持っていた。…自分で書いててちょっとこれは厳しいな、と思いつつ。