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山椒の実

Category: SF

無限の月 (須藤古都離)

ゴリラ本に引き続き、同著者の第2作。これまたすごい話だった。ラストの蛇足? は唐突すぎるので置いといていただいて。全体的には、なんとも素晴らしき物語で、本当にいい読書体験だったなあ。木下が満場一致のMoMだ。あわれな芳澤は破滅でもしてろと。

共通する足の怪我の謎も、そんなものかと思ったがよく考えるといい味を出しているような?

SF的要素もちゃんとしていて、ドラマ部分にも強烈に引き込まれる。しかしこれ、日本と中国だったからこういう物語に着地できたんだが、例えばもっとこう、マラウイとか宇宙ステーションとかだったらどうなっていたことか…みたいな考察もありうるよな。遅延とか時差とかを考慮して。たどり着く苦難も中国どころではない。

ゴリラ裁判の日 (須藤古都離)

すごい本だった。名作じゃないの。こういう本を読みたかったんだよな、という感じの本だった。文章力もすごいし、構成も良い。読後感も絶妙。度肝を抜かれた。著者は何者…

夫を殺された知性ゴリラが裁判を起こす。いやちょっと待て。と言いたくなる読者を尻目に、一瞬たりとも待たないで突っ走る。とんでもない知性。ゴリラに下品な言葉を教えるなよ。そして使いこなさないでくれ。我々読者は知性ゴリラの抑制的な独白を追いかけることしかできないのだ。ひたすら。もう、ゴリラのことしか考えられない!

マン・カインド (藤井太洋)

優秀なSFと聞いて読んでみることに。LLMもちゃんと活躍しているし、それっぽい技術要素がまんべんなく散りばめられている。SFっぽさも強くて、いい感じだ。人類強すぎワロタ…と言っていいものかどうか。平安時代のニンジャはこの技術を使って作られていたんだよ。古代ニンジャ文明史の幕開けだ。

ラスト付近はどうだろうなあ。賛否両論? まあちょっと無理があるかな、とは思ったが、クライマックスの後としては悪いものではないとも。あと公認ジャーナリストが公正戦闘に介入したら普通にダメだろうなあ。救った人数で正当化されるような論理があるんだろうか。

シャングリ・ラ (池上永一)

序盤を読んで、かなりの良作では? と思った。ニンジャスレイヤーにも似た世界観の狂った東京で。重金属酸性雨ではないが殺人スコールが降り注ぐ。スモトリとジュージツ使いが戦い、ブーメランが戦車を切り裂く。次世代兵器、経済戦争。これが真のニンジャのイクサだ。

主要人物の描写はいろいろと問題作になりうるなあ。常識人がいない。センシティブな表現が惜しげもなく並び踊っている。書かれたのはまだせいぜい平成中期までだなと察してしまう。令和でこの表現は成立しない。トシもとるわけだよ、ホントにさ。

Timer 世界の秘密と光の見つけ方 (白石一文)

こんな歳になっては知りたいことや知るべきことがあるはずもないのだ、か。大麻でもタイミーさんでもない、Timerという時限付き不老不死装置が普及する世界に生きるモータル老人が、思い出を胸に街をゆく。

老人向けSF小説? 途中まではそれなりに魅力のある物語だったけど、ラストは独善的というか、観念的な話に終始しており、まとまっていなかった。キーになっていたはずの骸骨幻影も整理がついていないし、いろんな言い分にも納得できるものが少なかった。なんつーか、不人気で打ち切られたの? と心配になるような感じ。最近のホラーテイスト入れたらもっと行けなかったか? いろいろ考えてしまう。

三体〇 球状閃電 (劉慈欣)

あの超話題作の前日譚。ちなみに私はまだ本編の3部作は読んでないです。球電現象も、まだこれまで見たことがない側の人間です。つまり完璧すぎる無垢なる読者としてこの本を読んだのだった。

球電に魅せられた学者たちが、世代を超えて結束! チェストー! くらえ、オレの、オレたちの!! ライトニング・スフィア・クラーッシュ!!! いやボールライトニングか。

たいがいの人物が悲劇を負っている中、あいにく悲劇とは無縁の人物が活躍するか? と思いきや、そんな人物は登場しないのだ。悲劇を悲劇で乗り越えていくスタイル。シベリア編がなかなか衝撃的で、印象深かった。そりゃ主人公もやさぐれるよ。

椎名誠超常小説ベストセレクション (椎名誠)

懐かしいなあ、椎名誠。蚊とかアドバードとか、独特なSF感覚が好きだった。ここでターターさんが…私は若かりし頃によく読んでいた。百舌と灰汁が。いやーいいよねこのふわふわした、痛覚のないワールド感。

そんな感じで久々に読んだが、ベスト盤だけあってたぶん読んだことあるやつが多いな。蚊は含まれていたし。なんとなく記憶にあるという。相変わらず、良かった。世界観との距離がね。こういう、身体性の高い作品は今は少なくなったよねえ。なんて言ったらいいのか。

ガニメデの少年 (ロバート・A・ハインライン)

地球の人口が爆発し食糧難に苦しむ中、木星の衛星ガニメデへの移民に入った少年を描くSF小説。

開拓者というか、先に植民している人がいて、後から大量に送り出された人々。まあバラ色の生活のように騙されて来た、ある種の棄民? という地球でもよくあったやつね。ボーイスカウトの話とか、まあいろいろ話が出てきて。文体はハインラインだ。回想のように、解説的な進行。

隣人が強すぎた。死なないにも程があるな。父親も判断力が強い。人間とはかくありたいものだ。特に、大人の男ともなると。

アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

前作よりもだいぶ読みやすくしてきましたね。ゲームチェンジャーになる登場人物が登場したのは意外だった。ジャムはなかなか出てこないので、これはゴドーのようにジャムを待ちながら読み進めるやつか、と思っていた。最後まで出てこない説も考えていたけど、結局出てきたので逆に安心した。次作はいつになるだろう。武器となる人材を得て攻勢に転じるという期待があるのだが。

ジャムになった大佐は何食って生きてるんだろうな。もはや生物ではないから、何も食わずに生きられるのかも?

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

外出するたびに「ダメだ、この惑星は居住に適さない…」と呟いてそこを去りたくなる日々が続きます。この猛暑。そこで夜更けにSFだよ。夏ってのはSFが捗る季節なんだ。

起きるのはすべて、起きて当然のことなんだ。

しかしなかなか話が見えないぞ? 感覚がおかしくなった登場人物がそれぞれに長台詞の考察を続ける、この著者特有のストーリー進行。だけど、現実とは思えない矛盾が目立ち、どうなってんだこれ、と。その謎を解明しながら物語は進んで行くのだけど。そもそも前提となっている地球とフェアリイをつなぐ通路という設定がある。なんだ通路って。お前の心には物理法則とかないんか!