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山椒の実

Category: SF

三体〇 球状閃電 (劉慈欣)

あの超話題作の前日譚。ちなみに私はまだ本編の3部作は読んでないです。球電現象も、まだこれまで見たことがない側の人間です。つまり完璧すぎる無垢なる読者としてこの本を読んだのだった。

球電に魅せられた学者たちが、世代を超えて結束! チェストー! くらえ、オレの、オレたちの!! ライトニング・スフィア・クラーッシュ!!! いやボールライトニングか。

たいがいの人物が悲劇を負っている中、あいにく悲劇とは無縁の人物が活躍するか? と思いきや、そんな人物は登場しないのだ。悲劇を悲劇で乗り越えていくスタイル。シベリア編がなかなか衝撃的で、印象深かった。そりゃ主人公もやさぐれるよ。

椎名誠超常小説ベストセレクション (椎名誠)

懐かしいなあ、椎名誠。蚊とかアドバードとか、独特なSF感覚が好きだった。ここでターターさんが…私は若かりし頃によく読んでいた。百舌と灰汁が。いやーいいよねこのふわふわした、痛覚のないワールド感。

そんな感じで久々に読んだが、ベスト盤だけあってたぶん読んだことあるやつが多いな。蚊は含まれていたし。なんとなく記憶にあるという。相変わらず、良かった。世界観との距離がね。こういう、身体性の高い作品は今は少なくなったよねえ。なんて言ったらいいのか。

ガニメデの少年 (ロバート・A・ハインライン)

地球の人口が爆発し食糧難に苦しむ中、木星の衛星ガニメデへの移民に入った少年を描くSF小説。

開拓者というか、先に植民している人がいて、後から大量に送り出された人々。まあバラ色の生活のように騙されて来た、ある種の棄民? という地球でもよくあったやつね。ボーイスカウトの話とか、まあいろいろ話が出てきて。文体はハインラインだ。回想のように、解説的な進行。

隣人が強すぎた。死なないにも程があるな。父親も判断力が強い。人間とはかくありたいものだ。特に、大人の男ともなると。

アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

前作よりもだいぶ読みやすくしてきましたね。ゲームチェンジャーになる登場人物が登場したのは意外だった。ジャムはなかなか出てこないので、これはゴドーのようにジャムを待ちながら読み進めるやつか、と思っていた。最後まで出てこない説も考えていたけど、結局出てきたので逆に安心した。次作はいつになるだろう。武器となる人材を得て攻勢に転じるという期待があるのだが。

ジャムになった大佐は何食って生きてるんだろうな。もはや生物ではないから、何も食わずに生きられるのかも?

アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

外出するたびに「ダメだ、この惑星は居住に適さない…」と呟いてそこを去りたくなる日々が続きます。この猛暑。そこで夜更けにSFだよ。夏ってのはSFが捗る季節なんだ。

起きるのはすべて、起きて当然のことなんだ。

しかしなかなか話が見えないぞ? 感覚がおかしくなった登場人物がそれぞれに長台詞の考察を続ける、この著者特有のストーリー進行。だけど、現実とは思えない矛盾が目立ち、どうなってんだこれ、と。その謎を解明しながら物語は進んで行くのだけど。そもそも前提となっている地球とフェアリイをつなぐ通路という設定がある。なんだ通路って。お前の心には物理法則とかないんか!

グッドラック 戦闘妖精・雪風 (神林長平)

アイスキュロスだ、とりあえずは。アイスキュロスの逸話を適切なタイミングで話せる大人になりたい。そう強く感じた。とんでもないやつもいたものだ。恐るべし、だ。まさに。

これ、だいぶ昔に読んだはずなんだけどな。内容を完全に忘れていた。つまり楽しく読めた。しかし、こんなダイナミックな展開だったかなー。死にそうで死なない奴が登場してまあまあ活躍した記憶はあるから、読んだのは間違いないのだが。後半はワールド全開な感じがして良かった。

ウォー・ゲーム (P.K.ディック)

ディックの短編集。らしさがあってワリと良かった。気軽にこういうのを読めると楽しい人生になりそうだ。だけどそれぞれ、あんまり印象には残らなかったなあ。後半のオモチャのやつとか、タイムマシンのやつはちょっとは残るけど、結末はもう忘れてしまった。そのくらいな感じで、どんでん返しも大団円もないし、どっぷり引き込まれる前に終わってしまうんだよな。

ディックと言えばどうしても、セルフイメージと現実とのギャップ…みたいなテーマを期待してしまうので、期待が高いと外れたと思うかもしれない。自分が通勤電車で読むにはちょうど良かった。

戦闘妖精・雪風 (神林長平)

昔読んでいた本。物理本で、まだ持ってるんだよね。シリーズに最近新しいのが出たということで、通しで読もうと思った。深井零、懐かしいなあ。相変わらず、お元気そうですねえ。まるで実家のような緊張感だ。剣呑。共感できそうでできない、人間らしくもあり人間らしくもない主人公。どこか現実感のない、まるで地球からフェアリィを見ているかのような雰囲気で物語が進むんだよな。

改めて、これが1980年代に書かれたことを思う。このあと実際に無人機が地上の人間を殺戮して回る世界が来て、今はもっと安価なドローンも主役級に躍り出ている。この40年。

フランケンシュタイン (メアリー・シェリー)

これ青空文庫にあるんすね。それもそうか。派生物も多く、その後の人類に多大な影響を与えたホラーSF長編。

物語のスジはもともとは知らなかったのだが、そしてSF超入門を読んであらすじを知ったのだが、なかなかの良さがあった。鳥山明が同じ物語を書けばそれは人造人間とドクター・ゲロになったんだろうし、仮面ライダーとかもその系譜かな。

創造主と創造物。それぞれの苦悩、というテーマは十分に深いから、その大きな流れを伝える一作、という評価になるんだろうねえ。後世の作品はそれなりに縒れるけど、このフランケンシュタインと怪物はどうか。

普通に出来が良くて、現代人が読んでも充分に楽しめる内容だった。読んで良かった。身勝手な天才にふりまさわれた犠牲者と、犠牲者の犠牲者を思うと、悲しくてしょうがなかった。つまりこれ、主人公だけが群を抜いてクソ。

ブラッドベリは歌う (レイ・ブラッドベリ)

SF系の文章家、ブラッドベリの短編集。中村保男訳の版。

フワッとした、結末にインパクトを置かないものがほとんどだが、中ではリンカーンを暗殺するやつが良かったかなー。SFらしさもあり、SFらしくなさもある。

ディケンズのやつもそうだけど、なんか狂った人が出てくる話ばかりだな。小説は少なからず、みなそうか。

ヘリコプターが頻繁に出てくる。当時はもっと一般人が使う乗り物になると思われていたんだろうか。

あとは、ディケンズをなにか読まなければならなくなった。なんという誤算。そういうことするから信用できないんだよ、昔の作家ってのは。ブラッドベリにとっては別に誰だって良かったんだろうけど、ディケンズかー