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山椒の実

Category: Music

ネクスト・ギグ (鵜林伸也)

音楽の流れる推理小説。ロックで、その表現が素晴らしい。こういうことなんだよなー。鳴ってるもんね、音が。文章で鳴らすのは想像以上に難しいはずだ。こういうことなんだよなー。こういう本を読んで暮らすのが理想の生活なんだよね私にとっては。

謎も、謎解きも良かった。折々に衝撃展開もありながら、ラストの読後感も良い。ロックとは。真っ直ぐで、それでいて色んな方向に曲がり転がる。いやー、ほんといい本を読んだね。

花歌は、うたう (小路幸也)

歌うたいの物語。ずいぶん都合がいいな。町内の人物の闇のない独白が続く。闇がなさすぎて逆に怖い。現実感が薄い。結末も早くから見えている。この空気で何かが決定的に傷つくわけがないんだよ。どうしよう、読むべきか、やめるべきか。一応最後まで読んだ。

表現は難しいな。そう思った。天才とか、才能があるだのないだの、それを文章で表現するわけだけど、まあ出来ないよねえ。どういうイメージなんだろうな。尾崎豊あたりで考えればいいのだろうか。流れ星のようにステージを駆け抜けて、いなくなってしまった歌手。

音楽が聴けなくなる日 (永田夏来・かがりはるき・宮台真司)

電気グルーヴの薬物逮捕→自粛に関連する、「そんな社会でいいのかい?」な話。今やデフォルト側が「自粛する」方になっていて、深く考えない限り自粛、という感じになっている。そんな社会に違和感を覚える。3人の著者がそれぞれ持ち味を出して論じた本。

もう30年以上? 前に読んだ問答集? エッセイ? みたいなものの中で、確か筒井康隆だったと思うが、著者の人となりがどうの…みたいな話を振られた際に「人に興味はない。作品に興味がある」みたいな返しをしていた。ぶっきらぼうな感じがカッコ良かった。それを読んで以来、私はずっとそう考えるのが正しいと思ってきた。だからクリエイターが犯罪者だから自粛、という風潮には抗いたいと思っている。薬物犯は患者or被害者という側面もあって、なおさらそう思う。思うけど、それができているのか? この本を読みながらの自問自答が続いた。

悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝 (浦久俊彦)

とりあえずヴァイオリンがとんでもなくセクシーだってことがマン・レイの「アングルのヴァイオリン」を紹介した一節と画像で分かった。なるほど。

それはいいとして、ヴァイオリンという楽器の特質を大いに語ってくれる、大ヴァイオリニストとして歴史に君臨するパガニーニの伝記。真面目な歴史の話でもあるが、記述に勢いがあって面白く読めた。思い入れが強くて知識が豊富な文章ってのは、読んでて面白い。

悪魔云々はどうでもいいけど、健康と衛生の発展というのは人類の歴史にとって非常に重要だということを認識させられたなあ。メチャクチャな医療の時代だったこともあって、信じがたい治療を受け続けた天才が健康を損なって生涯を終えてしまうというのは悲しいよね。もちろん天才でなくても悲しいことだけど。

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち (スティーヴン ウィット)

現代のデジタルミュージック時代をもたらした人々について綴った力作。かなりの力作ですよこれは。5年かかったらしいですが、それだけのことはある。歴史に残る著作かもしれないね。

その、それぞれの立ち位置ね。3つの視点がある。それぞれ大物で、

  • 表の音楽界の大物
  • 技術者の大物
  • アングラの海賊の大物

という3人の人物。音楽ビジネスを壊し、再生させるのに必要だった3人。前者2人は金持ちになったけど、最後の海賊の人達は大して儲かってないね。みんなほぼ無罪で、有罪になったやつも数ヶ月で出てきて普通に暮らしているらしい。なるほど。

Too many people (ASKA)

ASKAのアルバム。これがネット上では話題作で、誰も宣伝してないんだけど、曲は信じられないくらい良いという話。実際にYouTubeで流されたFUKUOKAにはしみじみと聴き入らさせられたのだった。それで、iTunesで買えるかなと思って待っていたが全然出てくる気配がなく、しょうがないので非常に久々にCDの円盤を買ったよ。いつ以来だ。特段彼のファンというわけでもなかったのだが。流行ってたのは私の大学時代の頃のことなので、懐かしさはあるにしろ。