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山椒の実

Category: History

消された信仰 (広野真嗣)

世界遺産の長崎の隠れキリシタンに関するあれこれを扱った本。書物なしの口伝で伝わるその教えはどのようなものか。キリスト教の本流でも聖書やなんやらはありつつ、教えは変容しているわけで。書物なしで隠れて信仰を続けて歳月を重ね世代を超えると、どうなるか。

明治以降もいろんな歴史が積み重なって今の状態になっている。それを書き記した、貴重な一冊なんだろうと思う。なかなかに、深い。読んでよかった。

統合を図るカトリックとの緩やかな対立関係もある。日本の学者がカトリック側からの視点しか持っていないのは残念に思う。まあ、キリスト教のような攻撃的な宗教だと、どうしてもそうなるよな…

社史の図書館と司書の物語 (高田高史)

川崎にある県立図書館で社史を集めている。その話。どこで読んだんだったかな。まあ、場所は知ってるんだけど、県立図書館は収蔵する本が自分向けとは思えないラインナップなので貸出カードも作っていない。社史ねえ。これは面白くも役に立つ活動だと思った。こういうのが公立の施設のあるべき姿なんだよ。

社史編纂室なんて、左遷の代名詞? みたいな勝手な印象も受ける文字列ではある…んだけど、会社のことを歴史に残す活動には重要性もある。

東方見聞録 (マルコ・ポーロ/青木富太郎訳)

自宅の近所に「丸子」という地名があります。そんな奇縁から読むことになったこの有名な旅行記は獄中で作家に語った内容が書物になった…らしい(獄中と言っても犯罪を犯したわけではなく、敵対国の捕虜になった)。だから、現代に起きたことであれば、著者はその作家ということになるだろうか。あるいはスポーツ選手の自伝のようにライター(インタビュアー)の名前は著者としては扱われないのだろうか。まあそんなことはどうでもいい。

黄金の国ジパング伝説 (宮崎正勝)

ワクワク伝説ってのがあったんですね。楽しい語感だなずいぶん。日本と共にジャワ島にも黄金伝説があったとは知らなかったな。いろいろ楽しい歴史の本だった。奥州の金が尽きて銀山が発見され、黄金の国から銀の国になったとか。カネの匂いがする史実って、なかなかいいもんだなあ。

金銀島の探索あたりは資料も多く残っているみたいで臨場感がある内容だった。思いがけず北海道の話か続いたのも印象的。砂金でゴールドラッシュの頃があったんだな。

織田信忠 天下人の嫡男 (和田裕弘)

割と学術寄りの、織田信長の後継ぎの人物に関する本。若死にしたが、家督も受けているし、軍功も多い。この年でここまでの経験と実績を持つ武将もいねえな、という著者の感覚ももっとも、と思えた。

本能寺の変での死を避けられるルートが実際あったが、それを選べなかった…というのも事後諸葛亮と言うべき指摘。あの時点で味方の時は有能だったはずの明智が実は無能…というのは分からないよ。無理からぬことだし、その後の展開を知らずに低く評価することはできまい。

美しい日本の歴史 (吉川英治)

歴史漫談みたいなエッセイ集。著者自体がすでに歴史の中にある。なかなか楽しく読めたな。

しかし吉川英治の作品が無限に無料で読めちゃう時代。なかなかすげーよな。三国志あたり、行きたいところよ。ただあんまり長いのは時間の溶け方がやばすぎるかもなあ。まあ適度な分量のやつから行こうかな。

ワニと龍 (青木良輔)

龍は実はワニのことだった、という歴史考察をフックにして、ワニについてとんでもない知識量を持ったワニマニアが語り続ける。絶え間なく。恐竜との関係とその考察とか、かなり深いものがある。なかなかすごい本だった。学術的な面をしっかり出しつつも、テンポも良い。

わーにの、おとうさん、わーにの、おとうさん、おっくちっをあっけってー♪

寄生虫館物語 (亀谷了)

目黒の寄生虫館の創始者が平易な文章で語りかける。

寄生虫館、こないだ行ったんだよね。もう1年くらい経つか。なかなかユニークでそそられる施設。実際、かなり面白かった。コロナもあってあんまり人はいなかったし、私設の博物館で研究所だから、こじんまりしていた。ただ面白さはあった。そういえば、来日したビル・ゲイツもここを訪れて楽しんだらしいというニュースも見たな。

この本はそんな寄生虫館がどうやってできたのか、寄生虫とはどんな存在なのかを示してくれる、いい本だった。読んでよかった。とりあえず今後できることは…野菜は洗うし肉は加熱して食べよう。そしてキタキツネには触らない。

奴隷船の世界史 (布留川正博)

奴隷に関する歴史を記した本。すごい内容だった。

昔のヨーロッパのキリスト教エリアから見た世界(四方をイスラム教徒に囲まれている感じ)とか、割と「そう思って見てなかったな」と思わせるような記述も多い。そして奴隷船だよ。すごいなこれ。まず数がすごい。扱いも酷い。酷くない部分がない。奴隷船で調達するために現地で内戦を起こさせておいて、戦争捕虜の奴隷を引き取っていくとかね。連れて行かれる航海中の死亡率も高い。人間ってなんでこうなんだろう。