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山椒の実

Category: Books

エンド・オブ・ライフ (佐々涼子)

在宅看護/看取りをしている医療者の物語。著者の葛藤もあって深い話になった。死を見つめすぎて書けなくなったみたいな。あなたが死を見つめるとき、死もまたあなたを見つめる。。。

この本はそれを乗り越えて書かれた。多くの患者を看取ってきた看護師自身がステージ4になったとき、何が起きるのか。

取材期間が長い。元々は在宅医療を書きたくて、なかなか書けないうちに取材対象の看護師が医療対象になった。本としては2つの時間軸ができ、交錯させる構成が取れた。著者の実家の介護についても触れられている。これが3つ目の軸。

アイネクライネナハトムジーク (伊坂幸太郎)

連作短編集。この著者名で繰り広げられる物語としては意外性がある。ちょっとした恋愛が始まる話のシリーズかなと思ったけど、何かと壮大な話になった。世代が交錯し、子供は生まれ育ち、それぞれの出会いをする。

まーでも日本でボクシングのヘビー級チャンピオンが誕生するところなんかは恋愛小説ではなくSF小説と言ってもいいかもしれない。割と楽しく読めた。まあこの空気感だから、大したクライマックスはないんだけどね。そもそも1番のクライマックスが回想シーンだったというw

春休み少年探偵団 (宗田理)

うーん、まあ昭和の少年向け推理活劇小説だとこんなもんだろうな。

という感想になってしまった。小さい子供が辛い目に遭う。なんて大人たちだこいつらは。犯人の計画は杜撰だし教授は不正や縁故ばかりだし、ロクなことがない。そういう時代なのか昭和ってのは。豊島園は健在だしディズニーランドもある世界。Jリーグはまだない。新幹線はあるけど何系の時代だろう。

島だけど車で行けるのか船必須なのかがあんまりはっきりしない記述があったりして。東京圏から瀬戸内海の島に行くのは、だいぶアウェイで厳しいと思うなあ。ハードボイルド早稲女探偵が活躍したのは良かった。

地雷グリコ (青崎有吾)

高校でのゲームバトル。ひとことで表現する言葉があるとすれば、女子高生版カイジ。いやあのカイジに出てきたオッサンの娘じゃないですよ。あいつは高校生じゃなかった気がするし。言いたいのは、この本の主人公が高1女子なのね。

その主人公が強すぎる。博才の塊だ。いや最終的には強いんだけど、終わった後にこれはどこから強かったんだという種明かし編があり、やっぱり強いなあ。

ジャンケンで階段を上るグリコwに始まって、出禁解除を賭けた坊主めくり、拡張ジャンケン、だるまさんが転んだ…言葉にすると子供の遊びだが。ラスボス戦も盛り上がった。とんでもねー強者同士の戦い。これはアツい。

木挽町のあだ討ち (永井紗耶子)

仇討ちをしに江戸に出た若者が芝居小屋に出入りして、本懐を遂げる。二年後に武士が芝居関係者の目撃者に聴き取り調査。インタビューにペラペラ喋る芝居関係者の人々。流石に皆さん口上が上手いなあ。さて真実は?

いやー面白かった。一気読み必至。インタビュー内容も、最後に明かされる、その後ろにあるものも。血なまぐさいオープニングなのに、読後感は爽やか。地獄を経た仏。人間だこれが。目撃談と、目撃した人の歩んだ人生、そして目撃された人の人生。それぞれ語られる内容が良い。

いつか深い穴に落ちるまで (山野辺太郎)

日本とブラジルをつなぐ地球貫通トンネル。誰もが夢見る三大建造物。軌道エレベーター、ダイソン球、日伯トンネル、あと一つは? まあ宇宙ステーションは実現しちゃったからな。あれはあれですごいと思うよ。実現しちゃったがために評価が高まらないという側面があるんじゃないか。政治とかも何かと絡むしねえ。

それでだ。日伯トンネル掘ろうの会。そんな怪しい事業会社の広報担当として長年勤めた奇妙な人物が送る半生。ラストもすごい。さすが元水泳部。この変化球。良い小説だった。突き抜けている。この文体でここまで突き抜けるのかよ!

城のなかの人 (星新一)

星新一と言えばエヌ氏たちが彗星のごとく活躍するショートショートSFだが、普通の短編や長編も悪くないことは知っていた。若かりし頃の思い出。この本は短編時代小説集だ。読んだあと、なんか若かりし頃読んだような気もするのよね。そういうところも星新一の魅力ではあると思う。ショートショートめいた独特のリズムで語られる歴史物語。短距離でズバッと進んでいく。

表題作は豊臣秀頼の生涯を描いたもの。つまりこの人がいる城とはキン肉星宮殿と瓜二つのあの城。現代に残っている大阪城公園のあの城とはだいぶ違うんだそうですが、当時の遺構も発掘されていたはず。

入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてください (寝舟はやせ)

最近のホラーはかなり人気があるジャンルになってますよね。

怪談のアラビアンナイトのような話。ただし語るのが怪異で、聞くのが絶望から逃げ出して怪異との友人として過ごすことになった若者ね。怪異の方は人間態…というわけでもなさそうな描写だが、どうなのか。若者の方の洞察力は普通に高く、常に冷静さを失わない。ミスの少ない、距離感に優れた主人公タイプだな。

なんというか、物語としての展開は進まないまま本が終わった。ここで終わり? 続きがあるんだよね、と確認したくなる。カクヨムで書いてたのが書籍化されたらしく。このままエンディングに向かったところで、決着はつかない感じもしたけどな。

警官の道

警察ミステリのアンソロジー。著者のラインナップはなかなかの佳作を連発している中堅どころといった感じ? 私でも知っている、読んだ本をここでも何度か記事にしたような著者名がチラホラ。

コロナの頃に書かれているようで、そういう描写が多い。今となっては歴史上の一過性の出来事だったという感じで、こういう作品を書いちゃうと、読んだ時に時代背景を念頭に置かないといけなくなる。コロナ後に生まれた奴が読むこともあるんだろうな。俺らで言うと、戦時中はこんな感じだったのか…みたいな感情を持つんだろう。

あなたの名 (小池水音)

AIに人格を移せば不老不死じゃん、て話の物語。それを老人文学の使い手がどう描く。

序盤は直前の人称とセリフの主が違うケースが多くて、こいつ誰? が多かった。こういうセリフの見失いは最近の小説には少ないパターンだよね。昔はよくあった気がする。

死期の迫った養母の記録を続けるうちに、老女の中に記憶がよみがえってくる。混濁しながらも作業は続き…

混濁老人主観の内省文章かー。文章自体には美しさはあるな。自分の好みでは全くないが。