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山椒の実

Category: Books

ニワトリを殺すな (ケビン・D・ワン)

ひどい、殺さないで! お願い!!

ビジネス寓話。本田宗一郎モデルの。短くて老人向けのような構成の読みやすさがあり、朝の読書にちょうどいい、って感じ。

ニワトリは傷ついた仲間を寄ってたかってつついて殺してしまうらしい。事件の匂いがする。失敗して傷ついた仲間を責めるのではなく、注力すべき部分があるだろうよと、そういう話だ。銀行から飛ばされてきたビジネスマンが社長から講義を受ける。一日でどこまで行けるかな。

まあ最近はそういう会社も少ないんじゃないか? 失敗を責めるなんて。無意味だ。問題が判明したんなら、解決したほうがいい。原理的に無理なら諦めて次のことをするか。

ルポ 秀和幡ヶ谷レジデンス (栗田シメイ)

いやー、迫力のある本だった。「渋谷の北朝鮮」の異名を誇る物件。幡ヶ谷なんて通勤で毎日のように通過しますが。東京にもこんな秘境じみた建物があるんだなあ。むしろ東京だからこそ、か。

私もマンション時代は管理組合の理事やったことありますけどね、だいたい回り持ちで任期1年だったかな。管理会社がしっかりしてれば、たいがい大丈夫なんだけど。途中で大規模修繕や管理会社変更なんていうドラマもありましたが。このマンションは自主管理に移行して悪化したんだろうな。

作家刑事 毒島 (中山七里)

文筆業を志す人が、編集者なり先輩なり、関係者を恨んで殺す。それを毒舌の作家で刑事の毒島が解決する、と。これって内輪ネタの部類なのかな。短編で、セリフも展開もテンポが良い。あっさり解決しすぎだろうけど、軽く読めるというメリットもある。あと被害者も割とロクでもない奴ばかりというか、罪悪感がない。犯人たちの異常性も強いけど、被害者もたいがい異常という。

しかしこれってトリックはあるものの、毒舌で挑発に乗った犯人が自滅するだけ…こんなのアリ? と思ったけど徐々に謎解きしてから罠にかけるような動きになっていたので、それなりに安心できた。

冬に子供が生まれる (佐藤正午)

あのなあ佐藤、似た名前の登場人物を出すなよ。あだ名入れ替え記憶改変までやったら、もうついてけないんだよ。そもそも誰視点だよこの怪文書は??

と思いながら読み進めるワケだが、果たして期待以上の出来だった。さすが佐藤正午。この、外さない信頼感は抜群だよなあ。このテーマでコレ書けますか普通。普通じゃないことが起きる話…だけどふわふわ感をそのままに進行して、そして終わるという。

マルユウとマルセイ、そして佐渡と杉森、湊先生、ワッキーたちの物語。UFOに2度までインプラントを施された男たちの後日談が語る真実とは。ジェダイマスターが出てきて斬りまくって爽快に去っていく。自分の中のフォースを信じろ。

あの駅に願いをこめて 南大沢編/仙川編 (岩井圭也)

京王線が企画した、駅周辺を歩いて謎解きをしながらサイドストーリーを楽しむ小説。これは2期目の2-3話目。紺色の封筒に気をつけろ!

冊子は駅で配布していて、ネットで序盤だけ読める設定? と思っていたが、手近な啓文堂(京王線系の本屋さん)に普通に置いてあった。入れ替わりの時期だったからか、2冊同時にゲットできてラッキー。1期の「いつも駅からだった」シリーズは終わっていて、今は「あの駅に願いをこめて」シリーズをやっている。1期はまとめて文庫本にもなっていた。

生物と無生物のあいだ (福岡伸一)

分子生物学の勃興を振り返る本。著者はその真っ只中で、研究者として過ごした。その光と影。学者の世界を垣間見られる。

ラセンとかガン、タンパク質をカタカナで書くのはこれ系の人では共通しているのかな。タンパク質はそれほど違和感ないけど、外来語ではないよね。以前に「癌」をカタカナで書くのは怪しい素人、プロは漢字かひらがなだ! みたいなネット言説を見たことがあるが、やっぱデタラメじゃんw

もともとは校正の本に出てきた本で面白そうだと思って読むことにしたんだ。校正の本で議題に上がっていた冒頭のマンハッタンの観光船の話は確かに絵になる。

エイブリー、シャルガフ、ワトソン/クリック、マリス、シェーンハイマーを始めとして、あのシュレーディンガーまで出てくる。学術の歴史が紡ぐ、生命の神秘を辿る道。

うどんキツネつきの (高山羽根子)

評価に困る作品だよな。表題作の主人公は描写が乏しいし、明らかにグラフィックの描き込みが違う、こいつ…モブじゃないぞ! と思ったやつが一瞬でモブだったり(わざわざ名前つける意味あんの?)、故意としか思えないほど貧相な描写で裏切り続けてオチがまた。実はタヌキでした、と言ってくれたほうが良かった。三姉妹設定も生きてないし、捨て犬の捨て方の凄惨さからの一代記としても、犬自体の描写もほとんどないから。

そういう表題作の他にも独特な空気感を持って軽くSFかホラー的な風味をつけた短編がいくつか。こういうの好きな人いそうだよね。16人産む話やラジオの話など、奇妙な後味がある。

文にあたる (牟田都子)

校正の人の本。独特な文体で、ペラペラと内容のあることを喋りまくる印象を受ける。本を読みまくっているらしいです。いいなあ、とは思いつつも、興味のない文章を長時間読むのもな。

すごいよね。自分にはきっとできないであろう、特殊技能。校正の時の読み方はかなりストイックなものらしい。なかなか化け物じみた職業に思えるが、どうだろうか。それでも落とす(←見逃すことをこう表現するらしい)ことがある。どんなベテランになっても変わらない。拾う/落とすという表現は校正者の観点ではしっくり来るものなんだろうな。落とし物を探すみたいな感覚かな。

無限の月 (須藤古都離)

ゴリラ本に引き続き、同著者の第2作。これまたすごい話だった。ラストの蛇足? は唐突すぎるので置いといていただいて。全体的には、なんとも素晴らしき物語で、本当にいい読書体験だったなあ。木下が満場一致のMoMだ。あわれな芳澤は破滅でもしてろと。

共通する足の怪我の謎も、そんなものかと思ったがよく考えるといい味を出しているような?

SF的要素もちゃんとしていて、ドラマ部分にも強烈に引き込まれる。しかしこれ、日本と中国だったからこういう物語に着地できたんだが、例えばもっとこう、マラウイとか宇宙ステーションとかだったらどうなっていたことか…みたいな考察もありうるよな。遅延とか時差とかを考慮して。たどり着く苦難も中国どころではない。

シャーロック・ホームズの護身術 バリツ (エドワード・W.バートン=ライト)

読まずにはいられない魅力のある本だ。タイトルだけですでに勝ってるよね。子供の読書感想文に選んだら選者の多くにはストライクかもしれない。うちの子供は、読書感想文を書いて提出する宿題が出るような年齢は過ぎてしまったのだが。

日本が世界に誇るあのマーシャルアーツ。ホームズをモリアーティ教授との死闘から救い出した護身術。一説には伊藤博文が直伝で少年時代のホームズに教えた武術だったりするのだが、その謎を解明するためのキーとなるような本。この本では、バリツの最有力候補である、バーティツについて詳細に記述し、現代の格闘家を啓蒙するのだ。愛用のステッキがうなりを上げるぜ。

中身を見ると、確かに和風の武術が含まれていますね。柔術系で、中心線を意識して対角線上で逆方向の力を加えることで、少ない力で相手の体を回転させたり。後の先みたいな概念もあるし、関節技も駆使している。