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山椒の実

Category: Books

連続殺人鬼カエル男 (中山七里)

フロッガーっていうゲームを知ってます? 川を渡るやつ。なんか覗き込んでジョイスティックがあるようなハードウェアがありまして、私は子供の頃にそれでだいぶ遊んでた時期があります。スマホゲーならクロッシーロード? みたいな。このカエル男はどうか。一体誰が、なぜカエル男なのか。

蓋を開けてみれば、猟奇的な連続殺人事件を追う警察のコンビ。いやー気分が悪い。殺し方、遺体の扱い方、そして被害者の選び方…どうなんだ。しかもこれでシリーズ化は無理があるんじゃないの? これでシリーズ1作目だ。2作目が思いやられるよ。

さかさ星 (貴志祐介)

ホラーじみた話。拝み屋が呪物を次々に発見し、発見し、発見し、発見し、発見し、いや発見しすぎでしょ。程があるはず。ないのか。まるでオールスター大感謝祭だ。なんか多いっすけど、これって今日はなんかのイベントなんすかねー、と警備の人に尋ねたくなる。特級呪物が多過ぎて覚えきれない。歴史の闇、家系の闇。絶景祈らむ…

呪われ過ぎでしょう。どんだけ悪業を重ねたら子孫がここまで呪われるのだろう。マジで死に絶えてますよとっくに。よく生き残ったな子孫。余徳というやつかな。それをすり減らして現代に至ると、そういう話? 何の徳だよ。

推しの殺人 (遠藤かたる)

関西の地下アイドルグループが社長を殺してどうにかする話。音楽性の違い、コロナ禍、ヲタのウザ絡み、ヨゴレ仕事、社長の死…それらを乗り越えて頂点を目指すのだ。がんばれー

未成年飲酒やタバコのほうも問題になりそうだが、とにかく読者は一丸となって頑張るベビスタを応援せずにはいられないんだ。危機が導く絆、その結束力。そして迎える結成4周年のめでたさよ。乗り切れ、乗り切ってくれ…!

しかし教師の説教シーンが酷かった。なんちゅうやつだ。再登場させるのは趣味が悪い。

アニータの夫 (坂本泰紀)

アニータって珍しい名前なのか分からんけど、アニータ呼びで日本全国通じる該当者は一人しかいない。日本で最も有名なチリ人。あの騒動からだいぶ時間が過ぎたが、本が出た。彼の伝記だ。彼のほう、夫の伝記。

この本は朝日新聞での連載を書籍化したもの。単著なんだな…チームでは対応しなかったということか? 取材期間がやたらに長い。

事件自体は組織構造に不満を持ち、夜の遊びを覚えた男が公金を横領した挙げ句、女に全部巻き上げられたというもの。長年発覚しなかった事実が示すように、横領されたのは公社が無意味に留保していた、ただただ無害なカネ。いわゆる裏金だよね。儲けを出さずにやる建前なのに、プラスを出して隠すっていう。なんて悪だろう。

エンド・オブ・ライフ (佐々涼子)

在宅看護/看取りをしている医療者の物語。著者の葛藤もあって深い話になった。死を見つめすぎて書けなくなったみたいな。あなたが死を見つめるとき、死もまたあなたを見つめる。。。

この本はそれを乗り越えて書かれた。多くの患者を看取ってきた看護師自身がステージ4になったとき、何が起きるのか。

取材期間が長い。元々は在宅医療を書きたくて、なかなか書けないうちに取材対象の看護師が医療対象になった。本としては2つの時間軸ができ、交錯させる構成が取れた。著者の実家の介護についても触れられている。これが3つ目の軸。

アイネクライネナハトムジーク (伊坂幸太郎)

連作短編集。この著者名で繰り広げられる物語としては意外性がある。ちょっとした恋愛が始まる話のシリーズかなと思ったけど、何かと壮大な話になった。世代が交錯し、子供は生まれ育ち、それぞれの出会いをする。

まーでも日本でボクシングのヘビー級チャンピオンが誕生するところなんかは恋愛小説ではなくSF小説と言ってもいいかもしれない。割と楽しく読めた。まあこの空気感だから、大したクライマックスはないんだけどね。そもそも1番のクライマックスが回想シーンだったというw

春休み少年探偵団 (宗田理)

うーん、まあ昭和の少年向け推理活劇小説だとこんなもんだろうな。

という感想になってしまった。小さい子供が辛い目に遭う。なんて大人たちだこいつらは。犯人の計画は杜撰だし教授は不正や縁故ばかりだし、ロクなことがない。そういう時代なのか昭和ってのは。豊島園は健在だしディズニーランドもある世界。Jリーグはまだない。新幹線はあるけど何系の時代だろう。

島だけど車で行けるのか船必須なのかがあんまりはっきりしない記述があったりして。東京圏から瀬戸内海の島に行くのは、だいぶアウェイで厳しいと思うなあ。ハードボイルド早稲女探偵が活躍したのは良かった。

地雷グリコ (青崎有吾)

高校でのゲームバトル。ひとことで表現する言葉があるとすれば、女子高生版カイジ。いやあのカイジに出てきたオッサンの娘じゃないですよ。あいつは高校生じゃなかった気がするし。言いたいのは、この本の主人公が高1女子なのね。

その主人公が強すぎる。博才の塊だ。いや最終的には強いんだけど、終わった後にこれはどこから強かったんだという種明かし編があり、やっぱり強いなあ。

ジャンケンで階段を上るグリコwに始まって、出禁解除を賭けた坊主めくり、拡張ジャンケン、だるまさんが転んだ…言葉にすると子供の遊びだが。ラスボス戦も盛り上がった。とんでもねー強者同士の戦い。これはアツい。

木挽町のあだ討ち (永井紗耶子)

仇討ちをしに江戸に出た若者が芝居小屋に出入りして、本懐を遂げる。二年後に武士が芝居関係者の目撃者に聴き取り調査。インタビューにペラペラ喋る芝居関係者の人々。流石に皆さん口上が上手いなあ。さて真実は?

いやー面白かった。一気読み必至。インタビュー内容も、最後に明かされる、その後ろにあるものも。血なまぐさいオープニングなのに、読後感は爽やか。地獄を経た仏。人間だこれが。目撃談と、目撃した人の歩んだ人生、そして目撃された人の人生。それぞれ語られる内容が良い。

いつか深い穴に落ちるまで (山野辺太郎)

日本とブラジルをつなぐ地球貫通トンネル。誰もが夢見る三大建造物。軌道エレベーター、ダイソン球、日伯トンネル、あと一つは? まあ宇宙ステーションは実現しちゃったからな。あれはあれですごいと思うよ。実現しちゃったがために評価が高まらないという側面があるんじゃないか。政治とかも何かと絡むしねえ。

それでだ。日伯トンネル掘ろうの会。そんな怪しい事業会社の広報担当として長年勤めた奇妙な人物が送る半生。ラストもすごい。さすが元水泳部。この変化球。良い小説だった。突き抜けている。この文体でここまで突き抜けるのかよ!