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山椒の実

Category: Books

砂糖の世界史 (川北稔)

砂糖を中心に見た世界史の話。文章は読みやすい。砂糖、サトウキビの栽培と密接に関わる奴隷制やプランテーション、覇権国家の移り変わりなどを記している。砂糖は世界中の老若男女に好まれる特性があるが、生産には人手がかかり土地を消耗させる。歳をとって、飲み物には入れないようになったが、砂糖のない生活など考えられない。その裏に潜む暗黒の歴史がこの本に書かれているのだ。

砂糖入り紅茶を好む英国人…つまりアジアの茶葉を使った紅茶にカリブや南北アメリカ大陸の砂糖を混ぜて飲む、という構図の持つ意味が分かる。そこに世界が凝縮されていて、それを実現するには覇権国家である必要があるってわけ。使い捨てていく労働力や土地も大量に必要。なんだこの作物…誰からも好かれる悪魔のような。砂糖大根というのがあるらしく、これは温帯でも育つので期待されていたけど、サトウキビが盛り返して今に至る。あとはビートっていうのもある。

体育館の殺人 (青崎有吾)

高校の体育館での殺人事件。部室に住む天才駄目人間アニメオタクが謎に挑む。密室殺人の謎に。土砂降りの雨に、傘。新旧体育館。舞台の幕が下りて、上がる。

かなり良かった。主要登場人物が全員仕事をした。他にもシリーズになってるらしいので、いずれ読むことになるだろう。まあ天気予報だけは仕事しなかったね。

ただこれ、犯行に要する時間が短すぎたと思うなあ。分秒単位のスケジュールを臨機応変に組み立てなければ実現できない。かなりパズルじみた難易度の高い犯行。

公開処刑人 森のくまさん (堀内公太郎)

熊害が激しさを増すこの時代に、クマを名乗る連続殺人鬼が現れる?

いや現代じゃなくて2ch時代の話かな。今となっては懐かしいネット掲示板表現。しかし縦書きだと違和感がすごいな。横書きと縦書きを混ぜて作れないのかな。組版的にはどうなんだろうか。

その掲示板で犯行声明を出す正義(?)の公開処刑人。あの童謡を歌いながら、悪人とされる人物を次々に殺してゆく。言うほど悪人か、と疑問を感じるケースもある。レベルを統一した方がいいなこいつは…

パッとしない子 (辻村深月)

氷の手で心臓を掴まれるような話。強制的に自分の過去を振り返させられる。そうせずにはいられない。どうせロクでもないことして周りの人を傷つけてたんだろうなあ。人生で、片手で数えられるくらいのケースは思いつく。あれはもしかして傷つけた可能性あるよなと。相手がどう思っているのかは知る由もないし今さらだが…心が痛む。しかしそれ以外の覚えがないというのがまた辛いところで。他にもあるに決まってるよな。この小説の主人公のように、自分にとっては取るに足らない、しかし相手にとっては? 無意識の魔法というか。あり得る話。あるに決まってる話。どうしよう。覚えていないこと、それ自体も罪深いのだ。

殺人鬼フジコの衝動 (真梨幸子)

端的に言うなら、狂ってる本だった。虐待を受けていた少女が殺人鬼になるまでの経過をたどり、フジコ視点でひたすら描写する。殺人鬼フジコという存在がどうやって誕生し育ったのか。これはキツいな。序盤と終盤の描写、物語の外側の話、伯母から繰り返される小言、それらが混ざると?

やはり人を不幸のどん底に突き落とすのは貧乏だな。カネの不安は多くのものごとを台無しにする。肝に銘じなければなるまい。まともな大人が周りにいないキツさもある。子供だけではどうにもならないこともある。この本の主人公に関しては、そもそもカネはあったはずなのに…

マイクロスパイ・アンサンブル (伊坂幸太郎)

音楽イベント関連コラボ小説。こないだも似たのを読んだなー。実際ヘビー級チャンピオンの話が健在だから、同じ世界の話なのかもしれない。

グライダーの物語。エンジンを積んでない飛行物。飛ぶ豚、飛ばない豚、そしてグライダーで飛ぶ豚の3種類がいるってことだな。

カートゥーンじみたナノスパイ大作戦と現実の若手サラリーマンの2サイド構成で物語は進む。猪苗代湖で。

現実編はワリと良かったな。謝罪のプロもいい味出してたし、グライダーの若者も失敗もあったがしっかり成長を見せた。

ある少女にまつわる殺人の告白 (佐藤青南)

インタビュー小説。虐待されていた少女の関係者が東京から来た謎のインタビュアーに語る。児相職員、少女の友人、母親の職場、etc…凄惨な過去を掘り返すことで真実は明らかになるのか。

不穏さはあっても殺人行為自体がなかなか出てこなくて、誰が誰を殺したのか、というところが一つ謎になる。誰であってほしい、こいつは死なないでほしい、と思いを巡らせながら読むことになるのだが、果たして結末は。まさかの…

ラストはかなりのものが来た。それぞれの末路、インタビュアーの正体。衝撃的で良かった。インタビュー小説にはこれがあるからなー。

巻きぞえ (新津きよみ)

死体にまつわる、ちょっとした短編集。死体かー。ちょっとした、と言うには重いかもな。

中身はまあまあな感じだった。パンチがもうちょいあったらなあ。あるいはもうちょい長い話にしても良かったんじゃないかと思えるテーマも。

中では、絶縁状態の父親が行き倒れた話が良かったかな。宝くじのくだりとか。彼は死後評価を高めた。自分に置き換えてみると、そういう死に方も悪くないなと。謎めいていて物悲しく孤独で。

穢れた聖地巡礼について (背筋)

今をときめくホラー作家の背筋…ハイキンではなくセスジが正しい読み方なんでしょうね恐らく作風からして。トレーニング系の本も出してればどっちなんだ、となるかもしれませんが。デビュー作(?)の近畿地方のやつはカクヨム(?)の連載後半くらいかな、話題になってた時に毎日更新チェックして読んでた頃があった。かなり良かったし、あれでモキュメンタリーというジャンルが盛り上がったという面があるのではないか。この令和の世に。

連続殺人鬼カエル男 (中山七里)

フロッガーっていうゲームを知ってます? 川を渡るやつ。なんか覗き込んでジョイスティックがあるようなハードウェアがありまして、私は子供の頃にそれでだいぶ遊んでた時期があります。スマホゲーならクロッシーロード? みたいな。このカエル男はどうか。一体誰が、なぜカエル男なのか。

蓋を開けてみれば、猟奇的な連続殺人事件を追う警察のコンビ。いやー気分が悪い。殺し方、遺体の扱い方、そして被害者の選び方…どうなんだ。しかもこれでシリーズ化は無理があるんじゃないの? これでシリーズ1作目だ。2作目が思いやられるよ。