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山椒の実

Category: Books

義経じゃないほうの源平合戦 (白蔵盈太)

よーし祇園精舎の鐘を鳴らしていくぞー! 源氏西征の総大将、源範頼の物語。頼朝の弟で、義経の兄。多かった兄弟もなんやかやあって頼朝挙兵時には3兄弟に減っていた。文章はかなり現代風の書き方ですね。

義経や頼朝、家臣団それぞれ癖のある坂東武者軍団で、どういう立ち回りを見せるのか。

割と楽しめました。あとがきを読むと、この頃の話は文献も少なくて史実があってないようなもの? みたいだねえ。

鎌倉時代は将軍家に問題があって変な感じの時代だったからな。兄弟で殺し合った初代が元凶なのかな。実際頼朝は大して戦に関わらず弟に全部やらせてたもんな。兄というだけでそんなに偉いのか。最後に有望なやつを全部殺したせいで将軍家自体が尻すぼみに終わった。関東を拠点にしたこだわりは偉いが。

連続殺人鬼カエル男ふたたび (中山七里)

前作から間もないある日、奴が現れる。「また、きちゃった…❤️」

いや出てくんなよこんなすぐにさあ。ムリだろ。と思ったけど、確かに無罪だったからな。ちょっとした行き違いがあってファイタータイプの警察官とバトルしたけど、暴動のさなかではあったし、あの極悪メンバーリストの中にあれば罪は無に等しいか。そういえば前作では自衛官ともバトルしてたな主人公警察官。殴り合いやりすぎだ。それで、この自認カエル男も無事、おかえり、と。

相変わらず人体に対する尊厳がない犯行。悪趣味だ。前回の被害者遺族のその後があったのは良かった。特に最初の2人。

クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない (越尾圭)

衝撃的なヘビ殺人の開幕には度肝を抜かれた。まだらの紐が…しかし現代日本ではナントカ条約やら絶滅危惧種やらが絡んで、ラッセルクサリヘビで人を殺すと大変なことになるんだ。

アクションあり友情あり裏切りあり陰謀あり、いろいろ要素が詰め込まれていた。クライマックスはかなり大掛かりなものになった。すごい手間がかかっていて、この金額では儲けも出ないんじゃないかな。どうぶつを殺すなよ。人間もそうだが。

物語を振り返るに、序盤で動物病院に入院中のペットまで死なされたのは最後まで納得がいかなかった。ゆるせん。あとはクサリヘビの入手方法はかなり難度が高かった気がするがサラッと流されてしまった。クサリヘビも、可哀想に。道具じゃねーんだぞ。

コープス・ハント (下村敦史)

連続殺人犯が死刑判決を受けて述べた言葉をキーに動き出した停職刑事アクションドラマと、家庭に問題を抱えた中高生YouTuberコラボ企画の交錯。まさに現代のスタンド・バイ・ミーだ。こんな感じだよなー。

ここに出てくるようなトンネル状の貫通した洞窟はなかなか珍しいんではないだろうか。

そして極限の悪事と青春とが結びついたとき、何が起きる? 信じられないことが起きるんだよ。最終的には、少しでも救われた少年と少女がいて良かった。被害者周辺は絶望的に不幸になったが。

砂糖の世界史 (川北稔)

砂糖を中心に見た世界史の話。文章は読みやすい。砂糖、サトウキビの栽培と密接に関わる奴隷制やプランテーション、覇権国家の移り変わりなどを記している。砂糖は世界中の老若男女に好まれる特性があるが、生産には人手がかかり土地を消耗させる。歳をとって、飲み物には入れないようになったが、砂糖のない生活など考えられない。その裏に潜む暗黒の歴史がこの本に書かれているのだ。

砂糖入り紅茶を好む英国人…つまりアジアの茶葉を使った紅茶にカリブや南北アメリカ大陸の砂糖を混ぜて飲む、という構図の持つ意味が分かる。そこに世界が凝縮されていて、それを実現するには覇権国家である必要があるってわけ。使い捨てていく労働力や土地も大量に必要。なんだこの作物…誰からも好かれる悪魔のような。砂糖大根というのがあるらしく、これは温帯でも育つので期待されていたけど、サトウキビが盛り返して今に至る。あとはビートっていうのもある。

体育館の殺人 (青崎有吾)

高校の体育館での殺人事件。部室に住む天才駄目人間アニメオタクが謎に挑む。密室殺人の謎に。土砂降りの雨に、傘。新旧体育館。舞台の幕が下りて、上がる。

かなり良かった。主要登場人物が全員仕事をした。他にもシリーズになってるらしいので、いずれ読むことになるだろう。まあ天気予報だけは仕事しなかったね。

ただこれ、犯行に要する時間が短すぎたと思うなあ。分秒単位のスケジュールを臨機応変に組み立てなければ実現できない。かなりパズルじみた難易度の高い犯行。

公開処刑人 森のくまさん (堀内公太郎)

熊害が激しさを増すこの時代に、クマを名乗る連続殺人鬼が現れる?

いや現代じゃなくて2ch時代の話かな。今となっては懐かしいネット掲示板表現。しかし縦書きだと違和感がすごいな。横書きと縦書きを混ぜて作れないのかな。組版的にはどうなんだろうか。

その掲示板で犯行声明を出す正義(?)の公開処刑人。あの童謡を歌いながら、悪人とされる人物を次々に殺してゆく。言うほど悪人か、と疑問を感じるケースもある。レベルを統一した方がいいなこいつは…

パッとしない子 (辻村深月)

氷の手で心臓を掴まれるような話。強制的に自分の過去を振り返させられる。そうせずにはいられない。どうせロクでもないことして周りの人を傷つけてたんだろうなあ。人生で、片手で数えられるくらいのケースは思いつく。あれはもしかして傷つけた可能性あるよなと。相手がどう思っているのかは知る由もないし今さらだが…心が痛む。しかしそれ以外の覚えがないというのがまた辛いところで。他にもあるに決まってるよな。この小説の主人公のように、自分にとっては取るに足らない、しかし相手にとっては? 無意識の魔法というか。あり得る話。あるに決まってる話。どうしよう。覚えていないこと、それ自体も罪深いのだ。

殺人鬼フジコの衝動 (真梨幸子)

端的に言うなら、狂ってる本だった。虐待を受けていた少女が殺人鬼になるまでの経過をたどり、フジコ視点でひたすら描写する。殺人鬼フジコという存在がどうやって誕生し育ったのか。これはキツいな。序盤と終盤の描写、物語の外側の話、伯母から繰り返される小言、それらが混ざると?

やはり人を不幸のどん底に突き落とすのは貧乏だな。カネの不安は多くのものごとを台無しにする。肝に銘じなければなるまい。まともな大人が周りにいないキツさもある。子供だけではどうにもならないこともある。この本の主人公に関しては、そもそもカネはあったはずなのに…

マイクロスパイ・アンサンブル (伊坂幸太郎)

音楽イベント関連コラボ小説。こないだも似たのを読んだなー。実際ヘビー級チャンピオンの話が健在だから、同じ世界の話なのかもしれない。

グライダーの物語。エンジンを積んでない飛行物。飛ぶ豚、飛ばない豚、そしてグライダーで飛ぶ豚の3種類がいるってことだな。

カートゥーンじみたナノスパイ大作戦と現実の若手サラリーマンの2サイド構成で物語は進む。猪苗代湖で。

現実編はワリと良かったな。謝罪のプロもいい味出してたし、グライダーの若者も失敗もあったがしっかり成長を見せた。