Skip to main content

山椒の実

Category: Books

君の背中に見た夢は (外山薫)

第一回ノーベルタワマン文学賞があれば最有力候補の一人と目される著者が描く、おなじみ文京区その片隅で、小学校受験。まあ…青田買い? 囲い込み? そーゆー世界もあるんだね。この日本に。美しき日本の、光り輝く子供たち、そしてその親たち。小学校受験って選考の時期が10月とかだったんですね。知らなかった。

住居はタワマンではなく狭小建売住宅だった。共働きサラリーマン家庭(実家がほどよくボールドな慶應卒同士、エリート寄りのいわゆるパワーカップル?)に生まれた幼き秀才が見る恐竜の夢、その小さな背中に親が見る現実の夢。ランドセルより小さい背中に、より大きな人生を背負わせる。ある種の稚気じみた、狂気じみた。なんというか。

最後の鑑定人 (岩井圭也)

あの京王線封筒謎解きハートフル小説で有名な小説家のミステリ。京王線のやつは今はよみうりランド回ですね。みなさんはもう読まれましたか?

この鑑定って言ってるのは、美術品ではなく犯罪現場の遺留品に対する鑑定。精神鑑定とかでもなく、科学捜査のやつですね。指紋とかDNAとか映像とかそういう。

短編集で、科捜研最強と言われた鑑定人が独立、持ち込まれた事件を解決していく。洞察の切れ味、結末の後味、いかにも不味そうなハーブ水と嘘の味。可視化できなかった悪を見つける目。

蠅の王 新訳版 (ウィリアム・ゴールディング)

悪い方の15少年漂流記? みたいな、傑作との呼び声の高い小説。英国男児の魂を見せろ!

やばいねこれ。イギリスの子供が野蛮人になるなんて。それも食糧に事欠かない夢のような島で。豚までいるのは不自然ではないか。まあ冒頭から不穏ではあったよ。呼ばれたくない名前でしか呼ばれず、結局本名も分からないままに終わった最重要人物が悲しい。

これでもねえ、どんなにチビがわちゃわちゃしてたとしてもだよ、何日もいるんだから人数くらいは数えとこうな。初手で減っちゃった分や途中の退場で減った分はしょうがないとしても、ラストで人数わからないは普通にダメだと思う。まあでもリーダーは逆立ちが得意なクソガキかあ…いやクソガキリーダーには無理でもメガネくんはちゃんと数えるべきだよ。怠慢だ。

小説多動力 好きなことだけやりきったら、ロケットだって宇宙へ飛ぶはず! (堀江貴文)

こういうのもノベライズするんですね最近は。…出版時期を見ると最近ですらないか(2019年)。どうだろう、面白いもんなのかな? と思って読んでみた。小説版でない方の本は未読状態。

内容は異世界転生wして多動力がどうの…という、いかにもくだらない内容。ストーリー自体には特に語るべきものはなかった。まあビジネス本のノベライズだからそこに期待するのは馬鹿げている。

まあ多動力理論自体への理解としては、興味あることに片っ端から夢中になろう、そうでないことは一切やるな! みたいなのが多動力なんだな、ってことは分かった。それはいいことなんじゃないの。そしてその理論に名前をつけたのが偉いってことなのかな?

老人賭博 (松尾スズキ)

マッサージマシン生活で上半身がムキムキになって喧嘩師として目覚めた男が映画に関わる。途中までどういうことか分かってなかったけど、いわゆる賭け映画? ドストエフスキーの賭博者を思い出す。

冒頭とラストの顔面崩壊は必要だったんだろうか。なんつーか、必然性もないのにそんな酷い目に遭うなんて悲しくなるよなあ。なくても物語は成立したんじゃないか、どうなんだろう。

しかしグラビアアイドルが強かったな。生い立ちから考え方、行動力。危機管理能力にも優れている。無双状態じゃないか。単独で強い。

致死量未満の殺人 (三沢陽一)

雪に閉じ込められた別荘で毒殺事件が起きる。死んで当然の極悪被害者。現実感のないシチュエーション。思わせぶりの描写。時効の夜。推理小説。雰囲気ありますねー。割と楽しめた。

開幕自供からの長編で、記述が長い。解決編は目まぐるしく犯人や毒物混入手段が入れ替わる。最終的には偶発役が多い事件だった。被害者以外、よく死ななかったなー。普通事故るぜ。悪運が強い。

家族シアター (辻村深月)

短編集で、それぞれ家族の物語。家族の中の、ヒーローの。脇役のヒーローの。何というカッコ良さだ。

年子の姉妹の結婚の話とか、ドルヲタとバンギャの姉弟の話とか、それぞれ良い話があったが、やはりタイムカプセルの話がベストだったかな。まさに家族の世界を救う英雄だった。

家族と言っても親子、兄弟姉妹、祖父孫と関係はいくつかあるが、それぞれに味がある。

暗殺者の鎮魂 (マーク・グリーニー)

またグレイマンことジェントリーだ。言うほどグレイマンじゃなくて、みんなに顔を覚えてもらえてるよね。いまいちグレイマンとしての特性を活かせてない気がするんだけどなあ、このシリーズ。実際、忍んでいる忍者なんてもはや珍しい世の中だけども。

冒頭、また昆虫に発砲するバカが出てきたけど流行ってるのかな? 撃たずにはいられないんだろうか。まー主人公の発砲は昆虫自体がターゲットではなく効果的だったが。前作の余波でまた古巣を敵に回した状態。

生存者ゼロ (安生正)

序盤は、この描写で感染症は無理があるんじゃないかと思った。毒ガスかなんかでノックアウトして、その後に何かダミーの細菌をばら撒いたんだろうと。しかしまあ、あんたほどの実力者がそういうのなら。

しかしあれに木造部分があるなんて、というのと人為でなければ鳥か、と思いきや。まさかの。まあ後から考えれば、問いの一部は答えを指していたか。謎を解明したときは、そんなことある? って思ったけどさ。人間以外の動植物も酷いことになってそうだけど、その描写はないね。

暗殺者の正義 (マーク・グリーニー)

ちょうどベネズエラの大統領が誘拐されたところで、大統領誘拐物語だ。昔からやってんだねアメリカって国は。これのどこが正義だという見方もあるだろうし、これこそが正義だという見方もあるだろう。民主主義と教育でどうにかなる範囲であるならば、あるいはそうでないならば。

ずさんな計画で目的を達成するには? というテーマが全編を貫く。普通死ぬ。どうなってんだ。計画も計画なら、現場の判断もずさんすぎるだろうよ。

主人公の判断力もたいがいだけど、カナダ女がひどすぎた。全体的に運頼みの側面が強い。前作ではまだ敵がずさんだっただけで、味方は時間も装備もない状況に追い込まれてからのスタートだったからな。しかし今作はどうなの? 味方が準備もなしに自分から死地に突っ込んでるよ。失敗が見えてからも、十分引き返せたのに、まさかのゴー決断…アホすぎる。敵はそれに輪をかけて間抜け状態。