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山椒の実

Category: Books

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (井上真偽)

続編。周辺人物は前作から引き続きだけど、なかなか主人公が出てこないから、まさかこのタイトルでスピンオフ? と不安を感じながらの進行。前作で肥満を気にしていた重要人物がスーパーモデル的扱いを受けている主観視点? これは叙述トリックなのかという疑惑を持ちつつ、このシリーズ特有のサラッとした暴力が生まれるか生まれないかのせめぎ合いがある。真相はどこに。

なかなか面白かったな。しかし犯人グループらしき相手を一網打尽に捕まえて海洋裁判に打って出るなんて、中国マフィアもすごい機動力だ。機動力と言えば、ハイスピードのモビリティを見せた登場人物も多かったな。全体的にスピード感がある作品だった。

さよならのためだけに (我孫子武丸)

ディストピアの…なんだ、離婚活劇? 恋愛活劇か。スパイ小説でもある?

結婚よりも離婚が難しいのは現代日本でも同じ話ではある。総数で見て、離婚のほうが少ないよね? 確かめていないけど、きっとそうだと思う。理論上もそうだし。

付き合ってくれた同僚も責任以上の仕事を果たしたし、CEOも二代目もよくやった。こんな世界で全員良くやって活躍することが、あるんだなあ。

その可能性はすでに考えた (井上真偽)

新興宗教の大量自殺? の生き残りが真実を探りたくて探偵に依頼。奇蹟か、犯罪か、不慮の事故か、やはり奇蹟でしかないのか。

奇蹟を否定する側と、奇蹟以外の可能性をすべて否定する側。実在が難しそうなビジュアルの探偵、変な口調の謎の中国人犯罪女性、文学作品をふんだんに引用しながら推理し、あらゆる可能性を検討する。良いね。続編もあるらしい。

まあ、アレだね。提出された報告書は読もう。シンプルな話よ。口頭説明もまあまあ受けてるよね。依頼人が横着せずに読めばそれで終わっていた話なんだよね。だって全部書いてある。

小麦の法廷 (木内一裕)

まさか人名とは。ニンジャスレイヤーのムギコみたいな? 小娘の新米弁護士がクソ事件を引かされながら信念をやり遂げる。

建前と本音が渦巻く。ほとんど全員、意思統一されている。なのになぜか進めるのが難しい。それをどうやって解決するか。腕の見せ所だ。

レスリング要素があんまり出てこなかったのは残念だが、登場人物は全員活躍したし、なかなか良い作品だったと思う。アイデアも良いし、サイドストーリーもちゃんと本編に絡んだ。

ランチ探偵 (水生大海)

ランチ合コンにいそしむOLコンビが会話から事件の真相を見い出す。割と楽しめた。

事件っつっても初対面の相手とのランチ中の話題だけだから、殺人が起きるわけでもないんだけど、些細な言葉と手掛かりから謎が解けていく。比較的面白く読んだ。こういうのもアリなんだねえ。

なんか小さい街っぽい雰囲気で、自分は以前に住んでいた武蔵中原か平間あたりをイメージして読んでいたけど、この本の舞台はオシャレな店がもうちょっと多くある感じだった。東横線で言えば都内のあのあたりで考えればいいのかな、なんていう。

アラジン (小倉銀時)

小悪党が悪党に挑む。京都で。ヤクザ稼ぎすぎでしょ。キングと名乗るだけのことはある。

そして沖縄人が無双する。空手を使うアラブの王族なんて最強じゃないか。これには計画も捗るというもの。

悪人側も、アヤ先生やケンジあたりはいい味を出していた。ケンジが語学力で無双した時はどうなることかと思った。

そのぶん主人公の影が薄いというか、ずいぶん慎重に計画を立てて遂行していくのにロクな自己開示しないので感情移入できないという問題を抱えながらの進行になった。火傷の傷はスーパーファインプレーだ。最後は綺麗にまとまった。

サブスクの子と呼ばれて (山田悠介)

レンタルチャイルドの日本版? いやドキュメンタリーじゃありません。これ系のはわたしを離さないでみたいな重厚で静かな描き方もある。この本はどうか。

人材サブスクの広まった現代。子供のサブスクは違法だが、広まっている。そこで起きた事件の話。何が起きる? 何でもありだ。みんな狂ってる。問題がありそうだと違法にしておくけど、ニーズがあると違法ゆえに不必要に苛烈になるという問題が自然に発生するわけだ。

メチャクチャいいとこの高級住宅街にもそれがある。丸子橋あたりも出てくる。金持ちの代名詞、田園調布じゃねーか。

ヴィクトリアン・ホテル (下村敦史)

高級ホテルを舞台にした小説。我々は今夜、100年の歴史を目撃する。人々の人生を見守りながら紡がれる、そんな物語。この著者らしく違和感を散りばめつつ、気持ちよく収束していく。なかなか良かった。

現代の理不尽クレーム入れたもん勝ち的な社会も描きつつ、女優の、弁当屋の、プレイボーイの、泥棒の、小説家の、ホテルマンの人生はそれぞれこのホテルで交錯し、時間は進み、物語は進むのだ。

ハロー・ワールド (藤井太洋)

抑圧に抗うITエンジニアのSF。この時代か。すでに懐かしい。だいぶこう、変わっちまったからな、世界が。

まあちょっと理想のキャリアのエンジニア? みたいな感じの主人公が、熱意をチラ見せしながら信念を貫く。設定がちょっとアレだけどな。自分より優秀なエンジニアに一目置かれるとか、カンファレンスにゲストで呼ばれてみんなと仲良くなるとか、みんなに自由を与えるために一肌脱ぐとか、あれやこれやで異世界転生的な? 空気感を浴びて、つまり読んでいて居心地が悪くなる。

探偵が早すぎる (井上真偽)

5兆円の資産を持つ女子高生を親族の暗殺者から守る探偵が、超高速でトリックを見破り発動前に犯人にそのままお返しする。次々に計画される殺人トリック。こんだけ狙われたら、普通は死ぬ。

序盤から飛ばしまくっていた。非道すぎる計画も。最後のトリック? は壮大だった。そんなのアリ? ナシでしょ。あんた被害の範囲とか考えないんスカ?

一つの家族であんだけ異常者が出るというのもなかなかハードなことで。

最後の設定は必要だったのかどうか。蛇足感があった。普通に終わればいいのに。まあ、それを言うなら最初からの設定自体がちょっと非現実的ではあったが。