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山椒の実

Category: Books

カエサルを撃て (佐藤 賢一)

若くして全ガリアを糾合しカエサルと雌雄を決するに至ったガリア最後の英雄、ウェルキンゲトリクスを主人公に置いた話。

正直どうでもいい話が強調されていると感じる。あの凄惨な焦土作戦をどう表現するのか、アレシアの戦いやそれに至る闘争をどう捉えるのか、気になったので読んだが、ある程度の狂人として描いてはいた。

ただね、デカマッチョかハゲ中年かというのは別にどうでもいいんですよ。チンポのでかさなんて英雄としての器とあまり関係ないんじゃないの。大衆の前で野蛮なことに及んだりする、主人公側の行状でホントかどうか分からんことをわざわざ強調する意図はどこにあるのかな。だいたい、野蛮人の風習とは言え気軽に強姦しすぎで、読んでいて気分の良いものではない。

ウィキリークスの内幕 (ダニエル・ドムシャイト-ベルグ)

WikiLeaksのナンバー2で広報担当みたいなことをしていて、ジュリアン・アサンジと喧嘩別れした著者が書いた本。

まあ喧嘩別れした一方の主張だけだから、その辺の内容は差し引くとしても、WikiLeaksの内部事情を書いた読み物としては単純に面白かった。技術的にもある程度まともな状態だったみたいだ。まあ、最初と最後の方はムチャクチャだったみたいだけど。

著者はこの本を記述した時点ではオープンリークスを立ち上げたところみたい。オープンリークスはこの本で初めて聞いたくらいで、あまり存在感がないよね。ドイツ語サイトしかないのかな。

人間の顔は食べづらい (白井 智之)

タイトルのインパクトを導いた設定で押し切ったSF推理小説、と思いきや、ちゃんとまともな推理小説として成立しているところが秀逸。まあ登場人物がみんな探偵気取りで、誰が本当の探偵役なのかという話ですね。ライトノベルの系統か、角川っぽい書き方ではある。

けっこう楽しめたが、ちょっとこの設定がやっぱ受け付けないんだよね。もっと文字数を使って重厚な感じにしても良かったと思う。

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 (スティーグ・ラーソン)

2の続き。リスベットが入院中にいろいろな人が暗躍する。まあなんだかんだで良識が勝つ。ちょっと普通に勝ちすぎて気持ちが悪くなるほど。ただこういう展開のほうが読後のスッキリ感はあるだろうね。2はまあ明らかに続きがあったけど、3のラストはそれほど多くの謎が残ったわけではないし。

ただまあ、1や2に比べるとドキドキ感は薄いな。描写がいろいろあって勝つことが分かってしまっていた。1は呪われた一族による孤島ミステリで先の展開を読みにくかったし、2は狂人軍団との対決で、設定の無理さを脇に置いとけばこれはなかなかの強敵だった。そして3はスパイ小説。ジャンルを変えながらの3部作。次はSFか何かか? と思わせつつも、この著者は4を途中まで書いて永遠の眠りについたらしい。そして権利関係でモメて4の途中までの原稿も日の目を見る気配はなさそうだ。これ以上この著者の本を読めないのはちょっと残念に思う。

ミレニアム2 火と戯れる女 (スティーグ・ラーソン)

ミレニアム1の続き。前作でサブ主人公だったリスベットがほぼ主役になり、謎が解き明かされていく。まだ残っている気がするが、それは3に続くんだろう。やはり出来は良いしミカエルは見境がない。相変わらず変態率が高いが、若いカップルは正常だった。残念なことにはなるが、そこに良心を見た気がする。

これミステリとしては探偵コンビであるリスベットとミカエルが一度もまともに会わないまま終わるんだよね。そのへんも良くできてて面白かった。すれ違い的なところもあり。

あと金髪の巨人はちょっと現実感がないな。人物設定に無理があると思う。しかもこのラスト、これじゃ絶対終わらないよね。そこも3部に続くのか…

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (スティーグ・ラーソン)

スウェーデン発のベストセラー。人口900万人の国で300万部売ったという伝説の小説。字を読む大人全員が買ったレベルか。出来は良いが、正直そこまで売れるテーマではないな。

孤島ミステリ、と言ってしまえばその通りなのだが、それに留まらない良い出来の作品だった。これで三部作の1作目ですから、次も期待できるってもんです。スウェーデンの人名は複雑で、さらに富豪一族モノでもあって(姓が同じ重要人物が多い!)、ついていくのが大変だった。

空飛ぶタイヤ (池井戸潤)

三菱自動車のあの事件をベースにした小説。実際はだいぶフィクションが入ってますが、迫力もあるし、財閥系の描写はいかにもそれっぽい。「沈まぬ太陽」ほどではないかな。まあでもさすがに池井戸潤。何者か実は知らないですが、奥さんに聞いたら「半沢直樹」の原作者だそうです。なるほどそう来たか…。

物語としては、理想的な人格者の運送会社の社長が単身財閥に挑み、打ち倒す、という話。家庭の問題とかも解決しつつ。

ただ、悪役にあまり華がないよなー。もうちょっと悩みながら悪を為してもよかったんじゃないかなー、とは思った。悪役にも感情移入したいじゃないですか。でも、分かりやすすぎるんで。

日本インターネット書紀 (鈴木幸一)

日本書紀っつったら国生みとかヤマトタケル、だよねー。

この本は日本の最古参インターネット企業、IIJの創業者がつづる、日本のインターネットの歴史。まあ謎の規制との戦いですよね。

IIJが今まで生き残ってこれたのは、当時(1992年)インターネットで食っていけるなんて思ってる人は日本に他に誰もいなかったわけで、そこに着眼した時点で勝ちなわけです。企業を起こすには見通す目が必要。あとはタイミング。タイミング的にもベストに近かったはずだが、やはり規制との戦いがね。

身の上話 (佐藤 正午)

宝くじの当選金を横領した人物の、なぜかヤケに詳しい身の上話を謎の男が語る。テレビドラマにもなったらしい。いろいろ事件が起きる。

この種の小説の常として、途中からもともと怪しかった人物はますます怪しく、全体的に雲行きが怪しくなり、起承転結、最後まで目が離せない。宝くじなんて最初からいらんかったんや!

こういう小説を読みたかった。この著者の他の作品も読んでみたいと思えた。