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山椒の実

Category: Mystery

川崎警察 下流域 (香納諒一)

川崎でよくある殺人事件。今でもちょくちょく起きるよね。1970年ごろが舞台で、雰囲気がすごい。昭和後期どまんなか。文章だけで絵で見える。照明が暗い。風景が霞んで見える。空気が悪い。まさにそういう時代、しかも川崎深南部。これはアツいよ?

読んで確認、あーこれだよ。闇のフルコースだ。オンパレードだ。期待通りの。警察は肉盾を使って最強殺し屋のアタマを撃ち抜くし、バラバラ殺人とギャングバトルを始終やっていて、公害に差別と水商売、役人の腐敗…人を殺すかラップが上手くなるくらいしか、のし上がる道がないわけだよ、この街はさあ!?

夜歩く (ディクスン・カー)

バンコランのシリーズ。ホラー味のある。ダメ、絶対。

この種の本では、言い回しがかっこいいことがあるんだよな。メモ帳を手に読みたくなる。序盤で早速、いつか言ってみたい言い回しを見つけた。

「ところで、この部屋は客を殺害する以外の何かの目的で使われているのかね?」

いつ使おうかな。ワクワクしてきたぜ。

しかし、フェンシングの達人が簡単に首チョンパされるとは信じがたい。最近では日本の選手も世界で活躍していて、ちょうど今やっているオリンピックでもすごいことになってますが。私の頃も日本代表に入るような選手は練習や試合で手合わせして、自分からするとすごい強かったですが、世界ではなかなか上には行けてなかったですね(一応経験者です…ガチ勢の底辺、くらいの)。その感覚でいえば、あの人たちが1回戦負けするような大会で優勝するのが世界チャンピオンだよ? そんなスキがあるとはとても、ねえ。

正体 (染井為人)

なかなか重厚な冤罪逃走劇だった。分厚いから時間をかけて読みたいなと思っていたんだけど、内容はスリリングで、一気読みしか選べない。

名作の一つだな。これ系のは名作が多いよね。ショーシャンクの空に(逃げるまで)、グリーンマイル(逃げてない)、ゴールデンスランバー流人道中記(逃げてない)、etc…いろいろあってそれぞれに深い。破獄(冤罪じゃない&ノンフィクション)とかもあったなぁ。

なんだかんだで、冤罪や逃走というのは魅力のあるテーマなんだろう。逃走者に善人としての魅力と周囲の善玉の援助がないと困ってしまうから、こういう非の打ちどころのない奴を持ってくるしかないのだよな。実際は冤罪を喰らうのはそれなりに普通だったり悪い寄りの人間もいて、実際はそういうのも問題なんだと思うんだよね。

探偵少女アリサの事件簿 今回は泣かずにやってます/さらば南武線 (東川篤哉)

溝の口推理小説三部作の2-3作目。

キャンプや運動会を経て、ついに川崎駅にまで進出した2作目、栃木だか茨城だかの別荘まで行った3作目。活動範囲を広げてますが、これ溝の口系ですよねえ。その原点を忘れちゃいけないと思います。まー終盤はだいぶ溝の口でしたが。凶悪犯罪都市…おそろしや〜

あとは、ラストのそのあとのことなんだけどさ、この溝の口の豪邸はどうなるのかな。どうしても気になってしまう。帰ってくる気があるなら、便利屋に頼んで手入れしつつ維持するという手もあるんだけど、常識的に考えれば、何らかの処分をするのではないか。

あなたが誰かを殺した (東野圭吾)

これぞミステリ。加賀恭一郎シリーズ。いいねえ。作者もよく書けたと満足していることだろう。

登場人物は多かったけど、徐々にキャラも明確になっていって、それぞれの闇がそれぞれ明るみに出て、事件は解決する。榊刑事課長がいい味を出していた。そのラスト、関係者はそれぞれの道へ。なぜか読後感がいい。こんなに死んでるのに。特別ハッピーエンドでもないのに。

探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛を込めて (東川篤哉)

南武線ミステリ。そんなジャンルがあるんだ。設定はなかなか現実離れしているが。あの辺は豪邸ないよそんなに。中原や小杉の方が多い。

まーでも以前は中原の方が豪邸率は高かったけど、中原も代替わりで土地を分割して小さい分譲住宅に分けて売っちゃったり集合住宅にするケースが増えて、豪邸少なくなっちゃったよね最近は。だから小杉や中原も豪邸率に関しては溝ノ口や新城とどっこいどっこいになったかもしれないな。

それはそうと、内容は割と楽しかった。殺人事件は起きるけど、気楽に読めていいだろう。しかし、ノクチ違いのトリックはありえないよな…他もそうかw いろいろとありえないネタが。それも含めて楽しめたよ。

消え失せた密画 (エーリヒ・ケストナー)

ドイツの肉屋がデンマークで戦う。少年向けのような内容だが、主人公が間の抜けた肉屋のオヤジだからなあ。登場人物それぞれキャラは立っているし話は面白かったが、チグハグさは否めないな。ラストの展開も怒涛。

小道具の密画というのも良かった。高価っぽくて取り回しが良い。偽物の準備も万端で、物語もテンポが良くて引き込まれるし、電車の中の暇つぶしに読むのには手頃だった。

と言ったように、全体的には楽しく読めた、良い作品だった。

蠟人形館の殺人 (ディクスン・カー)

またホラーかー。ミステリのつもりだったのに…まあ蝋人形でホラー要素ナシはさすがに無理すよね。だって蝋人形で、なおかつ館だもんね。

しかしこの探偵、最初からいろいろ知りすぎじゃないか? こんだけ知ってて手こずるのか。

まあ推理自体は大したことがなく、凡庸な警察官が普通に捜査していればこの探偵よりも早く解決できたに違いないし、最後のカード対戦は何なんだ? 何がしたいのか。思わせぶりな悪役も、退場はあっさりというか、「ついで感」が強いというか…これはどうなんだか。もうちょっと主役を張ってもよかったんじゃなかろうか。

屍人荘の殺人 (今村昌弘)

うーん、設定が…そしてトリックが…割とお腹いっぱいになりがちなミステリ。かなりスリリングに読めた。

しかし、ゾンビねえ。っつーかそれはスプラッターじゃないか。ゾンビにミステリか。ソンビ自体が心の中のアイコンでもある。

次はなんだ、サメか。サメミステリか。それなら読みたい。

僧正殺人事件 (ヴァン・ダイン)

まだるっこしい人物紹介からのスタート。数え歌殺人のような事件をその人物が解決していく。弓矢かー。だからってハンガーゲームを思い出す必要はなかったが。

しかし容疑者が絞り込まれるのが、対象が死んで減っていくため、ってのがちょっと探偵どうなんだ。わかってるげで、分かってない。どうでもいい蘊蓄はいいから、仕事しろと。宇宙がなんだってんだよ。それ饒舌に話す必要ある? そして最後は50%を当てて終わりなんだが…

話としては面白かった。こういう古典もいいよねと思えた。