Skip to main content

山椒の実

Category: Crime

令和元年のテロリズム (磯部涼)

「ルポ川崎」の著者が、令和元年に起きた大きな事件の犯人の人生を深掘りしていく。その筆致は暗い。

取り扱うのは以下の4件。

  • 溝の口で送迎バス待ちの小学生と親を刺し殺したやつ
  • それを見てゲーマーの息子を刺し殺した元政府高官
  • 京アニの放火犯
  • プリウスミサイルの老人

実際に読んでみると知らなかった事実も多々。

著者みたいな人が深掘りしないと背景や主張は理解されないし、主張自体も政治的な側面は皆無で、底辺や上辺を生きる犯人が、それぞれ異なる事情があって起こした重大事件。共通点が見あたるかというと、難しいと思う。単に時期が近かっただけであって。最初と2個目は関連があるとしても、報道に影響を受けた(逆)模倣犯みたいな感じ。テロと言ってしまうのはちょっと違うかなと思う。それとも、令和最新版の「テロリズム」の定義が、こうなっていくのだろうか。違和感がある。

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団 (森功)

積水ハウス事件で有名になった地面師の世界を追った話。

すげー世界もあったもんだな。他人の土地を勝手に売って儲けてしまう。まあ詐欺の一種なんだけど、死にそうで身寄りがない土地持ちの土地が狙われやすいのかな。相続人がいなければ競売にかけられて国庫に入るべきお金が詐欺師たちの懐に入るという感じ?

いろんな手口がありつつ、なぜか捕まらないし、捕まってもすぐに釈放されたり、割と微罪なのよね。金額は大きいんだけどな。おそらく詐欺師も普段は普通の不動産ブローカーみたいな人間なんだろうな。それで合法に行けないけどやれそうな時にやっちゃう、みたいな?

つけびの村 (高橋ユキ)

「つけび」川柳で有名になった山口の限界集落の5人殺し事件、そしてその舞台となった限界集落を追った暗いトーンのルポ。その真相に迫る。噂話と悪口ばかりの世界…まあ狭い世界ではありがちの話ではあるよね。田舎か都会かっていうよりも、小さなコミュニティではそうなりがちだ。なんでそうなるんだろうね。私はそういうの嫌いで、すごく嫌な気持ちになるんですよ。学生時代の部活で、そういう方向に行きかけたことがあって…(略)

老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体 (鈴木大介)

振り込め詐欺グループの実態を記したもの。金持ちの老人を騙して小金を受け取る。それは現代の義賊か、それとも…?

かなり高度に組織化され、分業も進んでいて捕まりやすい部門(受け子)を何重か噛ませることによってプレイヤーと呼ばれる騙し屋の部門は捕まりにくくなっているらしい。そしてこの本の時点でオレオレとも言わないし振り込みさせるってワケでもなく現金取引らしい。ターゲットをかなり詳細に調べた名簿を使う&自前で名簿の情報を充実させる調査を入れたり。

ルポ 川崎 (磯部涼)

川崎南部の音楽シーン、特にBAD HOPていうヒップホップクルーを中心に、音楽ライターが描く川崎。川崎南部独特の空気ね。産業道路の向こう側とか…それで通じますか。まーそれでも川崎のほんの一部でしかないんだけどね。

確かに、北部だとオザケンだからなぁ。まー南部でも東山さん(ジャニーズ!)とかだっていたんだがぁ?

私の住む中原区は南部(危ないほう)に属する。南部の前線として、隣の高津区と抗争を繰り広げてきた歴史がある…んだが、今はどちらも中部として括られているという認識が一般的かな。

万引き老人 (伊東ゆう)

いわゆる「万引きGメン」のベテランである著者が、老人による万引きの実態について記す。救いのないエピソードも多い。というかほとんど、どのページにも救いなんてない。たまにあることはあるんだけどね。

最後の方の、人生にどうしようもなくなって妻の墓前で自殺することを決めた(という遺書を隠し持っていたことが後で分かる)老人が、手ぶらで墓参りに行けないからとスーパーで花や線香を万引きして、著者に捕まる。そして著者がちょっと目を離したすきに服毒自殺してしまう…という話なんかは、究極の救いのない話。死に場所と決めた亡き妻の墓…そこにすらたどり着けてないんだもん。最後の最後で泥棒になって…名誉なき死…安らかさとは無縁。絶望しかないよ。