Skip to main content

山椒の実

Category: Books

ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室 (キャスリーン・フリン)

料理教室による人々の成長を描いた実話。世代間の技術の断絶があったり、まあ人それぞれの事情があるんだけど、料理をしない人々がいたと。そこに料理の技術を伝授することで料理するようになり、ウハウハになったと。そういう話です。

日本のカレールウの下りが良かった。自分が料理をしていった先に、市販のルウを使ったカレーと同じ/より良いものを生で自作できる人生があるのか? っていうと疑問も残るわけだけれども。

本書では生徒は女性ばかりですが、料理できないことに関する劣等感みたいなのは決して女性だけのものではないでしょう。人類って端的に言えば火を使って料理するサル、ですよね。人類であるからには料理くらいできるでしょ、というのがあるんですよ。料理できなきゃこの東京砂漠をサヴァイヴできないからさ(←んなわけない)。でもその技術を持たない人ができるようになるキッカケがないのだよね。

清原和博 告白 (清原 和博)

清原のアレね。

ページをめくるたびに気が滅入るのだが、読まずにはいられない。あの清原へのインタビューを長期に渡って重ねた、そういう本。ただ遠くにボールを打ちたかっただけの少年が、どうしてこうなった。

アンサー本を先に読んだのだけども、そこでは対戦相手を太陽のように照らした清原の現在地。今は傷つき弱って、そこからこれまでの人生を振り返る。それは当然のことながら美しいだけの人生ではなく、歪まされ、暗さが支配する洞窟の中にいるかのような。英雄のその後、みたいなね。

冤罪放浪記 —布川事件 元・無期懲役囚の告白 (杉山 卓男)

布川事件の犯人と扱われ、誤認逮捕の末に冤罪で無期懲役刑を受けた人物の自伝? っていうか手記。改めて再審で無罪判決を得て自由を取り戻すことができたが、その不利益たるや。

この人はかなりのワルではあったが、被害者を殺してはいなかったと。そこまで悪くはない。ひどい話もあるもんですね。ちょうど捕まえやすいワルでアリバイがないやつを適当に捕まえて自白させたってな感じ? まあ自白は共犯者とされる人物と法廷で会話して無罪を証明するためだったということだけど…考えなしにもほどがあるな。その短慮と強引な捜査の結論が長く彼を苦しめることになる。

教養としてのテクノロジー―AI、仮想通貨、ブロックチェーン (伊藤 穰一, アンドレー・ウール)

クローンと相続とか、さらっと書いてるけど。私のようにのほほんと深い考えもなしに生きてると、こういう本をたまに読むと「何も見えてなかったんだな」と思い知らされることは多いか。

クローンは技術の問題の他に倫理の観点は必要とは言うけど、具体的な設問として提示されるとまた違うよね。人工授精(クローンではない)が認められるなら、人工単性生殖(クローン)が認められる余地はあるのかもしれないが…まだ越えるべき壁があるような?

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと (花田 菜々子)

タイトルからしてヤバい。何言ってるかわからない感がありつつ、起きたことをダイレクトに表現しただけなんであろうことが察せられるよね。本当に、タイトルだけですら漂う本物感。読むと果たして本物だった。

癖の強い本屋の店長をやっている女性。大量の本を読み、凄まじい記憶力の所有者にしてコミュ力の化け物。しかし家庭が崩壊し、出会い系へ…といっても我々が考えるよりは割と真面目な出会い系のサイトがあったらしく、トークがマッチングすると会って30分会話するというサイト。そこで出会った人と30分会話して、その人に合った本を勧めていく。なんかすげえ。

月の満ち欠け (佐藤正午)

オカルト話に終始した…という見方もあるんだろうが、私は楽しめたよ。

セレクテッド・リザレクション現象? まー書く人が書けばそれはニンジャソウルの憑依となるし、佐藤正午が書けばこの小説のようになる。個性! いずれも達人ではあるが。

推理小説でもないのに人が死にすぎな点はどうだろう。しかも殺人が一件もなく、不注意が過ぎるのでは。子供じゃない。千年の時を生きるヤツにしてはリスク管理がなっとらんよ。

あとは…登場人物の名前で、北斗の拳のミスミの爺さんを思わせる人物がいたなと。そのミスミの爺さんも、出生の話からしてソウルの憑依のかのうせいが…のうりょくがはつげんしてないだけなのかも!? まあミスミの爺さんを憑依者にしなかったのは、それをしないことでいわゆる女の情念的な感じを出すという狙いがあるのかもしれないねえ。

勲章 知られざる素顔 (栗原 俊雄)

勲章に関する本。なんでこんな本を読もうと思ったんだか思い出せないが、とにかく読んだわけだ。知識はあまり入ってこなかった。

著者としては勲章に対して批判的な考えを持っているのかな。そこはひねくれているとも感じられるが、一定の理もあるなと思った。

つまり、軍人向け・公職向け・一般向けで分けていいんじゃないかと思うね。現状、公職と一般がごちゃ混ぜになっているから問題になる。公務員続けた人と民間で大きな功績があった人ってのは直線上で上下を決めることはできないんじゃないか。軍人にしても同じ。それは交わらない別の軸での評価であって。それから職責の軽重があるが、そこは報酬で報いていると思えば、勲位で差をつける理由がない…んだろうけど、だが総理大臣みたいな人と同じ勲章をもらうわけにはいかんよね、という感じもあるでしょ。職責を超えた率というのがあったとして、その率が勲位の重さに比例すればいい…のかな。

ディス・イズ・ザ・デイ (津村記久子)

サッカーの2部リーグのシーズンを取りまく人間模様のオムニバス。チーム名は架空だが。恋愛だったり、家族だったり、仕事だったり、友人だったり、親戚だったり。現実感がないシーズン展開もあるが、悲喜こもごも。その雰囲気は出ていると思う。

まあ実際はそんなにしょっちゅう旅行できる人ばかりじゃないんだよね。遠出というのは描かれている通り、お金も時間もかかるもので。そこで自分はホームスタジアムの近所に住んだ。アウェイをどうするかって問題は残るんだが。

人殺しの息子と呼ばれて (張江 泰之)

北九州のあの事件の息子との接触、そしてインタビューをTVで放送したテレビマンが、その経緯を本にしたもの。

私はこの番組、見たいと思ってはいた記憶があるが、見なかったんだよなー。なんでかわからん。長時間テレビを見る習慣がなくて、まあサッカーとかバスケの試合は別だけれども、興味を持った番組すらも見てないんだ。どうしたものか…

それはともかく。

この事件の本は以前に読んだことがあるし、似た境遇と言えばオウムの娘の本も読んだ。それに近いテーマの小説も読んだなあと。

考え方としては同じなんだろうな。これは確かに特別な事件ではあるが、特別な事件だからこそ意味を持つのではなく、実は同じ境遇の…犯罪加害者のような、非難の対象となる人物の家族という人は珍しくないはず。割と一般的な話ではあるんだ。そういう境遇というだけで、非難の対象に含まれていいはずがない。特に事件当時子供だったような場合はね。

いじめと探偵 (阿部 泰尚)

子供のいじめの問題で、こじれてしまった場合に頼ることができる存在として、探偵という職業があるようだ。こういうことに探偵が乗り出すというのはしっくりこないんだけど。ちょうど今「仮面ライダーW」をYouTubeで再放送してるしね。

あともう一つ、きっかけとしては、こないだキモい田舎のオッサンに若い女子が殺された事件があったじゃないですか。完全に根拠がないけど、あれって、いじめられてああいう行為を強要されてたんじゃないかっていう気がしたんだよね。それでお金が欲しいというよりも、アレで稼いだお金を渡せないといじめられてしまうので、どうしてもお金をもらう必要があった、という動機であれば割とあるかなと思ったんだよね。それほど不可解な行動をする事件だった、という印象が残って。