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山椒の実

Category: Comedian

僕の人生には事件が起きない (岩井勇気)

お笑い芸人のほのぼのエッセイ集(?)のようなもの。

まああんまり印象に残る話は少ないかな…葬式の話と、相方への評価のところは残ったか。日常の一コマとは言いつつ、引きつけるところは引きつけ、ダラダラならないようにしてあって、割と文章は上手いと思う。

ただ自分が悪いんだけど、私の最近のお笑い芸人に関する知識が絶望的なので…まあお笑いのことはあんまり書いてないから、どこかで芸人やってる人が書いた文章、という読み方でも全く問題なく読めた。そのへんの構成も上手いと思った。熱のあるファンにとっては物足りないのかもしれないが、おそらく私のような世情に疎い読者をターゲットにして書いているのではないか?

一発屋芸人列伝 (山田ルイ53世)

雑誌の連載かなんかで話題を呼んでいた、一発屋芸人のその後をつづった本。

自分がテレビをあまり見なくなって、そういう話題についていけなくなった時期があって、その頃に活躍した芸人の情報が得られたという予想外のメリットがあった。引きこもり本の時にも思ったけど、文章は上手い。一発当てるにはある種の必然があり、その後の人生にも味わいがある。著者自身も一発屋だけど、多才な人ですし。

ムーディ勝山と先輩芸人によるバスジャック事件のエピソードがすごく良かった。その場の空気感というか臨場感というか。そういうのが伝わってくる。

ホームレス中学生 (田村裕)

以前にかなり話題になっていた芸人本。家族解散後の少年の成長を記述する自伝。テンポも良くて、楽しめた。苦労した人は多い業界だと思うけど、その中でもかなりのレベル。いい奴だったんだろうね。助けを受けて生き続けた先に、ブレイクした後のことは読者の知識と想像に任せて…周囲の人への感謝がほとばしる。芸人本の中ではいい本の部類に入るんじゃないかな。純粋に文学としての評価は別になるだろう。

いい話にまとめようとしすぎてねーか? とか、もっとねっとりじっくり書けたんじゃないのか? とかあるけど、タレント本としてはダイレクトな言葉の流れがあってちょうどいいのかも。専業作家が書いてたら、凄い気持ち悪いことになってたかもしれない。飾らずに、事実を曲げずに書いてるんだろうと想像できる。

電話をしてるふり (バイク川崎バイク)

BKBの人の書いた、ショートショート集。なかなか良くできていて、ファンの人以外の人の鑑賞にも余裕で耐えられるクオリティ。本のタイトルにもなっている一編は抜群に良かったが、それ以外もなかなかの腕前だった。

小学生の息子も読んでましたが、後から自分も読んでみたら、ちょっと小学生が読むには早いかなーと思う、夜の街が舞台になっている内容が多かったかな。

ヒキコモリ漂流記 (山田ルイ53世)

あのルネサーンスの人が波乱に満ちた半生を綴る。相方の樋口との出会いのあたりから先は随分あっさり書いてる。

その生い立ちは凄まじい。朝顔の話とか、ランドセルの話とかはとにかく凄い。まあでも「盛ってる」感もあるんだけどね。自己分析は割と正当なものかもしれないな。少なくとも間違っているという気はしなかった。頭は良かったんだろう。何が彼をそうさせたのか。慢心、環境の違い…

青天の霹靂(劇団ひとり)

本当に意外な良い出来の小説で、普通に面白い。映画化もされてたそうです。

前の「陰日向に咲く」もだいぶ以前に読んだけど、悪くなかったなぁ…冴えない男が人の思いというものを知っていき、最後はちゃんと辻褄も合って、スッキリした読後感を誘う。なんていうか、安心して読めますよね。文章自体も読みやすい。

私も子供を持つ身になってみると親のありが云々…というテンプレート的な話は置いておくと、子供の価値というのは「成長すること」と「必死になれること」だと思います。観察してると、生まれたときからあらゆることに必死ですからね。息するだけのことでも、精一杯、一生懸命やってるの。成長していくと歩くのも走るのも泣くのも遊ぶのも、必死になってやる。そういう気持ちがいつまで続いてくれるのかな、と思っているし、親としてはちょっと付き合いきれんなと思うこともある(笑)。