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山椒の実

Category: Books

時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた (和田靜香)

ライター稼業、バイトとの兼業で生活してきた女性がコロナ禍に苦しんで政治を思う。その思いに国会議員で話のわかる奴が応じて継続的な問答を繰り返す。その学びの過程をそのまま文章にすることで読者に伝えていく。

議員はいいヤツに描かれすぎている感じはするけど、実際悪い奴じゃないんだろうと思うよ。映画やこないだの選挙でも話題になっていた、小川さん。同じ選挙区を争うのがメチャ強力な悪人(?)だからなー。

納得させられる議論も多かったな。人口減少の捉え方とか、デフレと消費税の捉え方とか、電力の問題の捉え方とか、沖縄の基地問題とか。問題の捉え方によって論理的に対応が決まるという面が大きいので、その構図の理解の仕方で納得できるかどうかというのは非常に大きなポイント。理解を間違えなければその後は、なんとかなるんじゃないかと思う。

令和元年のテロリズム (磯部涼)

「ルポ川崎」の著者が、令和元年に起きた大きな事件の犯人の人生を深掘りしていく。その筆致は暗い。

取り扱うのは以下の4件。

  • 溝の口で送迎バス待ちの小学生と親を刺し殺したやつ
  • それを見てゲーマーの息子を刺し殺した元政府高官
  • 京アニの放火犯
  • プリウスミサイルの老人

実際に読んでみると知らなかった事実も多々。

著者みたいな人が深掘りしないと背景や主張は理解されないし、主張自体も政治的な側面は皆無で、底辺や上辺を生きる犯人が、それぞれ異なる事情があって起こした重大事件。共通点が見あたるかというと、難しいと思う。単に時期が近かっただけであって。最初と2個目は関連があるとしても、報道に影響を受けた(逆)模倣犯みたいな感じ。テロと言ってしまうのはちょっと違うかなと思う。それとも、令和最新版の「テロリズム」の定義が、こうなっていくのだろうか。違和感がある。

宇宙へ (メアリ・ロビネット・コワル)

歴史改変SF。第2次大戦直後の米国近海に巨大隕石が落ちたと。爆発と津波の被害の末に大量に海水が蒸発し、気候変動により、いずれ地球には人類が住めなくなると判明、必死の宇宙開発が始まる。

女性/人種差別、ナチスに協力していた科学者とユダヤ人…といった、我々が経験してきた過去と、隕石や宇宙開発といった架空が入り混じり、物語が進む。まあちょっと途中からダレた感があるなー。レディ・アストロノートというシリーズものの前日譚(?)のような位置付けの小説だったらしい。地球脱出後の移住先については特に触れられていないが、火星だよね? 違うのかな?? この本自体は月面基地を作り始めるところまでで終わったが。

神前酔狂宴 (古谷田奈月)

明治の名将を祀った神社の、会館(結婚式場)スタッフの物語。なかなか良い小説でした。登場人物のキャラクターがそれぞれいい味を出していて、その舞台も魅力的なもので、かなりいい読書体験をさせてくれた。

殺人事件が起きるわけでも宇宙人と戦うわけでもないけど、こういう普通の小説だって、ちゃんと書かれている秀逸なものなら、安心して没頭できるんだよね。自分にとっては久々だな、こういう感覚は。

5つの戦争から読みとく日本近現代史 (山崎雅弘)

日本の明治以降の戦争の背景について解説した本。日本側の視点と、世界からの視点を比べた総合的な解説で、学生時代の教育の過程で蔑ろにされてきた近代史について教養を貯めるにはちょうどいい感じがするな。この種の本の1冊目に読む本としては悪くない選択になるだろう。

衝撃的な内容があるわけでもなく淡々とした解説が続くので、眠くなるかもね。自分は正直、中盤は眠くなった。しかしまあ、日本ってのはこの頃はまったく戦闘民族だったんだな。チャンスさえあれば誰にでも噛み付くっていうね。

大名格差 江戸三百藩のリアル (安藤優一郎)

江戸時代の大名間の格差についての解説本。ランクがかなりはっきりしていたらしい。ふーん…と、実感なしに豆知識が増えていく。非常にこう、なんというか、、、めんどくさい世界だったんだな。

長く続けていくことばかりが目的化すると、こういう儀礼みたいなものが重視されてしまうんだろうな。現代は実利が全ての世の中になっているので、儀礼は貶められ、どんどんなくなっていく。それに抗うことはできないのだ。

ハイパーハードボイルドグルメリポート (上出遼平)

新年1発目の読書体験は、超話題TV番組の書籍化。白状すると私は番組の動画は見てないんですが、書籍自体も話題になっていたので、読んでみたというわけだ。

どう表現したらいいのか、すごい話が続いた。読んでいてなんともやるせない気持ちになったし、最初のリベリアの章を途中まで読んで受けた衝撃で、その晩に眠っていたらいつの間にか自分が涙を流していたことに気づく…なんていう虚構の中でしかあり得ないような体験を実際にしてしまった。読み終えた今も、衝撃は続いている。この衝撃でも崩れないほどハードなゆで卵はちょっと想像がつかないな。

仏教ではこう考える (釈徹宗)

浄土真宗の僧侶にして比較宗教学の人? が、問答する。いろんな宗教に通じていて、その上でどうだという。知識が広いですね。たまにはこういう本も、いいかな。出家者の目指すものと在家者の目指すものの違いとかね。参考になるわー。

浄土真宗は僧侶も在家で剃髪もしないし妻帯もするし儀礼も少ないという、割と簡易的な宗派で、私の家の宗教も浄土真宗ということになってます一応。気楽さがありますね。

自分も死期が近づいたら、法話に出かけたりするんだろうか。近くのお寺さんの評判を調べておこうかな。

クリーンミート 培養肉が世界を変える (ポール・シャピロ)

いやはやまたこれは…すごい本を読んだぞ。衝撃だ。これだから人生やめられんよ。緑の革命で一息ついたものの、人口増後の栄養問題という、普遍的な問題に挑む。

世界を救うにはどうしたらいいか? クリーンミートだ。地球の人口は増え続けていて肉食も増えていく。動物はどう? 序文の比率がすごい。野生動物の数と飼育動物の数の比率ね。その飼育動物たちは劣悪な環境で飼育されて肉になるんだが、苦痛に満ちた一生を過ごすわけよ。そしてそもそも人口の増大で肉が足りなくなるわけ。今のボリュームゾーンの人たちは野菜を食ってたまに肉をご馳走にしているけど、それが欧米人のように毎日肉を食うようになったら? 非効率的な現在のやり方の延長では持たない。地球が。人類いい加減にしろよ…

チェコSF短編小説集 (ヤロスラフ オルシャ Jr. 編)

チェコSFという、日本では珍種に属するジャンルの短編集。よく出版したなこんなの…

いきなりショートショートみたいな感じのもので、これが11本だけ? 解説ばっかだったらどうしよう…という不安感も持ちつつ読み進めることに。いわゆる政治寓話みたいなのが多いですね。P.K.ディックで言えば「まだ人間じゃない」みたいなノリね。現在と地続き感をつけたディストピアSF? 好きでSF書いてるんじゃないのかもしれないな、と謎の感想を持った。