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山椒の実

Category: History

砂糖の世界史 (川北稔)

砂糖を中心に見た世界史の話。文章は読みやすい。砂糖、サトウキビの栽培と密接に関わる奴隷制やプランテーション、覇権国家の移り変わりなどを記している。砂糖は世界中の老若男女に好まれる特性があるが、生産には人手がかかり土地を消耗させる。歳をとって、飲み物には入れないようになったが、砂糖のない生活など考えられない。その裏に潜む暗黒の歴史がこの本に書かれているのだ。

砂糖入り紅茶を好む英国人…つまりアジアの茶葉を使った紅茶にカリブや南北アメリカ大陸の砂糖を混ぜて飲む、という構図の持つ意味が分かる。そこに世界が凝縮されていて、それを実現するには覇権国家である必要があるってわけ。使い捨てていく労働力や土地も大量に必要。なんだこの作物…誰からも好かれる悪魔のような。砂糖大根というのがあるらしく、これは温帯でも育つので期待されていたけど、サトウキビが盛り返して今に至る。あとはビートっていうのもある。

木挽町のあだ討ち (永井紗耶子)

仇討ちをしに江戸に出た若者が芝居小屋に出入りして、本懐を遂げる。二年後に武士が芝居関係者の目撃者に聴き取り調査。インタビューにペラペラ喋る芝居関係者の人々。流石に皆さん口上が上手いなあ。さて真実は?

いやー面白かった。一気読み必至。インタビュー内容も、最後に明かされる、その後ろにあるものも。血なまぐさいオープニングなのに、読後感は爽やか。地獄を経た仏。人間だこれが。目撃談と、目撃した人の歩んだ人生、そして目撃された人の人生。それぞれ語られる内容が良い。

サムライ漂海記 (天野純希)

天王寺合戦(織田信長の本願寺戦)で織田方の水軍として戦い敗北した隻眼の青年が奴隷戦士として売り払われ、冒険が始まる。アルマダ海戦でも活躍していた。なかなか良い本だった。

イスパニアの悪辣な侵略の手先になって剣を振るい、宗教絡みの事件を機にイングランドに移籍。武人として海を駆ける。なんとも後味の悪い戦い。本願寺戦も同じカテゴリだけど、宗教が絡むとどうしてもそうなるねえ。

アイナが死んでなければな。そんなBiSH継続ルート的なものはあったんだろうか。そうもいかないのか。当時の倫理観は単純かつ複雑で。海を越えても、あの空だけは繋がっている。そんなことを思いながら読み進めた。

寿司銀捕物帖 イカスミの噓 (風野真知雄)

寿司屋のオヤジが昔とった杵柄で十手を振り回して事件を解決してゆく。てやんでい、べらぼーめ。御用だっつってんだぜおめえ。

感想としては、寿司屋が殺されすぎだ。そんなに危険な職業か寿司屋って。あとトリックは何かと無理があるんじゃないだろうか。

引退撤回しての若手育成、かつてのバディの病苦、外食産業、因縁の敵。いい感じに要素を散りばめながら事件を鮮やかに解決していくのは爽快だった。ただ現役復帰した老人が活躍しすぎていて、若手をもっとちゃんと育成すべきだと思った。

飽くなき地景 (荻堂顕)

まさかの金城庵だ。あの懐かしの。思い出すなあ。好きな言葉は「ああ君たち、足くずしていいよ」です。

家伝の刀剣をめぐる冒険。象牙をめぐる名作SFを思い、あんな感じかなと考えたが、どうか。とりあえず刀身にカタナブレードツルギとは書かれていないことはすぐに確認できた。太田道灌の愛刀だ。戦後の、第一次東京オリンピック周辺の時代。東京を歩いた名家の数世代を描く物語。

裕福な生まれの主人公による短いストーリーが約10年ごとに語られていく。最初の渋谷討ち入り事件のぶっ飛び具合が良かったが、年齢を重ねて大人になっていく。死んだやつはいいやつ、というわけだな。

名将名城伝 (津本陽)

全国にあったいい城をネタに四方山話を語る。津本陽が、だ。まあこの人の名前がなければ読む気にはならない内容だよなあ。それでも読んでしまうのだが。キン肉星宮殿と瓜二つと言われた大阪城も大トリに入っていた。サラリーマン時代はあの辺が通勤路だったらしい。なるほど。

まあ、読む前から「そんな感じ」だろうと思っていた、読んだ後も「そんな感じ」だったな、という感想。こういうの好きな人もいるんじゃないか。まあでも、本願寺と大阪城の話とかは悪くなかったな。やはり思い入れがあると熱量も違う。名護屋城についてはあんまりイメージがついてなかったのだけど、本書の記述のおかげでだいぶ構図がハッキリしたので良かった。他にも琵琶湖周辺の佐和山城や坂本城のあたりについても同様。

城は踊る (岩井三四二)

戦国時代の小さな城攻めの話。散々命のやり取りをして、多大な犠牲を払う。その先にある徒労。とんでもねーな。危険に次ぐ危険を冒した挙句、誰一人得をしていないというね。

でも、ハラハラドキドキ楽しめた。まあ、怪我しすぎだなあ。実際は動けないよ、こんな怪我してたらさ。

ふうてん剣客 狂太郎きてれつ行状記 (菅野国春)

赤穂浪士の討ち入りをベースにした娯楽時代小説。重厚さには欠けるか。暇つぶしにはいい読書だったかもしれない。それ以上の感想は特にないような?

まあちょっと簡単に斬りすぎですけど、そこは時代劇だからなー。題材的に、登場人物のほとんどが死亡エンド確定ですからね。

あとは、同題材で用心棒日月抄(藤沢周平)ていう傑作があるのも辛いところ。どうしても比較の対象になってしまって、分が悪い。まあ読み始めたのも、あれと同じ時代だなと思ったためだから、違う題材なら読んでなかっただろうし、そこはどうとも言えないな。

インターネット文明 (村井純)

古代インターネット文明では、男も女も暇さえあれば早朝から深夜までレスバに明け暮れていた。この本は、そのような文明史について記述している。まったく最近の若いもんはネチケットも知らんでのおw

なんていうわけではなく、インターネットあれこれを書いている。昔話から最近の話まで。インターネットもできてからもう50年も経つんですね。そのうちウェブが30年。数字に衝撃を受ける。私がインターネットに初めて接触したのは…と語りたくなる数字だ。

古文書返却の旅 (網野善彦)

借りパク上等の古文書界隈? 壮大なアーカイブ計画が頓挫して大量に手元に残された古文書の返却をライフワークにして数十年。主要関係者の逝去も影響し…すぐ早く返せないものかねえ。管理がなってないんじゃないの? と言いたくなるが、果たしてどうか。

普通は激怒されて当然のこの状況。旧家の鷹揚さからか、著者のパーソナリティからか、不思議と怒られずにさらなる古文書を貸してもらえたり寄贈にしてもらえたりしたらしい。まあ今更持っているよりは研究機関に保管してもらったほうが、いいことが多いだろうな。現代人には、守り抜いて次代に伝えるタスクは辛いものがある。個人の努力ではどうにもならないケースも多いのでは。