六時四十二分。
目覚まし音が三度鳴って、止まった。遼がスマートフォンの画面を押さえたのだ。夢うつつにやった気もするし、完全に覚醒した状態でやった気もした。どちらでもよかった。今日がどんな日になるかは、関係なかった。
天井の染みを数えるのは今日で何日目だろう。右上の三角形。左寄りの楕円。中央のあれは前の入居者の遺物か、自分が越してきてから生まれたのかもわからない。遮光カーテンの端から漏れる光が、染みの輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
六時四十二分。
目覚まし音が三度鳴って、止まった。遼がスマートフォンの画面を押さえたのだ。夢うつつにやった気もするし、完全に覚醒した状態でやった気もした。どちらでもよかった。今日がどんな日になるかは、関係なかった。
天井の染みを数えるのは今日で何日目だろう。右上の三角形。左寄りの楕円。中央のあれは前の入居者の遺物か、自分が越してきてから生まれたのかもわからない。遮光カーテンの端から漏れる光が、染みの輪郭をぼんやりと浮かび上がらせていた。
吉備の里から一日半、翼をひたすら動かし続けると、山が急に深くなる場所がある。霧が谷に溜まり、木々の梢が雲の端とほとんど区別がつかなくなる。その奥に、霧重ねという小さな集落がある。
玄羽は、その集落を上から見下ろしながら、文を一通、足に括りつけたまま空気の渦に乗っていた。
桃太郎さまの命令は、このひと月で3回目だった。先月は東の大社、先先月は海辺の港町。今度は山の奥の霧重ね。「急ぎの文を届けよ」と言われれば、玄羽は飛ぶ。それ以外に、自分の意味を知らなかった。