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山椒の実

Category: Mystery

ミステリークロック (貴志祐介)

密室殺人のミステリ。表題作はとにかくややこしすぎる。説明編が理解できんのじゃ。つまり時計がトッケイ! てことか。コケコッコー?!

ぬで始まる動詞、という話は本筋とは関係ない、ということは話を読み進んでポンコツっぷりと探偵との関係性から判明する。とにかく気球のピーターパンのトリックには度肝を抜かれた。その手があったか! と。シリーズものなんですね。他のやつも読もうかな。

ヤクザの自殺のやつは緊迫感もあってかなり良かった。命がいくつあっても足りねーな。

この本を盗む者は (深緑野分)

本を盗むなよ。買え。無理なら図書館で借りろ。以上。

そんな物語。上級の呪いが街中に広がる。お前のようなババアがいるか。ジャンルを股にかけた、世代を超えた呪いの世界だ。崩壊する世界をどうやって救う? そこのお前が主人公だ。

なかなか良い読書体験になった。中では、シルバードラゴンがカッコ良かったな。ウンコすら便利だし。あの可哀想な扱いはどうかと思うが。戦闘シーンも迫力があった。

作家刑事 毒島 (中山七里)

文筆業を志す人が、編集者なり先輩なり、関係者を恨んで殺す。それを毒舌の作家で刑事の毒島が解決する、と。これって内輪ネタの部類なのかな。短編で、セリフも展開もテンポが良い。あっさり解決しすぎだろうけど、軽く読めるというメリットもある。あと被害者も割とロクでもない奴ばかりというか、罪悪感がない。犯人たちの異常性も強いけど、被害者もたいがい異常という。

しかしこれってトリックはあるものの、毒舌で挑発に乗った犯人が自滅するだけ…こんなのアリ? と思ったけど徐々に謎解きしてから罠にかけるような動きになっていたので、それなりに安心できた。

オーパーツ 死を招く至宝 (蒼井碧)

「ぺき」っていう名前も私の世代だとかなり珍しいけど、最近は多いんだろうな。それはどうでもいいとして。この本は、冒頭からぶっ込んでくるドッペルゲンガー設定をどのくらい生かせるか、という話になる。密室特化の推理小説。いわゆる本格ってやつ? 暇つぶしには悪くないか。実は生き別れた双子だった、なんてことがあればと思ったんだけどね。そこは謎ではないのね。

結論としては、まあまあ楽しめた。1本1本がそれほど長くないし、記述も素直で気楽に読める。

エフィラは泳ぎ出せない (五十嵐大)

兄の死という事件と向き合う。死が導くその先にあるものとは?

うかつにこんな重い話を読み始めてしまった。推理要素のある娯楽小説のつもりだったんだけどな。気づかないよ読む前に。後悔しても遅い。重たいが、読まずにはいられない。

個人の人格を無視して、寄ってたかって。まさかねえ。描写は巧みで、現実感がある。そして、鉛筆画ですかね、描いた絵をあんまり人に見せなかったんだなあ。お金があれば、たまにギャラリー借りて個展でも開いたらどうだったかな。そんなことを思う。主人公や幼馴染は責められていたが、立場的には何の罪もなかろう。実際のところは、大人が悪い。

三百年の謎匣 (芦辺拓)

なんだコレ…収拾つくの? 不安になる。

バラエティ豊かな物語の数々をまとめてスッキリ謎を解く真の主人公の風格。もうちょっと描写があってもいいよねえ。ちょっとは考える時間を作って、悩め。

物語自体は年代も場所も様々で、まあ多様すぎた面はある。というわけで、翻訳したっつっても限度があるだろうと思うよ。最近のAIだと各種の各年代の言語からうまいこと翻訳できる、という設定でも入れとくか? と思ったりもした。300年なら、それほど変わってないとも言えるが、日本語だって300年前の言葉は今はだいぶ通じないし、普通の人には読めない、古文書の類だよねえ。

ネクスト・ギグ (鵜林伸也)

音楽の流れる推理小説。ロックで、その表現が素晴らしい。こういうことなんだよなー。鳴ってるもんね、音が。文章で鳴らすのは想像以上に難しいはずだ。こういうことなんだよなー。こういう本を読んで暮らすのが理想の生活なんだよね私にとっては。

謎も、謎解きも良かった。折々に衝撃展開もありながら、ラストの読後感も良い。ロックとは。真っ直ぐで、それでいて色んな方向に曲がり転がる。いやー、ほんといい本を読んだね。

自分はハイスタのあの人をイメージして読んだが。

名探偵と海の悪魔 (スチュアート・タートン)

なかなか重厚で素晴らしい物語だった。しかし最近だと2段組は珍しい。

登場シーンの少ない囚われの謎解き人の周囲の人々が、船中に巣食う呪いを解いていく。いくんだけど、いろんな事柄と死が起こって、果たしてこれはどうなるの? どう収拾つけるの? と疑問に思いながらも読み進める。トム爺…じゃなくてトム翁か、コミカルな名前とは裏腹に、かなりのホラーが入ってるね。ゾンビが出てきても納得するくらいな空気だが、出てこない。

かなり良い読書体験だったのは間違いないけど、このラストはどうなんだろう。この主人公は欠点がない奴だけど、傷つきすぎているし。時代背景を考えて納得するしかないのか。

ゴースト 二係捜査 (本城雅人)

このシリーズ。また穴掘り事件だ。前作前々作に引き続き。これまでは、悪人がただただ悪人であるという特徴があるが、今回はどうか。タイトルを見て、ゴーストとはもしや、、、ポケモンでは? と思ったが、結末はどうだったろうか。

今回もまあ、そうだった。こういう謎解きは時として鮮やかなものだが、犯罪とはなんなのかな。このシリーズは、毎回そんな気持ちになるよね。人生の間違いは、それと気づかぬうちに始まっている。

いくさの底 (古処誠二)

ちょっと珍しい時代設定の推理小説。二次大戦中のビルマの村に、日本軍だ。チジマスターだ。戦闘シーンはあまり出てこないので安心だ。殺人事件は起きるから、死人は出るのだが。

かなり面白かった。まさか、そう来るとはねえ。謎解きも良いし、謎解き以上のものも良かった。次郎長と石松。有能すぎる人物も出てくる。