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山椒の実

インタビューズ (堂場瞬一)

平成元年から終わりまで、1つの時代を通じて渋谷のスクランブル交差点で大晦日に行われたインタビューを並べた本。

…というテイのフィクションの小説。

着眼点はすごいし時代を映す鏡みたいな感じで、懐かしいと思われる出来事や何やらを感じさせてくれた。ただ出会い系で会った人に本を勧め続けたあの人ほどの狂気は感じなかったなー。平成ってこういう時代だったよな、というのを感じさせてくれたのはそうだが、良くも悪くも、平成が終わった時点での著者の興味の範囲の中に収まっているよね。言語表現としても著者の能力の範囲を超えられない。つまり意外性が欠けていて、そこはフィクションの限界かと思う。真実っていうのはもっと、意外なものなんだ。

そして平成が終わり、令和は令和ですごい過激なことが起きてる現実を知ってるからね。明らかに激しい事象もあれば、なんとなく生きづらい世の中になったなと思う出来事もあり。昭和を振り返るために向田邦子のエッセイを読んだ、それと同じ位置付けで平成を振り返る目的では読めないかなあ。

まあ、それでも面白かったよ? なんだかんだで自分は平成人なんで、リアルタイムで知った/経験したような出来事が次々に出てくる。

ああ、「生きづらい」みたいな表現を書いてしまうと補足したくなってしまうな。なんていうか最近、世間に出るときに怒りの渦の中に足を踏み出しているような感覚があるんだよね。サウロンの視線を感じる! とか言い出すと狂人になってしまう。で、外出時は身構える感じになっている。在宅勤務が続いて感覚がおかしくなったのか? しかし自分はもっと優しい世界に住んでいたはず…という感覚もあるし、だいたい俺は他人の目など一切気にせずに過ごしていたんじゃなかったっけ? これは自分のせいなのか、時代のせいなのか。

自分のせいだとしたらシンプルに劣化して弱くなっただけだろうけど、もし時代のせいだとしたらどうだ? この現代、SNSが蔓延る影口社会で生きるとは、どういうことなのか。IT大手の広告至上主義による監視社会を生きるとは、どういうことなのか。

みたいなね。