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山椒の実

万引き老人 (伊東ゆう)

いわゆる「万引きGメン」のベテランである著者が、老人による万引きの実態について記す。救いのないエピソードも多い。というかほとんど、どのページにも救いなんてない。たまにあることはあるんだけどね。

最後の方の、人生にどうしようもなくなって妻の墓前で自殺することを決めた(という遺書を隠し持っていたことが後で分かる)老人が、手ぶらで墓参りに行けないからとスーパーで花や線香を万引きして、著者に捕まる。そして著者がちょっと目を離したすきに服毒自殺してしまう…という話なんかは、究極の救いのない話。死に場所と決めた亡き妻の墓…そこにすらたどり着けてないんだもん。最後の最後で泥棒になって…名誉なき死…安らかさとは無縁。絶望しかないよ。

気になったのは写真。これ本物か? 本物だよね!? モザイクはかかってるけど、なんて言って撮影したんだろう。本に出すのに被写体に許可もらってるのかな…というところ。

まあ、どん底に落ちたら何するか分かんないけど、泥棒にはなりたくないもんだなぁ。

万引きGメンってのもかなりハードな商売みたいで、給料も高くないし泥棒を騙して捕まえるっていうね。捕まえたら捕まえたでまた長時間の追加仕事に。店長呼んで、警察呼んで、逮捕になったら聴取されて。この仕事で充実感を得るのは難しいだろうな。あとがきで離婚して娘とは離れ離れになり、小学生の息子と暮らすみたいに書いてあったけど、小学生の子供がいる父子家庭でここまでハードな仕事というのはまた凄い話。

警察も全件通報という話にして手続きもだいぶ簡素化したらしいけど、それでも面倒は面倒らしく、地位のある人以外は見逃したり、ひどいのは管轄外までパトカーで連れてってそこで被疑者をポイ捨て、みたいなことまでしてるらしい。いろいろとひどい。