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山椒の実

現代語古事記 決定版 (竹田 恒泰)

大和の成り立ちが書いてあるという古事記。神話の解説をしつつ、(当時の)現代の天皇の御世に至るまでを記す。まあ悪いけどロクでもない記述なんだろうな、という印象を持っていたけど、思った通りだった。「史記」や「ガリア戦記」を思うと、この書物の価値は低いと思う。

なんでかというと、単に神々と天皇家の婚姻や内輪喧嘩の記録で、名前が大量に出てくるけど実際名前を記録するだけのための記述にとどまっている。事蹟が記述されるケースが少ないのだ。倭建命の冒険とかは割と書いてある。まあただ、歌がたくさん出てくるので歌集のように使うことはできると思う。ひどいのは誰と結婚して誰を生んだ、そんで死んだ、みたいなだけの記述だったり。何をしたか、どんな人物であるかが大切な現代のような時代とは異なる価値観を持つ時代だったということなんだろう。誰と結婚して誰を産んだか、が重要視される世界。いやだねー。

そんな単調な記述の中でちょっとツボったのは、仁徳天皇の話。皇后が嫉妬深くて、天皇は皇后の嫉妬に負けて、妻にしようと召したをしぶしぶ手放すんですね。そのあと仁徳天皇は皇后が不在のときに性懲りもせずに次の女を召そうと部下を派遣するんだけど(笑)、女が嫌がるの。皇后の嫉妬に負けて前の女を不幸にしたのを知っていて「そんな奴のところに行くのは嫌だ、いっそ貴方の妻にしてください」と迎えの部下に言うんだよ。で、この部下の男がなかなか男気のある奴で、女の望みを受ける。女を妻にして天皇には復命しないのね。割と立派な奴なんだ。仁徳天皇は後でそれを知って、部下の部下をそそのかして2人(夫妻)を殺す。皇后も変な人で、夫が愛人もらうのは嫌だけど愛人に逃げられてそれを殺すのはOKなのよね。この生命の扱いの軽さが古代だよね。そしてこれ、さらに後日談があって、部下の部下は2人を殺したときに奪った女のアクセサリを自分の妻にあげちゃうんだけど、なんかの行事でその部下の部下の妻がそのアクセサリをつけて行くんだ。そのアクセサリを見咎めた皇后が部下の部下の妻を殺しちゃうっていうね。うーん…誰もが理不尽に幸せにならないという、うんこみたいな物語。この、くだらない話へのフォーカスっぷりが古事記なんだよ。

仁徳天皇は諡も白々しいほど立派で、まるで聖帝みたいな扱いを受けているんだけど、古事記ではその事蹟は女関係ばっかり熱心に書いてるんだ。そこが古事記の問題。重要じゃないところばかり書いている。何を言いたいのか分からない、恐らく言いたいことなど何もない、記録のために記録した、それだけの記述。

古事記の乏しい物語部分に関しては、それまで「死国日本」とか梅原猛の古事記本とかを読んでいたから、彼らの解説になるほどとうなずける部分もあることは確認できた。確かに火山だと思えば納得行く部分も多いし、混血の進み方とか、この記述は渡来人のことなんだろうな、とか。