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山椒の実

青函トンネルから英仏海峡トンネルへ―地質・気質・文化の壁をこえて (持田 豊)

国鉄で青函トンネルを掘り、英仏海峡トンネルのアドバイザーも務めたトンネルの第一人者、持田さんが書いたトンネルの本。あまりに淡々と技術的な話を次々に書いていくのだが、それだけでも迫力はあるね。読ませる文章ではないが、中身が純粋に事実の積み重ねだからね。真実は伝説を超える。

前半は就職以来ずっと関わっていた青函トンネルの話。オヤジがお手製で作った潜水艦を使って調査する話とか、水平ボーリングの話とか、いろいろある。技術的な要素が次から次へと語られていくのは爽快感も感じる。値段が3倍になるセメントの話なんかはとても実感がこもっていた。まあ語り口はあまりにも淡々としすぎていて主張という部分に欠けるんだけどね。正直な感想を言えば…「無茶したね」という感じ。

後半は英仏海峡トンネルのアドバイザーとして一歩引いて眺めた話になっている。英仏海峡トンネルというのは国家間を結ぶものだから政治的にはいろいろあったが、青函トンネルと比べると地質も良く掘りやすかったらしい。青函トンネルの場合は技術がなかったし技術的な困難さが桁違いだったから、技術開発をしながら掘っていたのに比べ、英仏海峡トンネルは資金も民間のみで調達し、ちゃんとペイできるように技術開発は行わずに実績のある技術だけで掘っていった。技術開発によってコストダウンできることもあったりするみたい。しかし前例とするものは青函トンネルが基準だから著者の忠告も聞かず、地震対策も青函トンネルと同じ(つまり過剰なもの)を採用してしまったりしたらしい。

最後は軌道エレベーターの戯言に通じるような夢みたいな話を書いたりする遊び心があってほっこりする。まあ軌道エレベーターはそこそこ本気でやってる人も多いみたいだけど。こないだラゾーナの東芝科学館に行った時に「カーボンナノチューブで実現可能になったのは何?」というクイズの正解が軌道エレベーターだった。そうか実現可能になったのかー。ホントか?