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山椒の実

Category: SF

絶滅の牙 (レイ・ネイラー)

死んで100年経ってから、意識をマンモスに転送されることが現実にあるんだなあ。それを最初のキャラクター紹介で書く? 1行目だよ? もっと劇的な事柄だと思うんだけど。

マンモス再生後の世界。意識転送による永遠の生命も公然の秘密になっているロシアで、マンモスはこの先生きのこれるか。生き残るためにリーダーに不屈の学者の頭脳を送り込んだ。密猟者を許さない。俺たちの時代が、来る。

SFとしては短い作品だったけど、すごい話だった。テクノロジーを手に入れたところもポイントだったけど、やっぱマンモスのデカさが強いんだよな。圧倒的だからね。地の利もある。キン肉マンでもマンモスマン強かったからな。納得だ(?)。果たしてマンモスは夜目が利くのかどうかという技術的な疑問も感じた。夜行性である必要はないけど、鼻の感覚は確かにありそうだ。ただ絶滅しただけあってその生活習慣は謎に包まれているし、学者だからと言って復元できるものでもない。

シンギュラリティ・トラップ (デニス・E・タイラー)

メタルヒーローの誕生秘話。この不老不死は強い。著者はレギオンの人だね。相変わらずスタートレックねたを入れてきている(私はそのあたりのニュアンスはうまく理解できない)。ボブは出てこないが。

後半は、三体みたいな話になった。意識してるのかも?

全体的には、楽しく読めた。プリチャード、君は特によく頑張った。だいたい、登場人物がみんな全力を尽くして最善を探って行動しているからこそのこの物語だ。

コバヤシマルのことは、いつか何かに使えるかもしれんので覚えておこう。中学時代に同級生だった小林君ってのがいて…(略)

プロトコル・オブ・ヒューマニティ (長谷敏司)

かなり良かった。

近未来SFでAI義足のコンテンポラリのダンサー。

これがまさか家族介護の苦悩を描くと思わないじゃないですか。ヒューマニティを失っていきながらも希望を生み出してゆく。ダンスとは。人間とは。ロボットとは。身体性の強弱が語りかける。うおー!

自動運転の世界なのに交通事故が起きすぎだろう。ツキがないってレベルじゃないぞ。

あとは、うんこをスタイリッシュにするSFを思い出した。北区のやつね。あの技術が発展していてほしかった。この世界でも。今からでも遅くはない。現実に欲しい。

sideBもはかどりそうだねえ。恋人、兄、父、エンジニア、それぞれ人生や物語がある。

プロジェクト・ヘイル・メアリー (アンディ・ウィアー)

火星の人の著者が送る、名作の呼び声高いハードSF。素晴らしかった。ヤード・ポンド法は死すべし!! 最近映画化もされたらしい。

序盤はどうなることかと思ったけどな。開幕退場の2人はちょっとかわいそうではあった。その後も適度なタイミングで衝撃の展開が続く。現在の奮闘シーンと回想シーンが交互に続いて、フィナーレへ。どうしてもソルの末路が気になるけど、良かった…のかどうかは分からないんだなあ。

危険すぎる船外活動があったけど、ロボットにやらせるべきだね完全に。ロッキーが持ってんじゃん、船外用ロボ。あれじゃできないのかな。船外活動が必要になるって分かった時点では接続されていたわけだし、レール移設したりすれば連れてけたと思うんだよな。そもそも人間が出て活動する話になったとき、ロッキーもドン引きしてたじゃん。

ハロー・ワールド (藤井太洋)

抑圧に抗うITエンジニアのSF。この時代か。すでに懐かしい。だいぶこう、変わっちまったからな、世界が。

まあちょっと理想のキャリアのエンジニア? みたいな感じの主人公が、熱意をチラ見せしながら信念を貫く。設定がちょっとアレだけどな。自分より優秀なエンジニアに一目置かれるとか、カンファレンスにゲストで呼ばれてみんなと仲良くなるとか、みんなに自由を与えるために一肌脱ぐとか、あれやこれやで異世界転生的な? 空気感を浴びて、つまり読んでいて居心地が悪くなる。

おうむの夢と操り人形 (藤井太洋)

ロボットとかAIのSF。飲食店のネコちゃんとか、pepper君とか、あのへんをうまいこと組み合わせて作る。

短編だからな、あんまり書ききってある感じはしない。もっと文字数があれば変わったかどうか。このレベルの人物が、このレベルの出来事で20年ボーッと過ごすのはバランスが壊れていて納得がいかぬ。そういう違和感はあった。

だって20年だぞ!? 一人の人間にとっては、実質永遠だ。

Y (佐藤正午)

中年男性タイムスリッパー物語だ。高校生じゃないけど、高校時代の同級生が絡むのでギリセーフ? そんな計算のありやなしや。それを名手・佐藤正午がどう描く。まさに真骨頂だ。ジャンル的にはSFだよね? SFというもの自体の、他のジャンルと混ざりやすい特色が云々…

かなり面白かった。なぜピンボイントで行き先に確信を抱くに至ったのかには興味があったが、思えば叶う? そういうものなのかもしれない。あとは予兆のショートスリップの時もsrc側の身体は死んでんのかな、という疑問も。ロングだから死、ロングならでは死、というのも違うような気がするんで。そしたらタバコつけたまま突然死すのかと。退社ドア死も事件でしょうよ。そしてdstは入れ替わる元の人格はどうなるんだ。仮にsrc側に移行するならsrc側は死なないんじゃないの、いや死んでたし、ショートの時も移行してないよな…つまり消滅? うーん、タイムスリップの原理も、こうなると悩ましいものだ。

タイム・リープ あしたはきのう (高畑京一郎)

うるう秒のアレだっけ、それとも時刻同期がずれて修正する時のやつ?

実際は高校生がタイムスリップだ。なかなか熱い設定ですよね。どうせタイムリーパーを出すなら、やっぱ高校生くらいがいいですよね。老人とか出しても燃えないですもんね。…という方向性を決定づけた、割と名作の扱いの小説。

果たして読んでみたが、なかなか良かった。物語やキャラクターに魅力があって完成度も高い。今読んでも問題なく楽しめる。

ラムディアンズ・キューブ (小田雅久仁)

序盤からは想像もつかない展開。ただ設定が多すぎて大変だった。言語とかはもういいんじゃないの、とか。説明してくれないとついていけないし、説明が多いのもうざい。中編に収めるのは無理がある設定の多さだと思う。チュートリアルでエンディングまで突っ走ったという印象。

まあこれ、本人が書きたかったんだろうな。読んで楽しいものではないが、書きたくなる気持ちは少し分かるよ。三体の最後もそうだった。弥勒も衆生を救わない。

紙の梟 ハーシュソサエティ (貫井徳郎)

現代日本に舞い降りたハムラビ法典「死には死を」つまり殺人即死刑。そういう世界の物語。ペーパーマリオの小説版だと思って油断していると度肝を抜かれることになる。とても良かった。いい本を読んだ。短編4つと、長編1つ。

設定は設定に過ぎないので、登場人物や事件は設定を舞台装置にしつつ、独自に進んでいく。序盤の短編で設定の裏をかく犯罪やクローズドサークルもの、イジメ自殺とテーマを変えながらの進行で舞台に慣れさせてのハードボイルドな長編につなげていく。