ラジオと戦争 放送人たちの「報国」 (大森淳郎, NHK放送文化研究所)
戦時中のラジオ放送を振り返り、報道人としてのありかたを考える。NHK(の前身)自体が実質国営(?)放送だから、政府広報みたいな役割があったんじゃないのかと思うし、そうなれば政府の考えを広めるための尖兵となり戦争遂行のため国民を滅私奉公に向かわせるという方向に行くのは仕方ない…という考えがある。しかし著者は思うのだ。果たして本当にそうなのかと。
制度面(東京と大阪の統合)や上層部の人事面(役人の天下り)は置いとくとしても、現場はどうだったのよ。
実際の放送や内輪向け(?)の記事なんかを見ると、嬉々として戦争賛助を進めていった様子が分かったりする。ラジオという媒体の特異性をいかにして活用してそれを成すか、みたいな。
やってんな、こいつら。
最初のうちは御用通信社の記事を口語にしてアナウンサーが読んでいただけだったが、やがて政府の考えに勝手におもねって書き加えたり扇動的煽情的な表現を使うようになっていく。念願の独自取材をするようになるとその傾向がさらに強まり…もう100年近く前の話だけど、なかなかに生々しいものがある。詩人や教育者からNHKの要職について煽動の中心となった人物の変節や葛藤なども語られる。
時局の影響を受けたアナウンススタイルの変遷なども。ラジオを聞いて影響を受けた若者が入ってきてさらに、自己フィードバックのように先鋭化したり。
そして敗戦、戦後と続くNHKとラジオの歴史。ストライキとかレッドパージのあたりも語られる。あとがきでは安倍政権時代の番組改変事件の話も。根本はあまり変わってないというね。そういうところなんだよねブロードキャストってのは。政府の便利な道具になる。それを防ぐのは組織内の個人の努力の範疇なのか。そうなのか。NHKの中途半端なところ。相反ですね。メディアの役割である権力の監視という題目と、そもそも権力が設立した組織であるという経緯がある。