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山椒の実

パッとしない子 (辻村深月)

氷の手で心臓を掴まれるような話。強制的に自分の過去を振り返させられる。そうせずにはいられない。どうせロクでもないことして周りの人を傷つけてたんだろうなあ。人生で、片手で数えられるくらいのケースは思いつく。あれはもしかして傷つけた可能性あるよなと。相手がどう思っているのかは知る由もないし今さらだが…心が痛む。しかしそれ以外の覚えがないというのがまた辛いところで。他にもあるに決まってるよな。この小説の主人公のように、自分にとっては取るに足らない、しかし相手にとっては? 無意識の魔法というか。あり得る話。あるに決まってる話。どうしよう。覚えていないこと、それ自体も罪深いのだ。

つまりこの小説、読む前は健康状態のチェックが必須だ。動悸息切れに注意。死んだらヤバい。まさかこの歳で死因が読書になるとは。読む前の警告と、健康チェックシートを添付すべきでは。

…というこの感想文の書き出しからわかる通り、この小説は短編で分量は少ないが後味は強烈で、どうしても自分自身のことを考えてしまう。自分は対人が苦手であまり多くの人と直で関わらない仕事を選んできたが、それでも関わりはあるわけで。どれだけの人の傷になってきたのか、どれだけ自分は罪深いのか。自分自身はガサツ…鈍感力が強いというか、傷つけられた経験が少なく忘れっぽいので、配役があるとしたらどう考えても加害者側のキャラなんだよ。それを思うとおぞ、おぞ、おぞけの波が…

当時ずいぶん思い返した、自分が原因とは思えないが重大事案になったケースもあり、そのことも改めて思い出してしまう。気づかずどこかで自分に瑕疵があったのか、いやそもそも原因は何だったのか。思考はぐるぐる回る。容易に止まらない。絶望に導く道が、どうつながったのだろう。自分にとっては、永遠の謎だ。

まーどちらに感情移入して読むかで感想が真逆になるんだろうな。その選択にこれまで歩んだ人生が問われる、とも言えるか。

これからどういう顔して生活すればいいんだ。そんな小説。とにかく強烈だ。こんな物語毎日読んでたら、もう生きていけねーぞ。致死量に達する日は近い。

この短編がこれだけ人の心をかき乱す。小説の芸術的価値としては非常に高い。高いけどさあ! もうちょっと手心というか。救いがなさすぎて。