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山椒の実

飽くなき地景 (荻堂顕)

まさかの金城庵だ。あの懐かしの。思い出すなあ。好きな言葉は「ああ君たち、足くずしていいよ」です。

家伝の刀剣をめぐる冒険。象牙をめぐる名作SFを思い、あんな感じかなと考えたが、どうか。とりあえず刀身にカタナブレードツルギとは書かれていないことはすぐに確認できた。太田道灌の愛刀だ。戦後の、第一次東京オリンピック周辺の時代。東京を歩いた名家の数世代を描く物語。

裕福な生まれの主人公による短いストーリーが約10年ごとに語られていく。最初の渋谷討ち入り事件のぶっ飛び具合が良かったが、年齢を重ねて大人になっていく。死んだやつはいいやつ、というわけだな。

主人公視点の上流階級っぽく抑制された文体にしてはガチャガチャ散らかったところもあったけど、なかなか良い物語だった。実際突き抜けた人生ばかりではないし、そういうリアルはあるだろう。ただこの主人公は周囲の人の誰にも幸福をもたらしていない。そういう描き方なので、読後には空虚だけが残る。ここまで共感できない主人公を憎たらしくなく描けるのは著者の技量が高いんだろうな。マジで共感できる要素がないんだ。

というわけで少しは共感するために私も葉隠を読もうと思ったけど、けっこう長そうだな。やたらに長くてまたオッサンの人生訓とかのクソ文章だったら…と思うと、なかなか思い切れない。まあでも、いずれね。