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山椒の実

ラストパス (中村憲剛)

Last Passなのか、Pathなのか。ダブルミーニングか。

川崎の歴史書を書くとしたら、3段ぶち抜きで書かれるであろう、伝説の名選手による引退までの5年間の手記。さすがに憲剛ともなると、文章力もあるなあ。よくあるスポーツ選手の本に見られるゴーストライターっぽい文章ではないけど、自分で書いたんだろうか。スポーツ選手の本にしては分厚い(380ページ)。それでも書き足りないくらいの熱量がある。

自分で引いた線。40歳までの5年間を過ごしたアスリート。真似できかねる偉業をやってのけた。理想の引退の形と言えるだろう。大怪我から復帰してなおJ最強チームで活躍していたし、まだ何年か一線でやれたのは確実だが、その状態で辞めたかったのだ。

憲剛は私もそこそこ長く見てきた選手だ。というか私がサッカー見てる時間の大半はこの選手のプレーが主役だったわけなんだ。引退を決心してから最後の5年間の過ごし方はシンプルに興味深いし、自分の引退に際しても参考になるのではないか。オレももうトシだしな。エンジニア35歳限界説なんてのもありましたが、その年齢を過ぎて何年になる? そう思ってか思わずか、とにかく読んでみた。

果たして読んでみると、何の参考にもならなかった。ただ興味があって、思い出して、読んでしまう。自分はこのときここにいてこう思っていた、あそこにいてこう叫んでいた、と。主役と観客、アングルと解像度の違う、同じ光景が重なる。

あとはそうですね、これまでいろいろ記事も出ていて私も読み漁っていたから、だいたい他で読んだような話も多いが、その原著みたいな感じだった。