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山椒の実

サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった (中村 慎太郎)

作家志望の中途半端な青年がFC東京というどうでも良いJリーグクラブのサポになるまでを描いた本。文章はあまり上手くないけど、伝わってはくる。まあ私は現場を知ってるから言いたいことは分かるというね。ただ知らない人にこれが伝わるのかどうか、それはわからないな。東大の大学院まで出た文筆家にはFC東京はちょうどいいクラブだと思うよ。近いし、適度に強く、そして強すぎない。俺たちと同じ、マゾ体質? まあ、クラブ選びは成功してると思った。

まあヴェローナとかいうイタリアクラブを追いかけた名著「狂熱のシーズン(ティム・パークス)」を日本人の初心者作家志望が書くとこうなるのかい、という感じ。軽い。このライトな感じが日本の悪さでもあり良さでもあり東京の良さでもあり悪さでもあるわけだ。パークスの本のほうはあれのおかげで子供が「メリダとおそろしの森」のことを「メルダとおそろしのもり」ととんでもない発音をしてのけたときに妙な顔をして注意することになるわけだが。ボンバ! ボンバ!

この人は思いがけず書いたブログエントリがJリーグサポに話題になり、擦り寄られおもねられつつ文章を書き綴る。まあ若いよね。子供生まれたばっかりであてどもなくゴール裏デビューなんて、分別がない。忍んでバスツアーに行けばいいのにツテを使って車に同乗させてもらうとか…。興味深いとは思うが羨ましいとは思わないな。2014シーズン、マリノス悲劇の年。俊輔が絶望に泣きながらプレーしていたあの日は鹿島に広島戦を見に行って広島の優勝を見届けたみたい。

惜しいのは、歌詞を間違えて覚えるという「Jリーグサポあるある」をもうちょっと上手く使えばよかったんじゃないの、というあたりかな。オレなんて小林悠の歌は今だに「けっこう小林悠、らーららら、ららら、けっこう小林悠、らーららららー」で歌ってるよ。けっこうってなんだよけっこうって。まあ次男の聞き間違えが元になってるけどけっこうのほうが歌いやすい。あとオレじゃないけど昔、鉄のハートの「just going now」を「just fall in love」と誤解して大声で歌ってたとんちきな野郎もいてね…そこで恋に落ちてどうする。

あとレインボーな表紙が全方向に媚びすぎて損をしてると思う。カラーは立ち位置を示すものとして大事でしょ。黒っぽい感じで青と赤を適度に配しつついろんな色の人をデザインしたほうが良かったろうな。