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山椒の実

ミレニアム(永井するみ)

2000年問題で大変だった当時のソフトウェア業界を舞台にした推理小説。

2000年になった日、私はまだ学生だった(2000年の4月に社会人になった)ので大した仕事はしてませんでしたが、バイト先で2000年問題対応のBIOS入れ替えとかの作業をして回った記憶があります。当時の社会人に聞くと「ありゃ大変だったよね」という話を聞きますが。

この小説もまあ当時の技術の話も出てきて、それなりにリアリティがあったんじゃないでしょうか。インドラツールがどうとか、あのへんは怪しさ全開でしたけどね。あれ系の人手でやってる知的作業を自動でやっちゃいます的なものは定期的に出ては消えていきますよね。まあ当時から比べて、ある程度は良くなってますけど、今でもコードは人が書いたり修正してます。論理の部分は現在でもマシンではうまく回らない。いつまで続くのやら…

ただ人が書いたコードの共有と再利用は進んでいて、RubyGemsとかgithubとか非常に便利ですよね。githubがないと何の仕事もできない気がするよ。2000年の頃はsourceforgeか。sourceforgeが出た時は内心「そういうのがビジネスになるのか…?」という思いを持ったものだ。freshmeat.netとかもあったよなー。

全体的には、今考えると非効率的なことをしていました。15年後にはやはりこんにちのプログラマは非効率だったと思うことでしょう。15年前っつったらコンピュータの世界では化石のような扱いですからね。Windows98とかNT4.0とかだから、Pentium IIかIIIくらいの頃か? カセットになってたやつですよね。Linuxは2.2系か。RedHat6とかの頃か。なつかしー。Netscapeがなくなったあたりの時代よね。PCクラスタでBeowulfとか言ってましたよね。SCore(エスコア)とか。MPIは今でも使われてます。PVMはもう消えたかな。

計算機の歴史については、職場の近くにある理科大の近代科学資料館という博物館が秀逸です。計算ヒモからそろばん、計算尺、機械式計算機、電子計算機とつながっていく歴史が分かります。2000年頃のマシンもありますね。iMacとか。そうそう、丸っこいiMacも買ったなぁ…

本作ではオフコンとかメインフレームとか言ってるけど、まあそういうののお守りが大変だったというのが2000年問題だったんだろうな。私が就職した時にはもう新人がメインフレームの仕事をやらされることはなかったと思う。ビジネスはしてて堅実に稼げたみたいだが、明らかに先細りで、残存者利益を食いつないでただけだからね。

本作でも少し描かれた地方拠点との技術格差は今でもそういうのはあるんじゃないかな。手近に聞ける人がいるかいないか、という話ね。

ただ、最後の奥さんからの手紙は蛇足かな。綺麗に終わらせたかったのかもしれないが。