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山椒の実

新堂冬樹「無間地獄」「鬼子」

エロ/グロ/バイオレンスの描写力でいけ好かない登場人物を地獄に落とす話。

立て続けに2作品を読んでみたが、どちらの作品も見事に誰も救われない。すべての登場人物が信じがたいほど呪われる。まあでも文章が良くて描写が凄いのでどうしても引き込まれる。

そしていけ好かない主人公的人物。これが凄くしょうもない奴らなんですよ。背中で語れない男たち。風間令也にしろ、玉城慎二にしろ、ほんと薄っぺらくて気取り屋でいけ好かない。しかし憎めないのですよね。風間はフランスかぶれの小市民で、ウェイターを呼ぶのに「ギャハッソ〜ン」ですからね。それで客から一目置かれたと思い込んで悦に入っているわけです。玉城もカモを引っ掛けて美容製品にカネをつぎ込ませるだけで、別に悪いことはしてないんですよね。1度ならず2度も金貸しに騙されて。自分のルックスやセンスに酔っている描写にしても、あくまで自称ってだけですからね。遠之山になってからでもそんなにひどくない顔なんじゃないかって気がしますよね。

そういう描写が凄く良かった。終盤の展開はムチャクチャだと思うし、バイオレンスな面や、誰もが呪われているような結末は読後感が悪いのだけど、それを補って余りあるこの気取り屋たちの描写。ほんと、生き生きしてる。