述懐

私がこの売り場でスクラッチカードを売りはじめて、もう3年になる。信用が全てのこの業界で、全くの門外漢であるこの私を採用してくれた遠い親戚には今も足を向けて寝られない。その親戚は浜松のほうに住んでいるので、いまだかつて東枕にだけはしたことがない。

最近私は、ゴミ箱に客が捨てたスクラッチカードを集めている。というのもかれこれひと月ほど前、捨てたスクラッチカードが当たっていたことがあり、賞金は全て私のものになったのである。それ以来、捨てられたスクラッチカードの当たり外れをチェックするのが私の日課になっている。

毎日のように売り場でカードを売った帰途、小田急線の新宿から登戸までの間に全てをチェックし終わるようにしている。人の目など気にする必要はないだろう。だいたい、何をやっているか分かるわけがない。なにしろ、スクラッチカードに青ペンでチェック済みの印をつけていくのだが、ほとんど全て、すでに外れているのである。

次に3万円が当たれば何をしようか。5万円なら?

そんなことを考えながら、今日も私はチェックを続ける。次に当たりが出るのはいつになるだろう。

…そんな感じの人を今日、小田急線で見かけた。なんか、外れたスクラッチカードを全部チェックしてんの。あまりに謎な所業に声をかけるわけにもいかず。非常に印象的だったので、少し彼の人生のなんたるかを考えてみたっていう、これはそんな文章でした。

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