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Category: Historical

火桶は聞いている

 炭が、ぱち、と鳴った。

 夜番の詰所は、廊下の角にへばりつくようにある。几帳(きちょう)(すそ)から入る冷えは遠慮を知らず、壁際の火桶(ひおけ)だけが、ここはまだ人の居るところだと赤く言い張っていた。

 乙丸(おとまる)は、その火桶へ両手をかざしたまま言った。

「わしは今日、三度、死にかけた」

 向かいの末成(すえなり)がすぐ食いつく。

「三度とは小さいな。おれなど五度だ。いや六度でもよい」

「勝手に増やすな。六度も死にかけるやつは、もう一度くらい本当に死ぬ」