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山椒の実

なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図 (渡瀬裕哉)

選挙プランナー? っていうのかな、そういう活動をしてきた著者が現代の分断を説明する。米国でも活動してきたらしく、米国の事情にも詳しく触れている。この本は全体的に、選挙中心の考え方でできている。選挙と民主主義が世界を構成するという世界観で書かれているというわけだ。

序盤のつかみが非常に良かった。選挙の基本原理は分断を煽ることだ、と。現状のレギュレーションで成功するためには仕方のないことなのか。それがつける傷は深いぞ。こりゃ罪深い。罪深い必然。民主主義の行き着く先なのだ。あたかもエントロピーが増大するかのように? マジかよ…

成熟と考えられるのか、それともこれも過渡期と考えられるのか、そこまでは判別がつかない。だけど言えるのは、選挙とか民主主義とかを考えた奴の陰謀だなこれは。つまり古代ギリシャのニンジャが世界を支配するために…?

仮想通貨に関しては、Facebookのやつは影も聞かないし中国のやつも含めて過大評価としか思えないが、代わりにコード決済が大きな位置を占めている。ただし構造的には、コード決済は仮想通貨ほどのパワーはないだろうなあ。結びついたらどうなるのかな。

本書で語られるアイデンティティ攻撃への対処法はかなり実用的でよいものだと思った。

あらがえ、与えられた分断に。

しかし、それすらも「あらがうやつ」と「あらがわないやつ」への分断のキーになる。その分断へとリードする言葉の弾丸となるのだ。学者・知識人も罪は重い。やばすぎるんだよなあ。

というわけで、多くの示唆に富む、良い本だったと思いますね。この本を読んだ後、もはや分断に対して無自覚ではいられない人生を送ることになる。誰がきっかけを言い出し、誰が増幅し、誰が分断の果実を受けるのか。ふざけやがって。