今度の総選挙で民主党に投票するか、自民党にするかということに迷いがある。
民主党(dpj.or.jp)のマニフェスト(dpj.or.jp)がネットで公開されている。自民党(jimin.jp)は法律のなんのかんので掲載できないとかって書いてあるが、どちらの法律が正しいのか。
PDF(dpj.or.jp)をダウンロードして印刷してみた。HTMLでも読める。テキスト(no-markup)版も用意してもいいくらい、配色に黒しか使っていないシンプルな作り。これは、有権者に赤ペンで採点してほしいというメッセージに違いない。
というわけで赤ペンを右手に、勇気を左手に持って(なんだそりゃ…っていうかいま左手にあるのは焼酎なんだけど)、公約をチェックしてみた。構成は非常にわかりにくい。『「脱官僚」宣言』を見ると主な公約は7つ。内5つが「約束」、2つを「提言」としている。しかし個別の宣言(マニフェスト)になると、5つになっている。順番も変わったり数が変わったりしていて、読みやすさという点では理解に苦しむ。
とりあえず個別の5つのほうを肴にしようと思う。
まずは「失業のない、つよい経済を再生します(dpj.or.jp)」から。行政が仕事を作るというのと、不安を解消するというのの2本が柱になっている。
1. 失業率を減らす
土木関係の公共事業を「緑のダム」と称する自然保護のための土木工事に転換することで仕事を減らさずに自然を守る。小泉までの自民党の系譜で公共事業を減らしてきたわけだが、それでは失業者が増えてしまうので、公共事業を増やすということである。しかしながら後半では税金のつかい道を見直して支出を減らすとしている。支出を減らして公共事業で雇用を増やすのはムリ。だって、人件費を減らしたら雇える人数は減るでしょ。まあ人件費率を高めるとか、ワークシェアリングのように一人一人の給料と労働時間を大幅に減らして総人数は増やすというならわからないでもない。
民主党としては経済のつまづきを全部政権の経済無策のせいにしたいようだが、私の見るにそれが原因ではなく、無駄な公共事業を見直して支出を減らしたため、税金に群がる土建屋さんを中心に、連鎖的に仕事がなくなり失業していったのである。経済運営それ自体はあまり失敗していない。経営者は人切りによって収益を改善させている。無情ではあるが、競争力を確保するためには必要な措置であった。…と思う。
次に介護や子育て、医療の支援を充実することで生活に安心感を与え、仕事を作る、と。税金を大量に投入するってことだけど、値段は書いてないな。
ローン利子控除。おれには関係ないな。まあでも住宅と自動車は売れてバブル気味にはなるのかもしれないな。
規制を撤廃。基本的には賛成。でも詳細は決まってない。
知財立国。まあどうかなぁ。
2. 銀行改革
中小向けが重点。個人保証の撤廃は賛成だが、政府系金融機関のみか。民間も禁止すればいいんじゃないの。…まあ貸し出し条件が厳しくなって闇金を成長させないという策がなければダメかな。
金融機関の情報公開と大企業向けのなんちゃらについては私には特に意見がない。
3. 税金の使い道を見直す
この節は何がやりたいのか不明。
役人が万能で、効率を上げられるなら民主党の言うやり方は正しい。役人の仕事を増やして役人の仕事を効率化するということなんだけど。でもこれは無理なんだろうと思う。そもそも「脱官僚宣言」っぽくないよね。役人に全ての事務を任すんだから。小泉は民営化して市場原理で勝手に効率化させるという方針だから、小泉のやり方のほうがリスクは大きいが正しい。ただ郵政については3事業を分割して一部のみを民営化させるというオプションもあるのではないかと思う。一括にするから、うちの近所から郵便サービスがなくなるんでは、と思ってしまうし、郵政族もそこを突いてくるのだ。郵政族だって、簡保を守ろうとは言わないよ(たぶん)。
4. なんとか再生プラン
この節の言葉には中身がない。
次。「税金のムダづかいをやめ、公正で透明性のある政治を実現します(dpj.or.jp)」。
1. 税金のつかい道
公共事業の無駄を止めて自然保護事業にすると。まあこの方向転換は賛成か。
道路公団を廃止して高速を無料化。仕事が公務員に移って(公団の職員をみんな公務員にするのかな)料金が税金に名前が変わるだけで、意味がない。毎年2兆円で管理と債務返済ができると。まあ、無料にして増税すれば利用者は増えて有効活用できるかもね。ほとんど「強制利用」に近い話で、ちょっと承服できない気もする。でも大都市部は通行料があるのね。私としては、もうちょっと「変なこと」をしてほしいな。ETCを義務化して、エコカーなら無料にするとか。公害の問題もあるしねぇ。むしろバスを無料化すれば観光客が喜ぶかも。環境税で税で取ってマイナス側に振るよりは税免除でプラス側に振ってほしいかも。
2. 天下り禁止。公務員人件費を削減
まあ、いいんじゃないの。人員を減らすのか、給与を減らすのか。まあ公務員は手当が大量にあるらしいから、額面を減らさなくても1割くらいは簡単に削減できるだろう。
3. 政治側の不正と定数
献金を全面公開。まあ、いいんじゃないの。
1票の格差是正&議員定数を1割削減。賛成。
「自立力」をもった活力に輝く地域を創造します。(dpj.or.jp)
1. 分権革命?
20兆円の補助金のうち18兆円を廃止して5.5兆円を所得税から地方住民税に税源委譲、12兆円を「一括交付金」にする。地方には国の入札改革を手本にしてもらう。…ふーん。まあ確定申告が面倒にならなければいいが。地方に税源委譲というのは小泉さんも言っていた方針だがなかなか進まない。
中央省庁の権限限定。まあ決める、と言ってるだけでどう決めるかは何も書いていない。
2. 中小企業向けの助成
助成金を7倍に増やす。そうですか。
商店街の衰退問題は単に助成金をあげて延命するような問題じゃなくて、街づくりの問題なのだ。住む人がいなければ商店街があってもしょうがない。というわけで団地やビルを作って人を呼ぶというのが解決策なのである。これこそ国ではなく地方自治体に任せるべき件ではないかな。
3. 農業関連予算を改革、直接。
まあいいんじゃないの。農家ってそんなに政治に苦しめられて困ってるのかな(反語)。
4. 郵政改革
民営化はしない。民間参入の障壁を排除するとして、「全国どこでも一律料金」という条件をかかげている。…ってか、これこそが参入の障壁なのではないの。また、郵便局を役所の一部にするみたいなことが書かれている。おいおい。思うに、役所の使いにくさは営業時間の問題であると思う。窓口を9時くらいまで開けてほしいよ。というわけで郵便局じゃムリ。郵便局の仕事を増やして、ただでさえ長い待ち時間をさらに長くするのは勘弁してほしい。
5. 6割のNPOに税制支援
まあ、いいんじゃないのとは思う。ただ、あんまり優遇しすぎると図に乗るよ。寄付の所得税控除を拡大するというのは賛成。…ただ、所得税ってけっこうな量が住民税に委譲されるんだよねぇ。どんどん減っちゃうのかな、所得税。累進課税が死なないかどうかというのが心配だ。
6. 自然保護
「緑のダム」。賛成。
新エネルギー予算倍増。賛成。というか、もっと欲しいくらい。電気自動車などへの助成は今までと変わらず。まあいいんじゃないの。
子どもや高齢者、女性、誰もが安心して働き、暮らせる社会をつくります。(dpj.or.jp)
1. 安心して働ける社会
ルールの確立。具体的でない。
パート均等待遇。けっこう、どうかな。競争力が落ちないかどうかというのが。とりあえず私に意見はない。
失業者の能力開発と10万円/月の手当てを2年間。あまり手厚くするのはよくない。悪用されたり、働く意欲が削がれる。「生活保護」でいいじゃん。
2. 教育
30人学級とか、そういうの。私が思うに、生徒よりも教師の教育と監視を進めるべきである。というわけで言ってることはまあまあだと思うが、ピントがずれていると考えるため、積極的には賛成できない。
幼保一元化。まあ、いいんじゃん? っていうか幼稚園=文部科学省、保育園=厚生労働省という差を初めて知った。そういう違いだったのか…
無利子奨学金の貸与額の引き上げ。けっこう助かると思う。学生がバイトを減らせる。これによって逆に学生以外の就業機会が増えるかもしれないね。
成人年齢と選挙権を18歳に。賛成である。まあ、成人式をどうするのかとか、酒タバコはどうすんのとか、そういう問題もあるけど。
3. 老後
年金制度。税金投入で消費税を上げ、年金の補強する。これはどうかなぁ。消費税を何%にするとかも書いてないし。菅さんは6%とか10%とか言ってたけど、どうなのかな。よくわからんなぁ。とにかく払う額が増えるのは間違いなさそう。
グループホームの増設。いいんじゃん?
4. 個の尊重
差別の解消。いいんだけど、年齢を理由として就職差別を禁止するとか。実際は一定以上の年齢にはマッチしない仕事が多いのは変わらないだろうけどね。
盗聴法、住基ネット法、個人情報保護法を見直す。これを入れたのはメディア向けかな。私としては、検挙率を上げるためには監視カメラとかも活用してほしいよ。今は警察よりも犯罪のほうが恐い。あとメディアをもっと規制してほしい。言論によって処罰されないというのは当然のことだが、個人のプライバシーをどうこうした場合はメディアであるなしにかかわらず処罰してほしい。個人攻撃というのは醜いよ。
テレビ字幕化。100億円の助成。義務づけていいくらい。賛成。というか、ちょうどいいんじゃないの。地上波デジタルにするときに字幕データの送出を義務づければいい。生放送も含めて、全部字幕。あと普通のテレビでもスイッチ一つで字幕のOn/Offができるようにしてほしい。専用の機器をどうこう、というのはケチくさいよね。それからいいかげん放送法を改正してほしい。NHKの受信料を廃止してCM入れるか、税金で運営してくれ。
外国籍の人の希望者を住民票に記載。よくわからないけど現状の不便に甘んじている人がいるようだから、賛成。
国民の命と健康を守るつよい社会を実現します。(dpj.or.jp)
1. 健やかさを保つ生活
早期発見医療へ。まあこれはいい。自己負担軽減。これ、できないから引き上げたんでしょ。とにかく老人の薬代を無料にして薬漬け医療に戻すのだけはやめてほしい。
小児救急センター整備。賛成。小児科のある病院の混乱ぶりを見れば、小児科が足りないのは私でもわかる。医療費負担を減らすとあるが、どうかな。できるのかどうかが不明だ。「健保については財政状況に配慮します」の一言が不気味。このへんがいまいちかな。
カルテ開示・医療費明細書発行の義務化。これは非常に賛成。
「食」の安全。厚労省と農水省に分かれているのを1つにして内閣府の下につける。よさげ。ただ、なんでも中間層を内閣府の下につけちゃうのはダメ。
原子力行政の監視。私には特に意見はない。というかできれば、原子力をやめて欲しい。原子力に依存しすぎてしまったのは、電力会社じゃなくて国の責任だと思う。
2. 犯罪への対処。
警官3万人増員で空交番解消。賛成。交番制度を機能させてほしい。刑務所の増設も必要なのだがそれは入ってないな。
仮釈放のない終身刑の創設。賛成。もう、凶悪犯はみんな名古屋刑務所送りにしてしまえば。
DV防止法。よくわからないけど、まあ賛成。
3. 国連中心主義
自立外交と国連軍への参戦。いいと思うけど、軍事力の強化と専守防衛からの転換が必要になる。けっこう厳しい問題。FTA締結促進は賛成。WTOがダメだからねぇ。安保理常任理事国入りは既定路線。
北朝鮮対策。カネのこととか全然書いてないね。東アジア向けの外交関連はここだけか。ちょっと寂しいな。
イラク対策。どうするのかちゃんと書いてほしい。自衛隊を行かせずに、支援に積極的に取り組むとは、民間人を行かせるということかな。今の状況で行く奴はそんなに多いとは思えん。…ちゅーか、行きたけりゃ民主党がやらなくても行ってる。国連の決議で多国籍軍ができれば参戦する、そうじゃなけりゃ放置。残酷だがそれだけでいい。そう書け。
日米地位協定の改定と米軍基地の整理縮小。賛成。できればいいが。
大使等の民間登用率を2割に。書き方としてはいいのだが、登用した民間大使の評価は難しそうだよ。外務省伏魔殿(死語?)をどうにかするという意欲は買う。
環境外交。よくわからない。
防衛力強化。多国籍軍に入るというのと矛盾しないかというのが気になるね。陸上自衛隊の削減とは両立するのかどうか。
全体の結論としては、大局を見て民主党かな、と思う。二大政党制への移行の魅力は大きい。自民党とか他の政党についても見ていこうと思う。