朝まだき、川霧が田の畦を低く流れ、村はいつもより半刻早く目を覚ました。山の社から牛車が下りてくると聞いたからだ。先頭を歩く長老の樫兵衛のうしろで、荷台のむしろがやけに丸く盛り上がっていた。
触るな。まず寄合だ。
樫兵衛の声は低かったが、村の者はみな足を止めた。むしろがほどかれると、そこには桃があった。桃と呼ぶには大きすぎる、石臼ふたつ分の丸い実だった。薄紅の皮には、川面のような筋がゆらゆらと走っている。
朝まだき、川霧が田の畦を低く流れ、村はいつもより半刻早く目を覚ました。山の社から牛車が下りてくると聞いたからだ。先頭を歩く長老の樫兵衛のうしろで、荷台のむしろがやけに丸く盛り上がっていた。
触るな。まず寄合だ。
樫兵衛の声は低かったが、村の者はみな足を止めた。むしろがほどかれると、そこには桃があった。桃と呼ぶには大きすぎる、石臼ふたつ分の丸い実だった。薄紅の皮には、川面のような筋がゆらゆらと走っている。