アノニム (原田マハ)
ルーブル美術館にはしご車で乗り付けて歴史的な宝石を盗むという、犯罪史に残る事件があったということで、美術品関連の犯罪小説を読むことにした。デモが盛んな頃の香港で、現代アート。
登場人物の描写に関しては、よくある天才の安売り感はあるね。金額の数字も非現実的な値になっているけど、胡散臭さを感じるよな。金持ちや才人を集めてドリームチーム同士の対戦っていう感を出そうとしているのだろうけど、オレは適当に呟けばのぞみが叶うような生活を送ってるやつを偉大だとは判定しないんだ。ファミレスのタブレットで注文しろとは言わないが、飲み頃のコーヒーは自分でいれたほうが味も良いし、良き人生を送れる。
という感じだけども、まあ登場人物の個性をうまく活かしきれたかっていうと、疑問が残るなあ。印象に残らずに終わってしまった影の薄い名前付きの人物がほとんどだったという。だってさあ、人物説明だけはするけど何の活躍もせずに終わっちゃうと、徒労な感じがするでしょ? 設定資料を読まされてるみたいな。そんだけ説明したなら、ちゃんと活躍しろよと。
あと犯罪的には計画して計画通りに実行した、みたいな感じであんまり緻密さはないんだよな。トリックも単純すぎる。全員グルなら何でも盗めますよね、みたいな。体制作りが大変だったと思うけどその体制作り自体は描写がないという。