キーボードを叩く音だけが、部屋の中にある。
カタカタ、カタカタ。萩原麗一は一定のリズムで入力し続ける。医療機器のカタログデータを、決められた書式で、決められたセルに。品番、製品名、寸法、重量。どの欄に何を入れるかは体が覚えていて、目は画面を追いながら指は勝手に動く。誤入力は五年間で一度もしたことがない。それを誇りにしていた時期があったが、今は誰も誇りに思わない。誰も見ていない。
午後三時を回ると、部屋に斜めの光が差し込んできた。隣のマンションの壁面に反射した光が、天井に薄い台形を描く。麗一はその光を一瞬見た。見て、何も考えず、また画面に視線を戻した。