頼光殿が命令を下したのは、丑の刻を過ぎた頃だった。
広間は暗く、松明一本だけが頼光殿の横顔を照らしていた。卓の上には何もなかった。地図も文書も、示されるべき理由も。
「大江山に向かえ。酒呑童子の首を持ち帰れ。」
それだけだった。
なぜ今かも、なぜ自分一人かも、問う間もなかった。問えたとしても、頼光殿はきっとこう答えただろう——頼む相手がお前だからだ。その言葉が金時には問いの答えとして機能するように、この二十年で調整されていた。頼光殿は金時をよく知っている。金時の力だけでなく、金時の構造を、知っている。命令が意味として機能する者だということを、知っている。