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山椒の実

Category: Slum

ふるさとは貧民窟なりき (小板橋二郎)

戦前の板橋にあったスラム街で生まれ育ちルポライターとして大成した著者が、資料を当たりながら少年時代の思い出を記していく。資料に見える辛辣な表現と、著者の記憶とその裏側にあったはずの事実が織り交ぜられていて、その対比も。かなりしっかり読ませる、いい読書体験になった。

スラムのリアルというか。多くの人が貧困に苦しみながらも明るく、それなりの秩序の中で生きて、そして多くの人が死んでいく。優しさエピソードが幸福には全くつながらないんだ。崩壊のところもすごかったな。家主だった義父が白痴の青年を殴り殺したことをきっかけに、数日おきにバタバタと倒れ、全滅していく。