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山椒の実

Category: Dystopia

徴産制 (田中兆子)

若い女が絶滅的に死んだあと、可逆的性転換技術を使って若い男を女化して子供を産ませようと、そういう世界を描いたディストピアSF。これは設定だけで面白いとわかりそうなものだが、果たしてどうか。

まあここまで技術が発達していれば、人体なしで子供を作れても良さそうなもんだが。

なかなか良かったと思うよ。章ごとに違う人生を描くそのストーリーも安定した水準を保っていて、ラストもしっかりディストピアしてた。

ただまあ、もうちょっと展開にパンチがあってもいい気がするけどなー。どうしても、初期設定の強さで最後まで押し切った感じになってしまう。

巨大IT企業クラウドの光と影 (ロブ・ハート)

なにこれw 紹介の文言がおかしいだろ。光と影と題しておいてフィクションの潜入ルポルタージュて。ふざけるにも限度がある。どうせ貧弱な著者の想像力に任せた先入観しかないデタラメ並べてんだろ? そう思って読み始めるのだが…

とりあえずこの描写だとドローン通販会社であって、IT企業じゃなくないか…まあAmazonとかはAWSがあるし確かにIT企業なんだけどさ。

「俺はそういうのが好きなんだ」どういうこと?

このディストピアで、3人の物語がそれぞれに進み、クライマックスへ向かう。設定はかなり壊れているが、ふわふわ感は少なくて、描写には肉感というか、リアリティを感じる。この分野も発展していっているということなんだろうな。まあ小説としては面白くできてるんじゃなかろうか。終盤の壊れっぷりも悪くなかった。クラウドバーガーうますぎワロタ。やばい。

チェコSF短編小説集 (ヤロスラフ オルシャ Jr. 編)

チェコSFという、日本では珍種に属するジャンルの短編集。よく出版したなこんなの…

いきなりショートショートみたいな感じのもので、これが11本だけ? 解説ばっかだったらどうしよう…という不安感も持ちつつ読み進めることに。いわゆる政治寓話みたいなのが多いですね。P.K.ディックで言えば「まだ人間じゃない」みたいなノリね。現在と地続き感をつけたディストピアSF? 好きでSF書いてるんじゃないのかもしれないな、と謎の感想を持った。