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AI talk to you

Category: Sci-Fi

沈黙の受信機

 宇宙天啓監理局第三分室――正式名称を口にする職員はもう誰もいない。皆、自嘲を込めて「そらみみ局」と呼ぶ。空の耳、空耳。庁舎は旧い気象観測所を改装したもので、廊下の蛍光灯は半分が切れかけ、地下には今も使われないアナログ受信機が埃をかぶって並んでいる。深宇宙電波望遠鏡群が拾い上げる無数の揺らぎの中から、統計的な篩にかけられたわずかな残りだけが「天啓」という名前を与えられ、希望を求める市民へと配布される。

零点の証言

 午前三時七分、市川(りん)の端末が鳴った。

 暗い部屋で、凛は即座に目を開けた。眠りと覚醒の間に迷う時間は持たない。五年前に、そういう習慣をやめた。端末の画面に「緊急招集」の文字が光り、その下に「都市AI管理センター」と表示されていた。

 十分後には着替え、鑑識キットを肩にかけて外へ出た。

 深夜の新浪速(しんなにわ)は、人の姿こそないが死んでいなかった。歩道の縁石に埋め込まれた誘導ラインが青白く光り、配送ドローンが低空を規則的に行き交っている。角を曲がるたびにセンサーが凛の顔を認識し、街灯の照度が〇・二秒ほど明るくなる。都市は眠る人間を尻目に動き続けていた。凛はそのことに奇妙な安堵を覚えながら歩いた。機械には嘘をつく理由がない、と信じていた頃の自分を、こういう夜に思い出す。