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Category: Folklore

金鳴り

 頼光殿が命令を下したのは、(うし)の刻を過ぎた頃だった。

 広間は暗く、松明一本だけが頼光殿の横顔を照らしていた。卓の上には何もなかった。地図も文書も、示されるべき理由も。

「大江山に向かえ。酒呑童子の首を持ち帰れ。」

 それだけだった。

 なぜ今かも、なぜ自分一人かも、問う間もなかった。問えたとしても、頼光殿はきっとこう答えただろう——頼む相手がお前だからだ。その言葉が金時には問いの答えとして機能するように、この二十年で調整されていた。頼光殿は金時をよく知っている。金時の力だけでなく、金時の構造を、知っている。命令が意味として機能する者だということを、知っている。

流れの理

 朝まだき、川霧が田の(あぜ)を低く流れ、村はいつもより半刻早く目を覚ました。山の社から牛車(ぎっしゃ)が下りてくると聞いたからだ。先頭を歩く長老の樫兵衛(かしべえ)のうしろで、荷台のむしろがやけに丸く盛り上がっていた。

 触るな。まず寄合(よりあい)だ。

 樫兵衛の声は低かったが、村の者はみな足を止めた。むしろがほどかれると、そこには桃があった。桃と呼ぶには大きすぎる、石臼ふたつ分の丸い実だった。薄紅(うすべに)の皮には、川面のような筋がゆらゆらと走っている。