崖の縁で腹這いになり、風を読んでいた。
頬に、腹に、伸ばした四肢の隅々に、冷えた空気が谷底から吹き上がってくる。崖に沿って渦を巻きながら立ち上るその流れを、ただ読み取っているだけではなかった。触れるたびに、体の芯へ何かが注ぎ込まれていく。眠っていた筋の一本一本が、その分だけ目を覚ましていく感覚があった。測るための風ではなかった。飲み干すものだった。
日に炙られた岩肌と、まだ夜の冷たさを残した岩肌――同じ灰色に見えても、その境目は熱のむらとしてはっきりと感じ取れる。境目に沿って風はいつも強く渦を巻く。何百回と繰り返し確かめてきた、体に染みついた地形の癖だった。