Skip to main content

山椒の実

Category: USA

ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ (アンジー・トーマス)

高校生? か何かの課題図書だったのかな。図書館とか本屋に並んでいたのを見て、しばらく気になっていた。大人が改まって読むのは気恥ずかしさを感じたけど、侮れないんだよなという思いもあり、どうしても気になって読んでみたら…

なかなか激しい話だった。長いけど、かなりしっかりじっくり読ませる。名作だと思ったよ。まあストーリーの移り変わりに関しては若者向けっぽさはあるので、我々オッサンが読むとどうしても、もうちょっと若い頃に読みたかったな…という感想になってしまう。

11の国のアメリカ史 分断と相克の400年 (コリン・ウッダード)

アメリカの建国神話の新説? 新説なのかどうかはよくわからないが…割と楽しく(?)読めた。

高校生の頃に(子供向けの)アメリカの歴史の本を読むという英語の授業があった。自分にとっては割と難しかったんだけど、そこで大体どういう建国のされ方をしたかというのを知った。だいたいね。なぜかピンポイントで「プエブロ」という単語を覚えているのはそのせいだ。逆に世界史の一部でアメリカ史を習った記憶はないんだよね。まー私立の付属校だったから、カリキュラムが標準からは外れてたみたいで。

私のように黒い夜 (J.H.グリフィン)

とりあえず、凄い本だった。こういう本が読みたかったんだよ俺は。そういう、冒険でもあり正義でもあり歴史でもあり…まさにこれぞ名著。生きててよかった。

第二次世界大戦でゲシュタポのコロスリストに載り、日本軍とも戦った白人の英雄が失明し、小説家となり、視力を取り戻したのちにやったこととは…薬と顔料で皮膚の色を変え、黒人として生活を体験して日記を公開するという…行き先は、人種差別が激しかったころの、その中でも最も苛烈な米国南部。何が起きたのか。のっけから興味津々よ。記述が生々しい。現代にも通じまくる。すげーわこいつ。マジで。私はなぜ今までこの本を知らなかったのか。

アメリカを動かす『ホワイト・ワーキング・クラス』という人々 世界に吹き荒れるポピュリズムを支える“真・中間層”の実体 (ジョーン・C・ウィリアムズ)

アメリカの民主党の支持者が、トランプを勝利に導いた支持層を分析した書。かなり正確だと思わせる分析だ。合点がいくし、日本もあるいはこの路線が主流派になる日がありうるかも、と思わせるものがある。最初はこれアメリカ特有のものなのかなという感じもしたけど、日本にだって応用可能な話だと思ったんだ。

ホワイト・ワーキング・クラスというのはアメリカの白人労働者層で、今までは「中間層」つまり富裕層でも貧困層でもないという部分に一括りにされていた人々。それをエリート側(専門職)とそうじゃない側(ワーキング・クラス)に分類し、ワーキング・クラスの苦悩に対応しているのがトランプだった、と。ワーキング・クラスが欲しいのは援助ではなく、安定した仕事。それを勤勉にこなす人生を誇りとしている。

13th 憲法修正第13条

netflix産の長編イメージビデオ? アメリカの黒人の苦難に関する語り。これはビデオではなくて本で読むべき内容ではあるが、最近はこういう難しい内容も動画で見る需要があるんだろうね。映像自体の持つ力も大きい。私もYouTubeで無料公開だったので見たクチ。いま話題のやつですね。

合衆国憲法の修正13条。南北戦争の後、黒人を含めた人権に関する項目になったが、犯罪者を除くという項目が悪用される。結果、世界の囚人の4割をアメリカが占めることになった。そして囚人は黒人の率が多い。マイナスイメージの流布もあって…

そしてぼくは銃口を向けた (飯塚 真紀子)

アメリカの病んだスクールカースト下位者が銃火器武装し、学校で乱射する。ハイスクールシューティング。それを丹念に取材してまとめた本。

中にはまさに中二病としか思えない奴もいたり、クソ女に騙されて二股相手を殺したという趣の異なる事件もあり。それぞれ、いくつかの条件が重なって、学校で発砲するに及んだ。

平時に住人が銃を持てるのが悪い、という結論は簡単に出せていると思うのだが。まーアメリカも荒野部が多いからね、土地の広さに対して保安官が足りてないという事情もあるだろう。しかし都市部でも荒野と同じ制度でやることに合理性があるのかな? ないよねバーカ、と思ってしまう。どうしても。

タイガー・マザー (エイミー・チュア)

中国式の凄まじいスーパースパルタ式子育て闘争を記した本。この母親のエナジーが相当すごいのは分かるけど、周りはたまったもんじゃないな。母親と子供2人の3人はいいとして、果たしてこれで夫は幸せなのかな? 最初のワンちゃんへの接し方は笑えたが。

2人にやらせたのはクラシックのピアノとバイオリン。まあ勉強もかなり良く出来るところまでやったみたいだけど。しかしクラシックか。才能の無駄遣いと言っては失礼なんだろうけど、実際のところ、私は現代のクラシックをあまり評価していないので。だって歴史をなぞり返すだけで人生の全てが終わってしまう人がほとんど…という分野でしょ、という認識。価値がないとは言わないよ。それなりに優れているし学ぶものはあるだろうとは思うけど、人生は短い。学ぶだけで終わるってのは厳しい。

われらの子ども 米国における機会格差の拡大 (ロバート・D・パットナム)

副題の通り、米国の機会格差がどのように拡大しているのかということを記した本。日本は良きにつけ悪しきにつけアメリカの後を追っている面があるので、こういう本を参考にしてどういう社会にすべきか、すべきでないかを考えたりするのも悪くないんじゃないか。

家庭環境、教育環境、コミュニティ…色々な要素について深く掘り下げながら考察を加えている。子どもというのはやはり周囲の大人の影響をどうしても強く受けるわけで、どういう大人と接して過ごすかというのは人生にとって大きい。そこは世界共通のものだろうね。そこが一つの大きなチャンスの格差になりうる。そうやって接する隣人が麻薬の売人か大学教授か…その違いは大きいだろう?

困難な選択 上 (ヒラリー・クリントン)

活動家、弁護士、知事夫人、大統領夫人(ファーストレディ)、上院議員、国務長官(日本でいう外務大臣)、そして今度はもうじき大統領になろうかというあの人の、国務長官時代のことについて述べた本。民主党の予備選でオバマ現大統領に負けて、国務長官への就任を依頼されそれを受諾してからの激闘の日々…なんだけど。

はっきり言うとつまらない本だった。この人にどの程度の意識があってこの本を書いたのか疑ってしまう。経歴からすると「ガリア戦記」を書いたカエサルと比較されるような立場ですよこの著者。真面目にやれよ。いや、真面目にやりすぎなんだよ。眠くなるよ。

孤児列車(クリスティナ・ベイカー・クライン)

その昔、アメリカで孤児を集めて里親を探しに走った孤児列車というものがあったらしい。確かに慈善事業なんだけど、家畜の品評会のようなものを受けさせられる子供には残酷でもある。その歴史的事実を元に記された小説。売れて評判が良いらしいということから、恐らくハッピーエンドになってみんな救われるんだろうなと思って読むことにした。やはりバッドエンドで終わる後味の悪い小説は読みたくないもので。

その地獄から地獄へと向かう旅路。受け入れる里親は里親としての責務を果たさず、単に無償の労働力として扱い、孤児の人生をすり減らしていく。そして行き着く先で出会った救い。人生と人生の交錯。いろいろと考えさせられた。ヘビーではあるが割と安心して読めるところもいい。