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山椒の実

Category: Teens

ただ、それだけでよかったんです (松村涼哉)

スクールカーストへの革命? を実行した中2少年の物語。

田舎の中学校みたいなクローズドサークルで誰がいじめたのいじめてないのって、そういう話だった。いじめを苦にした自殺が発生し、そこから謎解きが始まる。テーマが限定されすぎていた気がするなあ。読んでる間は、興味深く読めたと思うよ。読後感が何か残るかっていうと、アレだけども。

まあ設定が極端なんだよね。それで、辻褄が合うように物語を設計して。そんな感じの作業が浮かんでくるような感覚があった。読んでいての、勝手な感想なんだけれども。

野ブタ。をプロデュース (白岩玄)

読後感がなかなかすごかったな。

高校生の物語。メタ視点というか、そんな視点を持つ主人公の独白で進む。最初はちょっと不安に思う滑り出しだったが、だんだん世界に引き込まれていく。TVドラマになるのも頷けるいい出来だった。ドラマは見てないから出来のほどはわからんが、救済と破滅のコントラスト。

自分のことはケアしないし、この自己が固まっていない儚さが10代ってやつなんだよな。そしてこの治安の悪さが…どこだよこれ? っていう。首都圏っぽい描写はあったけど、コンビニ前でボコられたり駅で殴り合ったり、メンチ切るだけで喧嘩売ってくるやつを適当にその場で調達してきたり、しないよね。

卒業のための犯罪プラン (浅瀬明)

いやー面白かったね。大学を舞台にしたことで半閉鎖系の世界を作れる。教授という少し浅ましい権威があり、実家があり、先輩後輩があり、他学部/学科があり…それを利用して作った仮想通貨のポイント経済圏で行われるビジネス。ありそうな通り名。それぞれ、魅力的な人物設計。

こういうのが読みたかったんだよな。そう思った。犯罪プランと言いつつ、犯罪らしい犯罪ではないんだよな。そこも良かった。なんせ学生だしね。

最初の章のフックもいいし、最後の結末も良くて読後感も良い。というわけで全体的にドキドキさせつつもかなり綺麗な出来に仕上がっている。結局これ最初のプラン通りに行ってもハッピーな結末じゃないわけだしね。2年で卒業して働いたところでその先にハッピーはない。

こうして彼は屋上を燃やすことにした (カミツキレイニー)

ティーンズ向けの本をオッサンが読む。共感できる可能性はいかに? あのオズがベースになっているということで、読んだわけだが。

まあ本家でMoM級の活躍を見せたカカシは派手さはないものの、要所を締めて物語を進めた。今作のMoMはライオンだね。ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンだー! ブリキは木こり要素が少なくて物足りない。最後は刃物を出して木こりとしての誇りを取り戻したのは良かった。ヘタレのオズの出番をなくしたのは著者の英断とも言える。出てきたところで、って感じだもんなアイツ。

南西の風やや強く (吉野万理子)

鎌倉の青少年の小説。ふむふむ。こういうのに感動する年齢を過ぎてしまったのが惜しい。楽しめたけどね。様々な主観が入り乱れながら、成長して見えるものが増えていく様子がいい味を出している。

…と思ったけど、読んだ後で寝る前に色々考えてしまったから、感動したってことなんだろうな。いろんなものを諦めることが成長ではないんだ、と思ったよ。大人側視点だが。成長ってのはもっとこう、アレなんだ。つまりさ。

つまり、成長っていうのは、洗濯物を出すときにポケットを空にすることなんだよ。

SPEED (金城一紀)

The Zombies Seriesと銘打ってるから、こりゃホラーかスプラッターか、と読み始めたところ。実際は疾走感のある青少年のアレで、思いがけなく爽やかな読後感だった。なんでズンビーニンジャ出てこないの?

主人公の印象的なシーンは映像化を念頭に置いたものか。どうしたって、映えるだろうねえ。文章だけですでに神々しいものがある。

しかしこれ、地名的には舞台のモデルは私の母校の可能性があるな。学生の当時は学園祭にはあまり参加しなかったが、一応は格闘系に分類される運動部だったから、警備側での参加というつもりで読むシーンもあった。まあボコされる側になるわけだが。

優等生は探偵に向かない (ホリー・ジャクソン)

ピップの話の続き。連続性には苦心していたけど、あんまりそこはいいんじゃないかな、と思ったな。

900ポンド返すとこまでが結末だと思ったが、そこは省略された。今のレートなら日本円で16万てとこか。そんなもんか。高校生でも、このくらいのネット上のスター選手ならスポンサー案でなんとかなる範囲だろう。

そしてこの後味の悪さよね。現代社会の闇か。関わった人のほとんどが不幸になる。前作もそうだったっけ。作者、ずいぶんやらかしたな~と思ってしまったくらい。推理小説ってどうしてもそうなるけど、ハッピーエンドを志向しても、いいんじゃないかなあと思った。特にこういう青少年向けのやつはさ。

自由研究には向かない殺人 (ホリー・ジャクソン)

女子高生探偵が颯爽と殺人事件を解決だ。と書くとふざけた内容だと思ってしまうのだけど、真面目に若者向けミステリだった。しっかり書かれていて、かなり面白かった。若い頃に読みたかったな。

色々と悲しいことが起きるのはちょっときつい部分もあるな。犬が死ぬのは受け入れられない。死ななくても物語は成立したはずだ。

犬がいた季節 (伊吹有喜)

捨て犬を飼って代々世話をしてきた高校生たちを描いた、連作青春小説。あんまりこういうのは好みじゃないんだよねー、と思いながらも最後まで読んでしまった。読んだ挙句、「たまにはこういうのもいいかも」なんて思ってしまったりして。

自分は男子校で陰キャだったから、あんましこういう青春は送ってこなかったなー。