Skip to main content

山椒の実

Category: Sports

三流 (長嶋一茂)

言わずと知れた長嶋茂雄、その人の息子である一茂へのインタビューを本にしたもの。こういうのの著者を一茂の名前にしてしまうのはちょっとどうかと思うよ。まあスポーツ選手の本は多くがそうなんだけどね。

で、一茂だ。親があの人で、恵まれた体格と筋力。イージーモード設定の人生なんだけど、彼は親父を目指してしまった。本人がいみじくも言うように、父親のようになりたい、という平凡な夢はまるで太陽に挑むようなものだったワケで、これは流石にハードモードでしょう。どんな神がかった素質があったところで、長嶋茂雄を超えられるなんてことは…

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男 (木村 元彦)

Jリーグにいるじゃないですか、広島系の優秀な人物たちが。川崎(フロンターレ)が最近までお世話になっていた風間さんとかもそう。

この、東京圏でも大阪圏でもなく、広島。割と多いんです。しかし、なぜ広島なのか? そのルーツとなった人物の伝記。著者があの木村元彦だけあって読み応えも満点で、なおかつ素直に読める。オシム本、我那覇本に引き続いてこれとは…ベストスポーツノンフィクション率が最も高い著者だね。少なくともサッカー系ではぶっちぎりだろう。

期待はずれのドラフト1位 逆境からのそれぞれのリベンジ (元永 知宏)

プロ野球のドラフト1位で大きな期待を受けた選手で、その大きな期待に応えられなかった、その後をレポートする。

まず思うのは、ドラ1ってそこまで期待値が高いものなの? という感想。この本で描かれている選手たちはそれなりに1軍での出場もあり、移籍して活躍したり、プロとしてまあまあ悪くない成績を収めていると思う。このレベルで期待外れと言ってしまうのはちょっと違和感を感じた。誰でも知ってる、桑田だの松坂だのダルビッシュだのは特別だとしても、ドラ1なんて毎年12人いるんだぜ。橋にも棒にもかからなくてあっさり解雇なんて奴もいただろ?

スタジアムの宙にしあわせの歌が響く街: スポーツでこの国を変えるために (天野 春果)

川崎のプロモーションの中核を担う天野さんがノーベル文学賞を狙ったこの一冊。「スタ宙」の略称が定着しつつある? まあノーベル賞にはちょっと遠いかな。でも読み応えのある一冊に仕上がっている。フロンターレサポの多くが知っている顔。誰もが一度は見たことがあるんじゃないかな。

以前は欠かさず通っていた等々力やアウェイにもなかなか皆勤賞とは行かなくなってきたし、趣向を凝らした企画を見て回ることも難しくなっているが、今でも川崎の試合にはできる範囲で駆けつけるようにしている。そんなこともあり、スポーツイベントには割と行っている方だと思うけど、川崎の試合って相当頑張ったなと思える本格的な企画も多いんだよね。その裏側を垣間見ることができる。こりゃ苦労してるわ。スポーツ屋、あるいは企画屋には必読書になるでしょう。思ったよりも低予算でやってんだな、という感想も。そこはこだわっているらしいが。

神様のリング (林 壮一)

亀田昭雄とアーロン・プライアー、2人のボクサーの人生と再会を描く。すごく良い本だった。亀田昭雄は身体的にも恵まれた天才ボクサーだったが努力せず、マッチメークがクソだったこともあってやる気を失っていく。弱い奴には適当にやっても勝ててしまうし、弱い奴としか対戦できないからどんどん努力しなくなって泥沼にはまっていくパターン。天才ゆえに練習しなくても勝ってしまうんだ。そして世界ランキング1位、指名挑戦者として初めて挑んだチャンピオンが稀代のボクサー、歴代パウンド・フォー・パウンドの上位として議論されることになるアーロン・プライアーだった。両者、情報がなかったり準備期間が乏しい中で対戦し、相手の意外な強さに驚き、驚きつつ拳を交えて。

外道クライマー (宮城公博)

沢ヤの生態を描く。ワイルドですね。山男のうちで沢登りに魅せられた人種というのは普通とは違った奴らという話。普通は山を目指すところ、沢を目指すわけだ。何度も死にそうになりながら、時にはダラダラしつつ遡行を続ける。そのロマンは伝わってきました。単純に言えば、面白かった。こないだ那智の滝を登って逮捕されて大いに話題になったのもこいつら。やるなぁ(尊敬の念)。

私はアウトドア派ではないこともあって、ゴルジュという単語は初めて聞いた。そこに唐突にストロングスタイルという聞き慣れた言葉が合わさったりする。

桐島、部活やめるってよ (朝井リョウ)

途中で読むのやめようかと思ったんだけど、結局最後まで読んだ。オッサンには辛いんだよこういうのは。よく書けてるだけにね。映画のほうもかなり話題になっていたけど、なるほどと思わせる。

まあ人名が多くて覚えきれないのは、それはそれで。でも凄く良く書けてるんだよねこれ。高校生の内容のなさとか、内容ってやつへのあこがれみたいなものとか。私は男子校で病気をしつつも最後まで部活はやりましたけど…おまけに不本意なことに大学に入っても同じ競技を続けてしまった…それも不真面目に!

サポーターをめぐる冒険 Jリーグを初観戦した結果、思わぬことになった (中村 慎太郎)

作家志望の中途半端な青年がFC東京というどうでも良いJリーグクラブのサポになるまでを描いた本。文章はあまり上手くないけど、伝わってはくる。まあ私は現場を知ってるから言いたいことは分かるというね。ただ知らない人にこれが伝わるのかどうか、それはわからないな。東大の大学院まで出た文筆家にはFC東京はちょうどいいクラブだと思うよ。近いし、適度に強く、そして強すぎない。俺たちと同じ、マゾ体質? まあ、クラブ選びは成功してると思った。

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (矢野大輔)

日本代表監督・ザッケローニの通訳を務めた矢野さんの日記を書籍化したもの。良い本だった。長谷部への言葉とかは泣けるね。サッカーの監督ってのはこう、情熱的なものであるべきなんだ。

まず、この本は誰のことも悪く書いてない。そのへんの人柄があります。選手やスタッフとの距離感も凄く良く書けていると思う。そして監督の情熱。名監督ってのはこういうことなんだよね。本気なんですよ。チャレンジとしてはワールドカップのグループリーグ1分2敗での敗退。確かにひとつ前の南アフリカと比べて成功とは言えないんだけど、いろんなものを残したよね。代表が前に進むに当たって大きな4年間ではあったろう。

延長50回の絆 中京vs崇徳 球史に刻まれた死闘の全貌 (中 大輔)

高校軟式野球で早くも伝説となっている2014年の準決勝、延長50回までやった試合とそれにまつわる何やかやを描いたノンフィクション。高校野球で軟式というのがまあちょっとマイナー感がありますが、まあどんなマイナーなスポーツでもそうなんだけど、トップの高校は相当真剣に取り組んでいるものです。

この本はまず「延長50回」という言葉の神秘さですよね。次に全貌を知っていくとこれどうなのよ、となる。私としては、そこで野球人生が終わるんであれば最後までやったほうがいいと思うけど、まあいろいろしっくりこないところはあります。