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山椒の実

Category: SF

チェコSF短編小説集 (ヤロスラフ オルシャ Jr. 編)

チェコSFという、日本では珍種に属するジャンルの短編集。よく出版したなこんなの…

いきなりショートショートみたいな感じのもので、これが11本だけ? 解説ばっかだったらどうしよう…という不安感も持ちつつ読み進めることに。いわゆる政治寓話みたいなのが多いですね。P.K.ディックで言えば「まだ人間じゃない」みたいなノリね。現在と地続き感をつけたディストピアSF? 好きでSF書いてるんじゃないのかもしれないな、と謎の感想を持った。

諸葛孔明対卑弥呼 (町井登志夫)

例の「爆撃聖徳太子」の人の出世作(?)。同時代人が戦う。日本人にとっては夢の対決。躍動感がすごい。SF要素が強いかな。SF的な考証がなかなか楽しい。なるほどー、そういう解釈ならありうるなー! みたいな。

というわけで、かなりスペクタクルに楽しめた本だった。こういう趣の物語って、いろいろあるよね。源義経=ジンギスカン説とかさ。そういや長嶋茂雄=源義経=ジンギスカンだったという時代考証放棄の凄いやつも、若い頃に読んだことがあったなー。歴史SFはこういうのだから。

われらはレギオン (デニス・E・テイラー)

スタートレックのファンが宇宙を駆ける機械人(フォン・ノイマン探査機)になって増殖したらどうなるか? それがこの三部作のボブだ。

短い文章で各々の活躍を表現していく。凶悪な地球由来のレプリカントとの戦い、地球人の生き残りとのやり合い、異星人との出会い、アザーズとの決戦…息をつかせぬテンポでさまざまな物語が続いた。詰め込みがすごいね。ともあれ、楽しめたよ。

ただ私はスタートレックの知識が皆無なんで、その点は残念な読者ではあったなあ。

流れよわが涙、と孔明は言った (三方行成)

なんて言うのかな、SFというジャンルでいいんだろうか。SFベースの、ふざけた文章。人気あるんだろうか。

短編集だけど、この中では『闇』が良かったかな。まあ謎という謎が何も解き明かされずに雰囲気だけで終わるんだけど。ただまあ、この路線で長続きすることはないような気も…軽い気持ちでサクッと文章を読みたい時にはいいかもしれない。

余談になってしまうがタイトルの元ネタはディックの小説で、私は若かりし頃P.K.ディックが好きだった。ディックの小説に出てきたフレーズを長めのパスフレーズとして使っていた時期もある。そこでディックがよく扱ったテーマがベースにあるのかも、と思ってこの本を読み始めたわけだが、全くそんなことはなかった。

アルテミス (アンディ・ウィアー)

あの名作『火星の人』のアンディウィアーの第二作。それだけで読まずにはいられない。出来はどうか。

月面基地観光都市での大立ち回り劇…という表現が適当だろうか? 映像化を意識しすぎかなーと思った。説明が多いのも気になった。まあ説明は必要だよ? だけど、分量が。あとは現実感が少ないかな。

最後あの状況で誰も死なないなんてことがあるんだろうか? 子供や病気持ちだっているだろうし。

ワイルドサイド (スティーブン・グールド)

ゲートの向こうに、人類の発生しなかった別の地球が広がり、少年たちの冒険が始まる。

いやー著者の名前から、あのワンダフルライフのグールドだと思って図書館で借りてみたんだよね。途中まで読んで生物相の話に近いものがあったりしたんで、こういうのも書いてたのかーとも思いつつ、でも少年少女向けの本だし…と調べてみたら別人だった。普通に読めたから、まあいいや。

ちょっと全体の構成がわかりづらいところはあった。一体何が目的なの…というね。40も半ばを過ぎたオッサンが読むような話でもなかった気がするけど、暇な夏休みの読書としては、これでいいかと。

星系出雲の兵站 (林譲治)

ハードなSF。人類は地球とは異なる複数の星系にまたがる存在になっていたところ、敵対的な異星人が…の、第1部(4巻セット)。なかなか読ませる。最初はあまり期待していなかったが、割と夢中で読むことになった。第2部も読みたいねえ。

息詰まる展開、相手への理解の進め方、勝利と敗北、エピローグの後味。いやーそれにしても1巻のエピローグはすごかったなー。

しかしこれ、宇宙戦と考えると移動も生産も補給も、スピード感が早すぎるよね。現実的には。

紙の動物園 (ケン・リュウ)

教育とかの話で辻褄が…というのが気になってしまう。SFなんですけどね。表題作に関しては、あんな立派な文章を書ける人が貧農で一族全滅した生い立ちで、長年母国語を日常で使う環境にない…というのは不自然に過ぎる。手紙オチのルートが間違いの元? それでも、しっかり読ませるのは凄いが。折り紙のメカニズムの説明があるとよりSFになると思った。でもそれすると純粋な物語としては蛇足になるか。悩ましいところ?

短編集だけど共通するのは、極東アジアなオリエンタルな世界で、現実とは異なる歴史を紡いだ上での寓話…といったところか。莊子の頃からの伝統だからな。諷して曰く…年季が違う。莊子は割と特徴的な言葉遣いで、昔読んだときは印象的だったなあ。思い出すけど、残ってないな。読書体験の蓄積とはそんな程度だ。

レームダックの村 (神林長平)

世界が滅亡に向かう。その時、日本のムラでは…

この著者らしい、長台詞の思考が現実になっていくやつね。割とクセになる。ちょっと無理があるんじゃないか、という感想を塗り潰していく長い台詞と展開。読者は徐々に世界設定を捉えながら、どれがハッタリでどういう思惑で…と考えながら読み進めることになる。

昔はただ好きってだったんだけど、この年齢になって読むとこれ、著者はかなり大変な作業をしてるんだろうなと想像してしまう。動きは少ないが目まぐるしく変わる状況と登場人物それぞれの思惑、無駄のない長台詞と思考の応酬…