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山椒の実

Category: SF

ワイルドサイド (スティーブン・グールド)

ゲートの向こうに、人類の発生しなかった別の地球が広がり、少年たちの冒険が始まる。

いやー著者の名前から、あのワンダフルライフのグールドだと思って図書館で借りてみたんだよね。途中まで読んで生物相の話に近いものがあったりしたんで、こういうのも書いてたのかーとも思いつつ、でも少年少女向けの本だし…と調べてみたら別人だった。普通に読めたから、まあいいや。

ちょっと全体の構成がわかりづらいところはあった。一体何が目的なの…というね。40も半ばを過ぎたオッサンが読むような話でもなかった気がするけど、暇な夏休みの読書としては、これでいいかと。

星系出雲の兵站 (林譲治)

ハードなSF。人類は地球とは異なる複数の星系にまたがる存在になっていたところ、敵対的な異星人が…の、第1部(4巻セット)。なかなか読ませる。最初はあまり期待していなかったが、割と夢中で読むことになった。第2部も読みたいねえ。

息詰まる展開、相手への理解の進め方、勝利と敗北、エピローグの後味。いやーそれにしても1巻のエピローグはすごかったなー。

しかしこれ、宇宙戦と考えると移動も生産も補給も、スピード感が早すぎるよね。現実的には。

紙の動物園 (ケン・リュウ)

教育とかの話で辻褄が…というのが気になってしまう。SFなんですけどね。表題作に関しては、あんな立派な文章を書ける人が貧農で一族全滅した生い立ちで、長年母国語を日常で使う環境にない…というのは不自然に過ぎる。手紙オチのルートが間違いの元? それでも、しっかり読ませるのは凄いが。折り紙のメカニズムの説明があるとよりSFになると思った。でもそれすると純粋な物語としては蛇足になるか。悩ましいところ?

短編集だけど共通するのは、極東アジアなオリエンタルな世界で、現実とは異なる歴史を紡いだ上での寓話…といったところか。莊子の頃からの伝統だからな。諷して曰く…年季が違う。莊子は割と特徴的な言葉遣いで、昔読んだときは印象的だったなあ。思い出すけど、残ってないな。読書体験の蓄積とはそんな程度だ。

レームダックの村 (神林長平)

世界が滅亡に向かう。その時、日本のムラでは…

この著者らしい、長台詞の思考が現実になっていくやつね。割とクセになる。ちょっと無理があるんじゃないか、という感想を塗り潰していく長い台詞と展開。読者は徐々に世界設定を捉えながら、どれがハッタリでどういう思惑で…と考えながら読み進めることになる。

昔はただ好きってだったんだけど、この年齢になって読むとこれ、著者はかなり大変な作業をしてるんだろうなと想像してしまう。動きは少ないが目まぐるしく変わる状況と登場人物それぞれの思惑、無駄のない長台詞と思考の応酬…

月の満ち欠け (佐藤正午)

オカルト話に終始した…という見方もあるんだろうが、私は楽しめたよ。

セレクテッド・リザレクション現象? まー書く人が書けばそれはニンジャソウルの憑依となるし、佐藤正午が書けばこの小説のようになる。個性! いずれも達人ではあるが。

推理小説でもないのに人が死にすぎな点はどうだろう。しかも殺人が一件もなく、不注意が過ぎるのでは。子供じゃない。千年の時を生きるヤツにしてはリスク管理がなっとらんよ。

あとは…登場人物の名前で、北斗の拳のミスミの爺さんを思わせる人物がいたなと。そのミスミの爺さんも、出生の話からしてソウルの憑依のかのうせいが…のうりょくがはつげんしてないだけなのかも!? まあミスミの爺さんを憑依者にしなかったのは、それをしないことでいわゆる女の情念的な感じを出すという狙いがあるのかもしれないねえ。

失われた世界 (コナン・ドイル)

言わずと知れたシャーロックホームズのコナン・ドイルがSF小説を書いていて、しかも最近翻訳され直して読みやすくなっていた。これは読むしかない。ジュラシック・パークの原作これだったのかー。

100年前に書かれていたとは思えないですよねこれ。すごいです。まあ今の知見からすると細部のリアリティはもう少しイケるような気もするけど、今読んでも楽しめるよね。スイスイグイグイ読めた。流石に文章は上手い。当時の時事系の話題も多いが、脚注がしっかり書かれているところなんかは非常に親切。翻訳も上手いんじゃないかなこれ。

宇宙のランデブー (A.C.クラーク)

名作SF。古典だけどかなりの迫力があり、今でも通用するだろう。あと100年程度で他の惑星に大量の人間が住んでいるとは思えないけど、時代設定は割とどうでもいいので。

実際に恒星間航行することを考えると、そこには人工生物を載せる以外には考えられないと思うんだよね。今の人間のような生物を乗せていくにはエネルギー消費や重量も問題になる。というか惑星間ですらそう思う。いわゆる「シンギュラリティ」がその前に来るんだろうから、それは必然とも言えるだろうね。

横浜駅SF (柞刈湯葉)

横浜駅を舞台としたSF。横浜駅とは言ってもここで言う横浜駅は本州全土を覆う構造物だ。何を言っているのか分からないが、実際にそうなんだから。

かなり楽しく読めたよ。そのうち来るであろうシンギュラリティの先にある物語、かな。

書籍化に当たってだいぶ加筆されているらしいけど、元の物語はネットでも読めるみたい。

虐殺器官 (伊藤 計劃)

よく噂には聞いていたが、なかなか手をつけられずにいた、割と最近のSFの名作。まあこれが良くても新作を読める可能性がないんじゃなぁ…という気持ちもあったんだけど、読んでみた。評判通り、良い。考えさせられるし、何よりもストーリーに引き込まれる。

実は恥ずかしながらこの本を読むまで著者の名前を読めなかったんだけど、「けいすう?」「けいなんとか?」という感じで思っていた。「けいかく」ね。ひとまず次の「ハーモニー」も読むことまでは心に決めた。